異世界召喚された私は姫様の影武者として生かされ、そして復讐を誓う【12-1】
侵攻作戦の最終局面と言われて帝都は終戦間近と噂になっているらしかった。
「帝国軍は既に王国の王都を半包囲しているのです。
なので、これから隣国との交渉に入ります」
勝って戦争を終える事は決定事項であってもう王国に勝ち目はないと、
侍女説明されたのだけれど帝国がこの戦争を始めた理由は、
私に対して呪いを掛け続けた人間を捕まえる事。
そしてその人物を皇帝陛下の前に連れて来ることが目的なのだ。
そう言った意味で滅亡が確定している王国の未来は変わらないのだけれど、
その王国の王妃をとらえる事を考えると迂闊に王国の王都への侵攻作戦を、
行う事が出来ないって説明されてしまったのだ。
「この戦争の目的は第3皇子妃様に呪いを掛け続け人物を捕縛する事なのです。
王国を滅ぼすのはそのついででしかありません。
優先順位としては、王国の王妃をとらえる事であり、
王妃が逃げることが出来る乱戦状態を作り出す訳には行かないのです」
もしも乱戦を行うのであれば、
それは隣国軍が接している場所ではなくて、
玉砕突撃を帝国軍が布陣を敷いている場所に向かって突撃してもらわないといけない。
突撃してきた王国軍を殲滅出来るのであれば、
最悪乱戦の中で処す事が出来るから目的は達成されるけれど、
極力王族を生きて捉えたいと思っているらしかった。
だから…
だから、帝国軍と隣国の軍隊で半包囲状態を形成している状態の現状では、
王妃に逃げ切られる可能性があるから攻撃が出来ない。
という事になっている。
「建前です。
現在王都の中では包囲状態と避難民で膨れ上がった人口に対して、
食料の備蓄は急速に減り続けています。
今や飢えと渇きで平民達は王都から脱出したいでしょう。
ですが、その脱出先は隣国軍の方向にしかありません。
しかし、それでは王族が隣国に逃げられてしまう。
隣国が王族をどう扱うのか判断しかねますが、
新しい旗印となって、
祖国奪還作戦等とやられては面倒なのです。
ですから必ず王国内の有力貴族の下に逃げ込もうとするように、
餌をばら撒いている所なのです」
最後の最後に王国と国境を接する隣国に王族を捕らえられて逃げられたら、
更なる侵攻をしなくてはいけなくなりますから――――
笑って侍女は説明してくれたのだった。
もうすぐ戦争が終わる。
どんな形になるのか解らないけれど。
王国への侵攻作戦は何ら問題なく続けられている。
そう結論づけられた報告を聞きながら、
私がおこなわなければいけない事はただ一つ。
何時ものスケジュールをいつも通りに熟す事。
それが私に課せられた役目だったのだ。
戦争が始まってから10か月がたった頃から…
私の容態は徐々に悪化して行ったのだ。
必死にリハビリをしても私の体は去年の様に、
順調に回復する所まで戻って来てはいなかった。
そう簡単に体力を戻す事が出来なかったのだ。
うすうす気づいていた。
リハビリのスタートが遅れた事。
去年、始めた時出来ていたことが今年は出来なくなっていた事。
戻りきらなかった容態から回復を始めたって、
もちろん元通りになんてなれなかった。
私の焦りは周囲を巻き込んで…
いや、それよりもショックだったのは3人いた侍女の一人が、
帝国に来てから一番近くにいた、あの侍女が医師と魔法使いと共に、
私に更なる契約をしたいと言ってきたのだ。
「第3皇子妃様。
呪いの進行が予想以上に早くなっております。
次回の手術までのお時間を稼ぐためにも、新たに呪いよけの契約を。
なさってくださいませ」
けれど、私だって気付く。
近くにいて彼女の雰囲気はこの数カ月で明らかに変わっていた事に。
彼女に体に無数の蚯蚓腫の様な物が出来始めているって。
私のお世話を彼女がするときは皇帝陛下の侍女が更に2人ついて、
その私の侍女の補助もし始めていたのだから。
それは言うまでものなく彼女の体調が悪くなってきているって事。
それが解っているから。
これ以上の負担を彼女に強いる事は出来なかった。
「皇子妃様。ご決断をお願いいたします」
呪いを更に受け持つ2重契約。
そんな事をしたら本格的に彼女の体が持たない。
私は彼女に私の命を繋ぐための代価を払わせる事を良しとしない。
それは絶対に出来なかった。
「貴女が私の侍女だと言うのなら貴女のしなければいけない事は、
私の呪いを受ける盾となる事ではありません。
私に尽くして私の為に生きる事です。
それは理解できていますね?」
それでも彼女は満面の笑顔を私に向けてくるのだ。
その笑顔と忠誠心が今の私には苦しかった。
けれど彼女は迷わない。迷うそぶりすら見せてくれない。
自分が正しいと言い切れる自信を持ちながら私に返答を返すのだ。
「もちろん、理解できております」
簡単いスルリと返される言葉を聞いて私は更に胸が苦しくなってくる。
自分の価値を安く見積もるつもりは無い。
けれど彼女にそう言いきらせるほどの価値を私は彼女示せていたのと、
言いたくなってくる。
「なら…我らが親愛なる皇帝陛下と第3皇子を信じようではありませんか。
彼は1年で戦争を終わらせると言ってくれたのです。
だからこれ以上、貴女が私の呪いの肩代わりをする必要はありません」
「それは…」
「ないのです。異論は認めません。
貴女は、皇帝陛下と第3皇子を信じられないのですが?」
「いいえ」
「なら、待ちましょう。
私は生きています。直ぐには死にません。
リハビリだって頑張っているのです。
それで、良いではありませんか」
「はい…」
「では、このお話は終わりです。
私が手術を受けなければいけないと言うのであれば、ちゃんと受けます。
前みたいに死のうとしません。
約束するから、貴女も私の傍からいなくなくならないで。
これは命令です」
強がりでしかない言い訳と、
ただの皇子妃と言う立場だけを盾にして私はこれ以上侍女の負担が増える事を、
許容する事を許せなかったのだ。
それほど彼女と繋がりを作れていると思っていた。
第3皇子の為に死ぬわけにはいかない事は重々承知している。
でも私が死なない為に帝国に来てからずっと傍でお世話をしてくれていた、
この侍女がいなくなったら私は体が死なないけれど、きっと心が死んでしまう。
罪悪感に押し潰される。
だって、帝国に来て手術を受けて来てから1年以上もお世話をされているのだ。
弱って動けなくなった体を預けているのだ。
変な言い方かもしれないけれど、
誤解を招く言い方となってしまうかもしれないけれど、
彼女は私の体の一部の様な存在なのだ。
自身の半身を失ってまで生きられるとは思えない。
もちろん彼女を中心として、チームを組まれてお世話をされているが、
それでもその中心にいるのは彼女なのだ。
彼女を失ってもまた新しい人とはもう思えなかった。
安心して体を預けられる侍女は彼女しかいないのだ。
動けない体で見ず知らずの人に体を預けるなんて怖くて出来ない。
そう、思えるほどに彼女のお世話は自然であり、私のしたい事を汲んでくれる。
彼女の代わりとなれる侍女はやはり考えられなかった。
私はにっこりと必死に笑顔を作って答えるのだ。
―私の傍を離れないで―
それが私の本心だった。
彼女も私の表情とその言葉の意味を理解してくれたのか、
「第3皇子妃の御命令。確かに承りました」
素直な返事に私はほっどしたのだ。
理解して、傍にいてくれる事が嬉しくて。
けれど彼女は手を伸ばしてくるのだ。
その表情は笑顔で何時もと同じ雰囲気だった。
「ですが…
それでも私は皇子妃様の為に生きるのです
ならば私の事も信じて下さいませ。
私は決して、決して皇子妃様の傍を離れません」
彼女に掴まれた腕はまた彼女の首へと伸ばされる。
それは1年前契約した、あの時と同じ…
そしてその続きだったのだ、
「我は願う。我は誓う。
我が愛しき主の為の盾となる事を…」
彼女の首に着いた契約の証は更に強固になって、
彼女の首全体に広がっていた。
けれどそれでも彼女の表情は明るい。
明るかったのだ。
その表情を見ながら…
その日、私は気を失ったのだ。
年度末最後の更新は本日21時に更新します。




