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異世界召喚された私は姫様の影武者として生かされ、そして復讐を誓う【8-4】

私に何も見せてくれず臭いも解らない。

ただ近くに第3皇子がいる事は解っていて周囲の声も厚い生地の所為か、

近くで喋ってくれる皇子の声ほど、はっきり聞こえてこなくなってしまった。

一瞬にして、私の頭は固いヘルメットの様な物を被せられたみたいな、

雰囲気になっていた。


そう、このドレスは妃達の顔を見せない様に作られている訳では無かった。

妃達に見せられない「事」がある場合その視界を遮り絶対に見せない様に、

する為に造られた物だった。

その後私は第3皇子に抱きしめられたんだと思う。

手を握られたまま皇子は私を支えていた。


その後ろからかすかに音が聞こえてくる。

シュ…

シュと…

何かが切り刻まれるような音がして…

けれど頭を布と襟に包まれた私の耳は音がぼやけて、

何が起きているのか解らなかった。





連れて来られた人がどうなっているのか?

その音はたぶん人が切り付けられている音かも知れないけれど、

その音さえ第3皇子の胸に抱きしめられて、頭を抱えられてしまえば、

襟が耳に当たって耳も防がれて何も聞こえなくされてしまう。

流石に視界は奪われ耳も聞こえない上、臭いだって解らなくされると、

一気に不安になって私は無意識で声を漏らし始めていた。

「あっあっ」

不安になって頭を左右に振って声を漏らせば…

キュッと首元を押し込まれる。

そうすると首元のギミックが動いて…

ハイネックに作られたのドレスの内側に取り付けられた、

安定板が上にせり上がる形になって私が頭を動かして暴れる事を阻害する。

パニックになりかけの私だったけれど、その後カシャリと金属音がして、

カパリと片耳だけ小さな聞き取り穴が開いた。

「大丈夫だ直ぐに終わる」

と私に囁き掛けるのだ。

その第3皇子の声を聴いて私は全身の力を抜いて大人しくなる。

けれどそのうち何かが私に宛がわれて検査している声が聞こえてくるのだ。

その声は知っている声で私の施術をした魔法使いと医師の声だった。

「変化なし」「圧も変わっていないな」「力場も変わらずですね」

そうささやく声が聞こえて第3皇子は私を強く抱きしめたのだった。

そしてまた私の耳元からカシャリと金属音。

それだけで、私の耳はほとんどの音を聞こえなくされてしまっていた。

けれど次の瞬間…

遠くから声が聞こえてくる。

遠くなのにその声は良く聞こえてきて…

誰の声かなんて解りきっていた。


「どうだ?第3皇子よ。妃の憂いはなくなったか?」

「はい。第3皇子妃に変わりはありません」


そして私の状態を確認した第3皇子は声を大きく上げるのだ。

誰にでも聞こえる声量で何かを暴露するかのように。


「憂いは晴れておりません!妃は何も変わっていないっ!」


式典会場の雰囲気が変わるのを私でも感じてしまっていた。

熱が籠った熱い空間が出来始めていた。

皇帝陛下の口調は変わらず…

けれどその迫力は一気に増していくのが解ってしまった。


「使者殿?これはどういう事かお判りか?」

「あ…あ…」

「帝室に入った以上、第3皇子妃は「誰」であれ、ワシの可愛い娘なのだ。

その娘が苦しんでいるのだ。

親としてどうにかしてやりたいと思うのは可笑しな事かね?」

「あっあっ…

お、おかしなことはありません…」

「そうか。そうか。可笑しな事は無いのだな。

ワシは絶対に娘を苦しめる要因となった者を生かすつもりはなくてな…」

「そ、そうですね、そ、そう思います」

「それが、たとえ隣国の王族の王妃であっても許すつもりは無いのだ…」

「…え?」

「我が娘の呪いの起点となった物を使って…

その起点に一番強い力を感じる人物を漁ったのだが…

真に面白い結果でなぁ。呪いが繋がっている以上、

手繰り寄せる事が出来てしまうのは呪術師の常識なのだ。

しかるに「ワシ自身が」その呪いの根源を追っておくと…

本当に面白い結果での。

その地点は王国の王城がある地点だったのだ。

そして細かく探ればそれは王族のプライベートスペースに見えてな?

いやいや。

まさかそんなはずはないと思っての。

ワシの頼りにしている呪術師にもお願いしてみたのだが、

やはり王国の王城付近でのお?

遠見の魔術師に王城を見て貰ったのだ「何故か」知らぬが、

時たま王国の王妃が刃先の掛けたナイフを片手に、

呪印を結んでいる姿をな?何故か見てしまったのだ…

それで影に少々無理を言っての?

王国の様子を「記憶の宝珠」に取って来てもらったのだが…

いやはや、王国の王妃殿下が着ているドレスを身に纏ったご婦人が、

その日も丹念に丹念に呪印を結んでおったのだ。

ホレ。これがその映像だ」


たぶん皇帝陛下が何かを見せたのだろう。

使者が慌てふためいているのか。

恐怖しているのかカタカタと震えているかのような音がする。


「ば、バカな」

「どうでも良いが、まだ言い訳を続けてくれるのかの?

教えてほしいのだが?」

「…」

「無言は弁明の余地なしという事で良いかの?」

「もし、もしもわたくしの願いが届けられるのであれば…

我が王国の王妃様には寛大な処置をお願いしたく…」

「うむ。そなたの願い。

しかと聞いた」

「で、では!」

「ワシはその願いの返事を王宮に届ける事にしよう。

さぁ、そこに置かれた箱に寝ると良い。

直ぐに王国に返事を届けさせてやろう」

「…はい」

「では良い旅を送るがよい」


その会話を最後に…


ドコン!


という大きな音だけが式典会場に鳴り響いたのだった。

私には何が起こっているのか解らない。

けれど使者と皇帝陛下の声ははっきりと聞き取れて、

私に呪いを掛けている人物が、解ってしまった。

あの、王国の王妃が…

私にって思うと最後に私を送り出す時に優しく教育していた時から、

第3皇子妃なった瞬間から…

私の命を人質に帝国に何かを要求するつもりだったって事なんでしょうね。

最後の最後まで王国は私を人とは思っていなかった。

私はただの道具としてしか見られていなかった…



「さて、茶番は終わった。

贖罪のチャンスも与えたが王国のその答えは茶番だった。

侵攻軍司令官へ直ちに連絡せよ。

ワシの可愛い娘に呪いを掛けた王国の王城に赴き、

直ちに呪いを掛け続けている「本人」を捕まえて、

ワシの前に引きずってでも連れてこい。


王国内にいる帝国臣民の命と財産は守れ。

それ以外の「全て」を許可する!」

「皇帝陛下!私もその進軍に加わりたいと思います!」


そう答えたのは私を抱きしめている第3皇子の声だった。

彼もまた本気で怒っている様で皇帝陛下に許可を求めていたのだ。


「私は許可する。

ただしお前が行軍に加われるかどうかは、

第3皇子妃が許可を出した場合のみとする。

良く説得するがよい。それで第3皇子妃が納得できないなら諦めよ。

それでよいな?」

「…はい!」

「これにて、今日の式典は終わりとする。

各々役割を果たすために動け」


その言葉は、侵略戦争の合図だった。

そしてこんな時でも私の事を考えてくれている皇帝陛下のお言葉があった。

私は立つのに使っていた保護具から解放されると、

そのままお姫様抱っこをされて第3皇子のプライペートスペースに、

戻されたのだった。

そこでやっと首の紐を解いて貰って顔を出す事が許されたのだけれど…

そこからは「戦争に参加したい」第3皇子と行かせたくない「私」とで、

遅くまで話し合いをする事になるのだった。


次回の更新は明日の20時です。

完結まで毎日更新します。

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