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異世界召喚された私は姫様の影武者として生かされ、そして復讐を誓う【15-2】

戦争が終わって既に2カ月強の月日がたっているのだから。

精神的にも、肉体的にも落ち着いた頃を見計らって、

第3皇子が許可を出したのか、戦争の結果をやっと報告して貰えたのだ。

私が医師と面談して、順調に回復兼皇子の色に染まる状態を見て、

魔法使いも医師も微笑ましく私を見つめてくのだからたまらない。


「その、急速にお染まりのようで…

大変喜ばしいですね」

「体調も精神も安定していますし流石第3皇子殿下と言うべきでしょうか」


そんな言葉を聞く度に、私は顔を赤らめずにはいられなかった。

けれど、第3皇子は既に私に愛を注ぐ事に慣れ始めているのか、

その言葉を聞いて隣に座っていた私を、お食事の時と同じように膝の上に乗せ、

私の事をギュってするのだ…


「くれぐれも第3皇子妃様に無理はさせませように」

「まだ、お子を作られる体力は戻っておりませんよ」

「…善処する」


私は医師と魔法使いとの会話をその時は聞かなかったことにした。

もう気付いていないふりでも良い。

流石に、体力が戻るまでは何とか…と話していたけれど…

それ以上に、私は体が元に戻るのか不安になりそうになっていたし。

体力も子供を出産できるくらいに戻るのか以前に、

私の体はまだ子供を宿せるのかが不安になってくる。

皇子の子は絶対に産まなくちゃいけないって考えもあったし。

けれど私の漠然とした不安を他所に、第3皇子は語り始めたのだ。

その日の夜に第3皇子は私を抱きしめながら言うのだ。


「大丈夫だ。兄上が言っていた。

妃として染まる事が出来れば体が子を産めるようになる証拠だと。

兄上の妃は染まると同時に準備が始まったらしい。

おまえも、染まる事が出来たのだ。体力が戻り次第月のものも始まる。

慌てるつもりはない。

今はゆっくりと体を元に戻せ」

「はい」


返事をする事が精一杯であったと同時に、

私は私自身がこの世界で出産すると言う現実と、

自分以外の血のつながった存在を無意識に欲しているのだと、

その考えを持っているって事に自分で驚いていた。

未来に自分の血を分けた人間を残すという事が、

私には実感できていなかったというより何時でも自らの死をトリガーにしてでも、

王国を滅ぼそうと考えていたのに子を産み育てると言う考えも、

私は捨てる事が出来なかったという事なのかもしれない。


そうか――


私は―――



まだ死にたくないんだ。



新しい命を宿す事が出来る体に戻れるかどうかわからないけれど、

私はまだ当分死のうとは思えないらしい。

生まれてくる子の将来を想像する事を出来たのだから。

確かに前向きになっていた私を周囲は感じ取っていたのか、

現状を教えても大丈夫と判断された頃、王国の現状も教えて貰え始めた。

戦争が終わってからの残務処理とその後の統治計画なども、

帝国内では討論が続けられているみたいで。

王国なき王都には第2の「デストピア」建設計画も持ち上がっているらしいのだ。

帝国に連れて来られた王家の人間は帝国に「ご慈悲」を賜りたいらしくて、

必死に訴えているらしいけれど、毎日の尋問はかかざす、行われているらしい。

その訴えは「デストピア」を作らないでほしいというより「デストピア」に、

帰りたくないと言う話でもあったのだ。

帰れば命はない現実が、自分達が行って来た「私」も含めた計画が、

どれだけずさんで駄目だったかを教える意味でも無謀だったと教える教義が、

王族に対して行われているらしかった。

万が一人も勝てない戦争を仕掛けようとしていた事を、

部下の中には、この侵略戦争を行う事こそ無謀だと訴えた人もいたらしいが、

結局戦争準備は行われていたのだ。

悪の帝国に侵略されない為。

そう言いながら、自分の最愛の娘である「黒薔薇姫」まで泣く泣く差し出した。

それでも、帝国は圧力を弱めてくれなかった。

だからこの戦争は正当な侵略戦争なのだと。

もう、何を元に言っているのか解らない戯言を繰り返している王族に、

尋問官も理解できませんと言っているくらいらしい。

でも、皇后に続き私まで殺そうとした皇帝陛下の「怒り」はすさまじいらしく、

私が何もしなければ「デストピア」より酷い物を作る事になりそうだった。

体が落ち着いてきて第3皇子に抱き上げられて長距離を移動する事が、

許されるまで回復してきた時に、

私と第3皇子は皇帝陛下の私室に呼び出されたのだ。

用件はもちろん悩んでいる王国の今後の事。


私達の間に生まれてくる子供は、王国の王位継承権を持っている事になる。

どんな経緯であり生まれてきた子は書類上元王国の王族の黒薔薇姫なのだ。

王家復興の旗印として担ぎ出される可能性ももちろんあるのだから。

私としては、もう将来もへったくりもなく綺麗さっぱり滅ぼしてやる事が、

王国の最後として相応しいと思っていたのだ。


「再興など考えられないほど国土を荒らし尽して、

踏みにじって差し上げるのが宜しいかと存じます」

「ぬぅ…。

確かに無かった事になるまで荒らし尽してしてやるのが、

良いとは解っているのだがの…

いずれは、バカが「本物(逃げた黒薔薇姫)」を、見つけて、

お家再興等とふざけた事をやりそうな気がするのだ…」

「ならば、それをさせない意味でも、王族は一人だけ生かして、

占領した王都の王城に軟禁してしまえば正当性を主張できなくなりますね」

「…ほう。それは面白い手ではあるな」

「もちろん、残すのは「王妃」か?」


私は何も言わなかった。

けれど仕返しと言う意味でも私と同じ目にあってもらえば、

皇帝陛下の気分が晴れると言うのであれば、その意見には賛成するつもりだった。


「王都に戻った後は、体の中に何故か毒袋が出来てしまうから、

一年に一回、苦しい手術を受けて、生きて貰えればいいのではないでしょうか。

…ああ、そのまま国を生かして仕送りさせてあげると、

民達も喜ぶかもしれませんね」

「ほうほう。民達も親愛なる王家に対してなら、

無限に自分達の物を差し出したくなると。

まぁ、王都に住まう人間なら敬愛する王家の為に、

死ぬまで働き続けるのも許容してくれるのかの」

「慕われて愛される王家らしいですから。

さぞ国民達も屈辱に耐えて、王家の為に文字通り命がけで、

暮らしてくれるのではないでしょうか」

「ふむ…」


それから皇帝陛下は、私の表情を見ながら、

マジマジ確認していたみたいだった。


「「王国」に大切だった者はいないのかの?」


なんて事はない。

私が王国に対して未練を持っているか?

皇帝陛下にお願いをしてでも救いたいと思える人がいるかの、

確認作業って事だったのだ。

行方の解らないとされている「本物」の処罰も恐らく含まれていたのだ。

帝国はとっくに逃げて姿を眩ませた「本物」の場所さえつかんでいるのだろう。

正式な処罰を決定してしまってする前に決定を覆せない。

だからその前に王族にも慈悲を与えるかどうかの最終確認の様な事だったのだ。

私は隣に座っている第3皇子に寄りかかりながら、しっかりと返事をする。


「無いのです。何一つありません。

今、私が全てを捨てても傍にいたいと思うのは「第3皇子殿下」だけなのです」

「…ほっほっほ。良きかな良きかな。

第3皇子妃が王国に未練の未の字もない事が、

解っただけでやりやすくなったのぅ」

「第3皇子よ?ワシが王国に求める処罰は伝えた通りでも良いかの?」

「皇帝陛下の御心のままに」

「うむ!では、王国の処罰に変更はない後は正式な場で発表するとしよう」


その後、私と第3皇子は皇子のプライベートスペースに戻ったのだ。

けれど私と皇帝陛下の会話を聞いた皇子は私に申し訳なさそうに言うのだ。


「王国に感謝しなければいけない事が一つだけある」

「…それは、何でしょうか?」

「君を召喚してくれた事だ」

「そう、ですね。それだけは、感謝、しなければ、いけ、ないのかもっ」


が、言えたのはそこまでだった。

その続きは皇子に口を防がれて話す事は出来なかったのだ。

絶対に私を手放さない。

そう訴えかけて来るように、私を強く抱きしめてくるのだ。

3年前この地に落とされた私は既に帰る事は諦めている。

ならせめて私をこんな目に合わせた王国を滅ぼしてから死んでやると、

考えていたのに。

今の私は、死ねないと思っているのだから、

人の想いは解らない。

第3王位の隣で私は幸せを感じ続けているのだった。


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