異世界召喚された私は姫様の影武者として生かされ、そして復讐を誓う【11-2】
手紙に会いたい。
あって抱きしめて貰いたいと、書いてしまうほどに、
私は第3皇子に依存していたのだった。
それでもその言葉は書けない。
書いてはいけない。
1年間は我慢すると決めたのだ。
その「約束」を守らない訳にはいかなかった
そう自分に言い聞かせながら毎日を過ごしていく。
手紙自体は直ぐに書けるようにはなった。
なっていた。
一年間の経験と言えば聞こえはいいけれど、残った左腕の肘と手首だけで、
文字が書けるように馴れてしまっていただけだったのだ。
両側から侍女達に支えられる形で、姿勢を保って、
なんとか二の腕を掴んで貰えばぶれる事無く左腕だけは動かせた。
それだけだった…
皇子は私の手紙を喜んでくれる。
文字の汚さを覆い隠せてしまうその馴れた左腕の動き。
去年との差がまた私に理想と現実の差を思い出させてくる。
体の回復と比例しない文字の綺麗さが、
不自由な体に折り合いを付ける様な気がして…
体が動かなくていいいと思えてしまう気がして私を攻め立てていたのだった。
それでも皇子から届く戦争の進行状況は、
決してその進行速度を落としていなかった。
あまり口に出して言いたくはないけれど王国にとっては悪夢の虐殺戦争。
戦場にだってルールはあるんだ!
なんて叫んでいたって、そのルールを守る事を負けている側は何時だって直ぐに放棄する。
放棄して好き勝手な、論理をならべること位解っていた。
だから、帝国は初めからルールなんて求めない。
既に血塗られた道だから。
その道をもう一度綺麗にしようとなんて考えない。
何時かはこの繁栄も限りを見せて、帝国は崩壊するかもしれない。
けれど、そうなったらそうなったで構わないのが帝国の方針だった。
目には目を。歯には歯を、武力には武力を。
身内がやられたらやり返すのが礼儀と言わんばかりに。
王家の不始末は国の責任。
その王家を野放しにしていた貴族の責任。
その貴族を野放しにしていた官僚の責任。
その官僚を野放しにしていた身内の責任。
その身内を野放しにしていた国民の責任。
だから、全員で責任を取ってもらう。
それが帝国の論理だった。
もちろん平民が貴族に逆らう事なんて、
許されないからこの理屈は間違っているのだけれど、
それでも帝国はこの理屈を押し通すのだ。
押し通さなければ、「私」は殺されるのを待つだけなのだから。
作戦上の犠牲は仕方がないただし犠牲になるのは王国民だけだ。
を地で行く作戦計画は、褒められて物じゃなくなっていくのは、
解り切った事だった。それでも私はその作戦を辞めてくださいと、
手紙で報告する訳には行かなかったしそれ以上に王国の国民は、
私を犠牲にしたのだから。
王都に続く砦を陥落させた帝国軍はそこを起点に全方位に軍を向けた。
それは万が一にも、王国の王家の人間が落ち延びる場所を、
徹底的に潰す為という名目でもあったけれど、王国を無事な状態で、
残す事なんて帝国は微塵も考えなかったのだ。
王国がこの侵攻作戦を止める方法はただ一つ。
王家の人間全員の首を差し出す事だけなのだ。
侵攻作戦が始まってしまった以上、もう王妃の首だけでは帝国引かない。
「王国」と言う存在に、引導を渡すまで徹底的に蹂躙し続ける。
それは王国民には理不尽の一言だけれど。
それでもそう思われても、もう帝国は止まれない。
3年後の侵攻計画だって見抜かれてしまっているから。
という事もあると聞かされた。
国境線沿いに戦略戦争に使う為の物資倉庫を立て始めたいたのだから。
その場所は帝国軍に接収されて効率の良い中継地点として、
利用されてしまっているのだから何とも言えない。
そう、王国内で補給を円滑に行うために行われた街道整備すら、
現在の帝国の進行速度を上げる要因となってしまっているのだから。
奇襲から始まった王国への侵攻作戦は、
ものの見事に、自分を苦しめる事となってしまったのだ。
元々は街道整備が終わったら防御用の砦そして侵攻計画の最終準備と、
私を人質として出したのだから、侵攻はないと考えて貰えると、
思っていたのかもしれない。
けれど、私と王家の人間に血の繋がりによる温情なんて物はないのだ。
だからこそ、やるべきことをやって、侵攻速度は加速していく。
その戦況報告を聞かされた時、侍女から質問をされたのだ。
「…予定以上の進行速度で現在、王都へと進行していっています。
同士に各地に散らばった王国貴族も、必死の抵抗を始めているようです。
目標は王都ですが、各地の貴族領への進行はどうするべきか、
第3皇子殿下はどうするべきか悩んでいるようです。
取るに足らない雑魚だから捨て置くべきなのか。
それともきっちりと片付けてから、王都へと向かうべきなのか。
稼ぎだせてしまった時間的猶予を使て、一層する事は可能なのでしょうが…」
私の意見をなんて決まっているのに。
わざわざ聞いてきた辺り、皇子もどうするべきか悩んでいるのだと思う。
だって、せっかく稼いだ時間的猶予は王妃をとらえるまでの
時間を短く出来るって事は、私への体の負担を軽減できるって事だったから。
でもね、そんな事はどうでも良いのだ。
事ここに来て私が気にする事は、一つだけ。
「第3皇子が安全ななのはどちらでしょうか?」
「もちろん、周辺の領地の敵を全滅してからですが…」
「なら、悩む事は何もありません。皇子の安全が最優先です。
周辺の領地を全て滅ぼしてから、王都に向かうべきですね」
驚いた表情を見せる侍女達。
自分の体の為にも一刻も早い王都侵攻を願い出ると思われたのかもしれない。
けれど私は今の所「安定」している。体は鬼の様に痛むときがあるが…
死にたいと思う事はあれど、まだ私は死んでいない。
だから。だから無理な進軍速度であることは解っているのだ。
そして予定通りだと言うのであれば、余った時間は憂いを無くす事に、
全力を尽くした方が第3皇子は無事に戻って来てくれる可能性が高くなる。
それに…
それ以上に私は王国を愛せない。
「私は王国民に「黒薔薇姫は死ね」「不浄なる物に死を」「生き恥をさらすな」
等々いろいろ言われてきた身です。
もう王国に良い想いでなんて初めからないのですよ。
それよりも、皇子が危険に曝される事こそ許容できません。
憂いとなる物は徹底的に潰すべきなのです」
「解りました。第3皇子にはその様に伝えます」
王国の安全な王都侵攻まであと少し。
帝国によって周囲の町は焼き払われ逃げまどう平民たちは助けを求めて、
王国の王都へと逃げ延びるのだった。
逃げられる物は王都へ。
帝国兵の狂った侵攻速度から逃げる様に。
必死で平民たちは王都へと逃げるのだ。
もう王国民が安全だと思える場所は。
王都方面にしかないのだから。
王国に隣接する隣国すら、帝国の凶悪な侵攻速度に恐れをなすのだが、
国の半分を削り取られてしまった、王国はハイエナと化した隣国からも、
領土への進行を許してしまう結果となった。
しかし、帝国の進行と対峙しなければいけない王国に隣国からの侵攻作戦を、
跳ねのける力はもう残っていなかった。
領土を失い。避難民が押し寄せる王国の王都。
治安は急激に悪化していき、
同盟を組んでいた隣国は救援と言う名の王国領地をかすめ取りにかかっていた。
王国はそれでも敗戦を認められない。
もう勝ち目がないと解っていながら。
敗戦は王家の断絶を意味していたのだから。
国王は敗戦が濃厚ではなく確定している段階になっても命乞いを出来なかった。
王国民よりも、王家を人間の命を惜しんだのだった。
その時、王国の末路は決まったのである。
次回の更新は明日の20時です。
完結まで毎日更新します。




