異世界召喚された私は姫様の影武者として生かされ、そして復讐を誓う【15-1】
体の感覚が戻ると同時に私のリハビリは本格的に行う事になった。
もう呪いと毒袋に怯えなくても良くなっただけでも私には嬉しい事だったのだ。
皇后さまが使うはずだった呪いから体を守る保護具を身に着けての生活からも、
無事に解放される事になったのだけれど…
体を全て包み込んでいる白い革の矯正具は未だに外されてはいなかったのだ。
と、言うより…
侍女達の話も医師や魔法使いの話を聞いても、
私の状態は急速によくなっている事は言われないでも解る程度に、
体には力が戻ってきている事が解る。
もちろん楽観視出来る事ではないけれど、
第3皇子から毎日愛を注がれている効果は目に見えて解る。
それ以上に私の体に変質をもたらし始めていたのだ。
黒髪が脱色した様に白くなって、瞳の色も黒から皇子の持つ色へと、
変色してきているのだ…
流石にどうしてこうなっていくのかは私には解らないけれど…
侍女達はニコニコしたまま私に話しかける。
「予想外と言う訳では無いのです。
第3皇子殿下の愛を受け止め続けていますし…
毒袋を摘出してから代替魔法で欠損部運を補い続けてきました。
その代替え部分を維持するのに皇子から愛を大量に注がれていますから」
「そ、れは、私の体を維持するために皇子の愛が必要だったの?」
「もちろん魔法食でも十分代替魔法は維持できますが維持しか出来ません。
皇子妃様もお判りの通り、無くなった部分を皇子妃様の回復力だけで、
元通りになるのを待つと1年以上待たなくてはいけなくなってしまいますから。
皇子の愛は傷の再生を速める効果もあったのですよ」
「…そう、ね。回復が早くなったと、そう考えるべきなのよね…」
「ご不満でしょうか?」
「いいえ。そんな事は無いわ。愛されるのは嫌じゃないもの」
「それは宜しゅうございました」
なんだかんだ言って私と第3皇子の関係は良好なのだ。
良好だから許されるとかでもないかもしれないけれど、
何というか染められる事も私は嬉しいのだ。
色々あるかも知れないけれど、
私はこの地に召喚されて全部の繋がりを完全に消滅させられたのだ。
王国を見た時、何処を見ても私の周囲には「敵」しかいなかったし、
「敵」以外には「利用する人」しか周りにいなかったのだから。
私は王国では大切にされていたのだ。
形の上だけれど。
心優しい「黒薔薇姫様」は心身疲れ果てていて、このままでは死んでしまうから。
その「黒薔薇姫様」の為に私は実際に刺され切り付けられて深手を負ったのだ…
その後ですらまともな処置すらして貰えず、最後はリサイクルと言わんばかりに、
帝国の生贄として捧げられた。
王国の人間は最後まで私を道具として使い切ったのだ。
帝国に来てやっと黒薔薇姫ではなくて私を大切にしてくれる人が現れて…
私は、私を見てくれる第3皇子の隣で自分を取り戻せた気もするのだ。
そんな彼に染められると言うのであれば本望だ。
白髪に皇子と同じ瞳の色に変色した私の事を、
侍女達は楽しそうに笑ってみてくるのだ。
「これでは「白薔薇姫様」ですね」
「そうですね。私達の「白薔薇姫様」です」
「「帝国の白薔薇姫」良い響きだと思いませんか?」
容姿を司る色が変わっていく事がちょっと怖くる事はあったけれど、
皇子までも、その染まっていく私に喜んでいるのだから私は何も言わない。
ただ、これは皇子の愛のお陰なのかと確認したくなってしまうけれど…
「皇太子妃様も昔はもっと濃い色をお持ちでしたよ」
「第2皇子妃様も同じですね」
「帝国の皇子達に愛された妃達は皇子の想いを汲んで変化するのですよ」
文字通り染められるって事なのだ。
黒髪を失うのはちょっと惜しいけれど、
それ以上に明確に私は「黒薔薇姫」で無くなる事が嬉しかったのだ。
黒薔薇姫と似ているからと言う理由で道具として扱われた事が、
未だに私の中でしこりとして残っているからかも入れないけれど。
少しずつ変わっていく私を見て第3皇子も
「綺麗だ」
「やっと俺の物になる」
「俺だけの妃だ」
「絶対に手放さない」
なにやら私に夢中になって来ている様な気もするけれど細かい事は気にしない。
気にしてやらない事にするのだった。
ドレスの色も今までの髪の毛の色と合わせて作られた濃い色目の物から、
淡い色へと切り替えられて、2カ月たたないうちに私の身の回りの風景は、
暗いイメージから明るい爽やかなイメージの物が増えている気がした。
「第3皇子妃様の憂いは晴れたのです。
身の回りの品々もそれに合わせて明るい物の方が宜しいでしょう?」
「苦しかった事も悲しかった事も忘れる事は出来ないと思います。
ですが、忘れてほしいと思うのです」
「私達の妃様に楽しい時間をお過ごしになられて欲しいのです」
「私達の我儘ですが、どうか。どうかお受け止め下さいませ」
彼女達も必死に私が前を向いて歩いてくれることを願ってくれているのだ。
そんな生活する場所のイメージを一新するのもその一環なのだと。
早く、「呪い」の事を忘れてほしいと願っている事だけは確かだった。
私の体調が落ち着いて元通り動けるようになるまで、
彼女達の甲斐甲斐しいお世話は終わらないのだった。
少しずつ動く様になっていく私に皆が喜んでくれる事が、
私には嬉しくてしかたが無かったのだ。
体力の回復と共に起きている時間も増えて来て、
冒険者とのお話も再開するかどうかを決めてほしいと打診されたのだ。
第3皇子の手配によって、より強力に後押しされた「冒険者」達は、
私が寝たきり生活で動けなくなっても、その活動は勿論続けていて、
私に話せる「お土産話」と「秘宝(笑)」を沢山揃えている人もいるらしい。
成功報酬はともかくとして帝国の帝室の人間に「献上する品」を持ってこれた、
冒険者は一目置かれる事になるらしくって、
私が知らない間に帝国内で「冒険者」という職業が誕生してしまっていたらしい。
「それでも、第3皇子殿下のお眼鏡に叶う物を持って来れる人は僅かですよ」
「皇子妃様が直接お会いになって、満足される物と語りを出来る冒険者は、
ほんの僅かしかいないのですよ」
室内の移動に目途がたったと言うか、安楽椅子をちょっと改良した、
背凭が少々倒れ気味の車椅子もどきで久々に寝室以外の場所に、
意識がある時に移動する事を許可された私は、
「無価値なコレクション」が飾られている棚を久々に見る事になった。
一つ一つが大冒険の果てに手に入れた「理解不能」のガラクタだけれど、
そのガラクタ一つ一つを見る度に彼等、冒険者が命がけで見つけて来た事を、
語ってくれる冒険の日々は、私が体験した訳ではないけれど、
臨場感があって、私も冒険している気分に浸れるから嬉しかったのだ。
そうやって—
私の日常は少しずつ普通の日常に戻りつつあった。
そうなれば、これ以上先送りできない問題事の処理にも、
目を向けなくてはいけなくなって来ていた。




