異世界召喚された私は姫様の影武者として生かされ、そして復讐を誓う【14-1】
戦争が終わったからと言って直ぐに普通の日常に戻れる訳じゃない事は、
初めから解っていた。
戦勝の報告の後でも私は「安全な所」からもちろん移動できなかったのだ。
第3皇子が帝都に戻るまでは「安全な所」を出る事は許されない。
それが帝国の妃のルールなのだ。
皇子達のプライベートルームで生活する事が許されている、
皇太子妃と第2皇子妃の事は少しばかり羨ましく感じていたけれど、
それ以前に私の体はボロボロになっているって、
実感しなくちゃいけない状態だった。
王国の王族を逃がさないと「炭鉱のカナリア」の真似事をしたお陰か、
短いスパンで手術をした私の体はほとんど力を失った状態になっていた。
勿論戦争が終わった後は私に着せられていた鎧も脱がせてもらったのだが、
結局鎧を着ていなくても体の「形」を維持するために私は矯正具を、
全身に取り付けて生活する事を余儀なくされていた。
毒袋と化してしまった部位を切除するしかなかった体は、
直視するのが苦しくなるほど内臓を失ってしまったのだ。
変な話今の私は魔法使いの魔力で作られた代替機関が、
体の半分を占めている位なのだ。
急速に悪化した体の部位を生きるたに取り除かなくてはいけなかったとはいえ、
失った量が多すぎるのだ。
体の半分が魔力で出来た状態だなんて普通の人であるなら、
正気を保てなくなる。
私には色々な複合的な「忘れる」魔法もかけられていたのだった。
その一番の「忘れる事」が食べる物だった。
もちろん魔法で維持している体なのだ。
食べる物は魔法食でなければいけないのだが私は魔法食の味を覚えていない。
何時の間にか食べ終わって眠くなるから眠る状態にされていたのだった。
そして視覚的に体を直視させない為にも帝国に来てから直ぐに採寸した、
ドレスの大きさで体を覆う固い白い革で出来た全身装具を首下から、
手と足先を除いて全身に固く取り付けられていたのだった。
それはリハビリなんて考えられないほどきつく硬く作られた物だった。
どのみち私が動かせるのは左腕の手首から先だけなのだ。
術後に着せられたちょっと強めの矯正具を身に着けているだけ。
それが普通だと思い込まされてもいたのだった。
色々な意味で私が現状を直視しない様に、
周囲は私に気を使い続けていたのだった。
術後1カ月もすればいつも通り矯正具も外せるし、
手術後の予定通りのサイクルに戻れると思っていたのだ。
その事を周囲の侍女達も何も教えてくれなかった。
ただ失った部位が再生するまで時間がかかるとしか答えてくれなくて。
私は不安になってくる。
それ以上私が精神的に不安定にならない様にする為と言われて…
私が眠っている間に色々な部位が好感されたのだった。
白い革で作られた自分の体の形を維持している「矯正具」は、
眠っている間に交換されて起きている間は私の
私の「型」を体中に巻き付けて私が自分で酷い部位を見ないという配慮。
それでも…
詳しく体の状態を聞きたいとお願いしても答えてくれる侍女は、
「第3皇子がお帰りになられて、
皇子のプライベートルームに戻ってからに致しましょうね」
「私の体の状態の事は聞いているの?」
「…はい。お世話する者として、知っておかねばならない事ですから」
「なら私は元通りに歩けるようになる?」
「必ずなります。ですが、そのためには皇子の力が絶対に必要なのです」
「そ、そうなの?」
「はい!そうなのです」
侍女は笑顔で私に答えてくれる。
その表情に暗い感じはないのだ。
ないのだけれど顔を真っ赤にしながら答えられたのだ。
な、何かを隠されている事だけは解ってしまうのだけれど、
それ以上追及もしたくなかったのだ。
それに妙に疲れやすくなった体は眠くなるのだ。
「ごめんなさい。眠ります…」
「はい。お休みなさいませ皇子妃様」
私は日に日に自分の状態が分からなくなっていった。
いや。
食べる事と眠る事以外の時間がほとんどないと言ってしまっても、
良かったのだ。
侍女達も眠っていて下さいと言ってきて…
起きて魔法食を食べたらまた眠くなるそう言ったサイクルになっていた。
自分の体に若干の寝苦しさをなんとなく感じながら…
何日も何日の過ごし続けたのだ…
それから何度眠て、起きてを繰り返したのか解らなくなりつつあって、
けれど何時もの様に覚醒した私はまた魔法食を食べるだけ食べて、
眠るつもりだったのだ。
けれどその日の目覚めは心地いいのだ。
何時ものベッドに眠っているはずなのに。
優しい匂いがして深く落ち着いていたのだった。
固いベッドの上に寝ているつもりだったのだが…
ぼーっとしながら薄目を開けると一番会いたい人の顔があったのだ。
あーまだ眠っているのかぁ…
だってまだ戦地から返って来たって報告は聞いていないし…
けれど落ち着くなぁって思いながら…私はまた瞼を閉じたのだ。
そして頭をちょっとだけ動かせば耳元でトクントクンって心地いい、
リズムで音を奏でる心音が聞こえてきたのだ…
そのリズムがまた私を眠りに誘って来ていた。
安心するこの空間なら…
もっと眠っていても良いかなぁって思って…
「お休みなさい…」
「あぁ」
ちゃんと返事もしてくれて…私はまた眠りについたのだった。
いい夢だったなぁって思いながら…
夢でも良いからまた同じような場所で起きたいなぁって、
思いながら私は眠ったのだった。
…ん?
夢?
え?
それからまたどれ位眠ったのか解らなかったけれど…
私はまた起きたのだ。
そして、上を向けば…
「あ…」
「おはよう」
「おはようございます…」
「よく眠れたか?」
「はい。とっても」
「それは良かった」
「はい。おかえりなさいませ…」
「ただいま」
ぼやけた頭の中で自分が誰と話しているのかをやっと認識して、
けれど深く考える事は許されなかった。
なんて言うのか霞がかった状態で状況は認識しているのだけれど、
それ以上の事を起こす気になれないみたいな状態だったのだ。
けれどその日からちょっと違う事が用意されていたのだ。
久々に私は第3皇子に抱きしめられている様な…
けれど体が動かないのと固い革の矯正具を身に着けさせられているから、
抱きしめられているっていう実感が湧かないのだ。
けれど好きな匂いで好きな声がするから、
たぶん第3皇子の傍にいる事だけはなんとなく感じ取っていたのだった。
王子が私から離れればその後は何時もの侍女に抱っこされて、
私は日向ぼっこ用の椅子にも座っているみたいだから…
プライベートルームにいるのかなぁ…
みたいな感じて、ずーっと「ふわふわ」な時間を過ごす事になっていたのだった。




