異世界召喚された私は姫様の影武者として生かされ、そして復讐を誓う【10-1】
第3皇子の従軍が決まって、私は皇帝陛下の用意した「安全な所」に行くための、
準備をしなければいけなくなった。
一応私の住む場所である第3皇子のプライベートペース以外の場所から出る場合、
どんなに近くでも「外出」とみなされるそうだ。
それと同時に、帝国は戦時体制へと移行してしまった。
それは、戦争に係る人々には戦時下に相応しい姿をしなければいかなくなる。
と、いう事だった。
文官・武官問わず戦時下を表す姿として鎧の着用が義務となるらしかった。
「戦争に係る」とされる人員の中に帝室の人間はもちろん例外なく、
関わっている事とされるのだった。
というのも、つまるところ例外なく、私達「妃」に対する「攻撃」は、
悪化する傾向にあるからだ。
特に今回は「私」が危険な目に会えば、皇子は例外なく戦地から戻ってくる。
そうさせないための皇帝陛下が用意した「安全な所」なのだ。
今回の戦争に直接参加するのは、第3皇子だけなのだけれど…
前線の指揮所には皇帝陛下が直々に赴く事になっている事も、
私が「安全な所」に行かなくてはいけない要因の一部となっているみたいだった。
皇帝陛下自身も…
「済まぬの。どうにも抑えがきかなくての…
事が事だけに前線に赴く事にしてしまったのだ…」
あれらか部屋に戻って普通のドレスに着替えさせられた私は、
直ぐにベッドに寝かされていたのだけれど。
その場に直々に皇帝陛下がお出で下さって、
私の様子を確認しに来て下さったのだ。
優しく頭を撫でて貰い完全に「子供扱い」だったのだけれど。
それでも嫌な気分はしなかった。
私を見る目は、確実に皇后さまと私を重ねていらっしゃるみたいだったけれど、
だからこそ前線でこの戦争の指揮を取る事に決めたとも後で聞かされたのだった。
その想いは透けて見えてしまう「王国の王妃を殺したい」それだけ。
平静を装っていたけれど、自分の最愛の者と同じ殺され方をされそうなっている、
私を見て皇后さまの最後のその姿を思い出していたのかもしれない。
皇太子殿下は皇帝陛下が留守の間、帝国の全権を委任され、
もしも皇帝陛下がお戻りにならない場合は、
そのまま帝位に即位する事になるらしかった。
既に跡継ぎとして立派に務める事が出来る皇太子殿下がいる為に、
皇帝も何の憂いもなく、前線に向かえるらしかった。
とはいえ、前線で皇帝陛下が死ぬなんて事はまずありえず、
直衛に付く近衛の優秀さも相まって、皇帝陛下の命を前線で刈り取る事は、
「安全な所」に連れて行かれる私と同じ位難しいと聞かされている。
本来なら今回の戦争、皇太子が前線で指揮を取る予定だったらしいのだけれど、
皇帝陛下が、直々に指揮を取る方向に切り替えられた。
「王国との戦争」は、帝国にとっては半分遊びの様な物。
もちろん前線で戦う兵士達にとっては遊びではないのだけれど…
戦争さえ起きれば出世する事が出来る為に、武勲を立てようと、
必死に戦う一般兵士もたくさんいるらしかった。
「戦争」は現在の帝国にとって出世をするチャンスととらえている人も、
多い様だった。
「父上にも困った物だ」
ヤレヤレと言った形で皇太子殿下も苦笑いを私に見せに来てくれた。
もちろん戦時下の格好で戦争に行かない皇太子でも、
鎧を見に纏っていたのだった。
戦争が始まり、兵士がリアルタイムで戦っているはずなのに…
城の落ち着き様は手慣れた物であって皇太子妃と第2皇子夫妻もまた、
馴れた様子だった。
皇太子妃と第2皇子妃も私と同じように「安全な所」か、
皇子の達のプライベートルームから出る事は制限される事になるのだけれど。
皇太子妃は落ち着いているらしい。
それに対して第2皇子妃は戦時下になって色々と不満を貯めていると聞かされた。
まぁ妃達も例外なく鎧が用意されているからね。
あの顔隠し付きのドレスを嫌がる第2皇子妃だから…
戦時下のドレスも嫌なんだろうなって簡単に思いついてしまった。
さて、私のお出かけの準備は着々と進んでいた。
1年間で増え続けた私の身の回りの世話をする人員も、
これから向かう「安全な所」に連れていける人は限られているらしい。
私の身の回りのお世話を直接する人と、何時もいる3人の侍女。
それから直接見える位置でいる護衛は連れて行く事になるのだけれど、
それ以外の人はもちろん連れて行く事は出来ないとの事だった。
「安全な所」は皇帝陛下の直下の組織が管理する、
いわゆる皇帝陛下のプライベートスペースの中にあるみたいなのだ。
その場所を考えると、確かに外部の人間を入れたくないって、
考えるのは当然なのだろう。
「下支えする方々は変わりますが、
第3皇子妃のお傍にいる者は変わりません。
それに、私達第3皇子妃様のお世話を直接する人間は、
皇帝陛下の直下の組織で教育を受けているのです。
私達にとっては一種の里帰りの様な物です。
ご安心くださいませ」
そう。私にとって知らない場所でも侍女達に勝手知ったる場所って事なのだろう。
落ち着いて私の身の回りの物を準備する侍女達は何時もとしている事は、
変わらない。
けれど彼女達も新しく支給された革鎧を着て、
戦時下の格好に切り変わっているのだった。
私の持ち物は多くはない。
私物と呼べる物の中で持って行かなくてはいけない物なんて、
ほとんど思いつかないのだけれど、
侍女達は違うみたいなのだ。
と言うのも、考えてみれば簡単な話で、
私が使う矯正具と保護具は私専用の物であって汎用品じゃない。
その汎用品じゃない物関係は全て持って行かなくちゃいけないって事なのだ。
いつも腰掛けている専用の安楽椅子だって皇子のプライベート空間でのみ、
使われる特注品なのだ。
保護具と矯正具を取り付けられた状態でも、楽に腰かけていられる様に、
私の体の形に合わせて作られて一品だから。
考えれば考えるほど「私の為だけ」に用意された物の多さに驚くしかなかった。
保護具前提のドレスに戦時下用途新しく用意されていた革鎧もその上から、
着せられる物が用意されていたし。
既に革鎧と同じ位固い矯正具を身に着けているのだからそれだけでも、
十分防具として機能するような気がするのだけれど…
「ダメですよ第3皇子妃様。
保護具と鎧は別物なのです。
たとえ矯正具が鎧以上に固い素材で作られていて、
防御力も高い物として作られていたとしても。
保護具は鎧とはみなされませんから。
大人しく鎧を身に纏って下さいませ」
そう、矯正具生活に慣らされた私にとって初めて見せられた、
戦時下用の「鎧」は、言い方を変えれば革の鎧と言う艇で作られた、
素材を革に切り替えたドレスだったのだ。
…つまり、何時もの病院着型のドレスに、
更に革鎧型のドレスを着せられる事になるのだ。
鎧と言っている割に細かい装飾品が縫い付けれれていて、
とても戦場で使えるような物じゃ無い。
儀礼目的で使用される事が前提の物なのだけれど、
それが戦時下の妃達の姿と言うのだから仕方がない。
と、納得したいのだけれど私にはリハビリが待っている。
もうそろそろ医師から許可が下りるはずなのだ。
そうしたら「安全な所」でもリハビリ位はするつもりでいるのだ。
「もちろん、リハビリをするお時間はありますが…
御辛抱くださいませ」
その言葉に込められた意味は重かった。
リハビリが始まれば私は好きに動く時間を作って貰えた。
けれど「安全な所」にそんな場所があるのかどうか解らない。
リハビリも制限されるって事なのかもしれなかった。
それでも準備は順調に進み、第3皇子のプライベートスペースにあった、
私が使う物は順調に運び出されついに「安全な所」につれていかれる日が、
来るのだった。
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