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異世界召喚された私は姫様の影武者として生かされ、そして復讐を誓う【8-2】

私の生活する部屋の片隅にガラスでカバーが被せられた立派な棚が設置されると、

そこには私が呟いだ時に見た「お椀」が飾られていたのだ。


「あれ、は?」

「はい。第3皇子妃様が興味を持たれたという事で、

冒険者の方より献上された物です」

「取り上げたの?」

「いいえ。かの者は皇子妃様の近衛騎士の一人です。

「自分の傍に置いておいても価値が解らないから価値の理解できる、

皇子妃様のお傍に置いて戴けるならこれ以上の喜びはない」

と…差し出して来たのです。

断らないであげて下さいませ。

かの近衛騎士の最初の功績となりました。

皇子妃様の御心に響いた品を献上する事が出来たという栄誉でもあるのです」

「…奪い取ったと言う訳では無いのですね?」

「その様な事は断じてありません」

「解りました。有難く戴く事とします」


それから私は…

献上してもらったお椀を見ながら、お礼のお手紙を書きたいと思ったのだけれど、

今の自分の腕ではそれもかなわず、口頭で伝えた言葉を侍女に、

手紙にして貰ったのだ。そしてその手紙の所に記載する自身の名前だけでも、

綺麗に書けるようになろうと利き腕ではない左腕を使って練習をした。

ちっとも綺麗にならなかったけれど、何とか「読める」レベルにはなれたのだ。

それで、手紙を届けて貰う事にして…

その日から、左腕で恥ずかしくない字が書けるようになる練習をするって、

目標が出来たのだ。

また珍しいお宝を見つけたりしてお話を聞かせてくれた「冒険者」に今度は、

自分の文字で手紙を出したいと思って。


第3皇子の用意してくれた細やかな「冒険者」との語らいは、

私を前向きにしてリハビリにより熱中するようになっていった。

些細な事だけれど、生かされる以外にやりたい事が出来た事は、

私を大いに前向きな気持ちにしてくれて、

この体ともうまく付き合って行こうって思っていたのだけれど…

体力が回復してきて…

腰を支えるコルセットや、胸のバスクとかスカートの中の支えが無くても、

普通に座っていられるほど回復して着た頃…

右腕も動く様になってきたし、また元の体みたいに動ける様になって来た頃…


「第3皇子妃様、毒袋を取り出さなくてはいけない大きさまで膨らんでいます」

「もうこれ以上、毒袋を体内において置けません…

近いうちに摘出しなければいけません」


魔法使いと医者に告げられたのは再手術の告知だった。

それはまた、あの介助される生活が戻ってくるって事だった。

対処療法だから再度手術を受ける事は解っていた。

理解していた。

けれど…

「はい。お願いします」

としか私が言える言葉は無かったのだ。

嫁がされたのが去年の春くらいで…

その後すぐに手術を受けてリハビリを始め・・・

ほとんど一年がかりで私は体調を戻したというのに。

冬の寒い時期が終わって暖かな春の日差しに包まれて、

良い年が始めると思っていた直後の告知。

命が危ういという現実をまた突き付けられる格好になって…

第3皇子の命令ですぐさま手術の準備が始まって…

やっと解放された、保護具と矯正具を身に着ける辛く苦しい生活が戻ってくる。

そう思うと…部屋で一人になった後、泣かないではいられなかった…


「やだよぅ…

受けたくないよぅ…」


零れ落ちるのはそんな言葉ばかり。

この一年間の体の辛さを知っているから余計に受けたいとは思えなかった。

けれど私に手術を受けないという選択肢は存在しなくて…

ある日、起きたと思ったら体には、術後に巻かれていた見覚えのある、

保護具がお腹に巻かれていて…

また右腕が動かず両足も痛みと痺れが襲ってくる。

ベッドの中で第3皇子に抱きしめられていた私は…驚くしかなかった。

「え?え?」

第三皇子は何も言わず目覚めた私を抱きしめる。

「しゅ、手術?え?」

「ああ手術は終わったよ」

「だ、だってあと一週間後の予定…」


私に教えられた手術のスケジュールは嘘で…

その日起きた時また辛く苦しいリハビリと保護具を身に着けての生活が、

幕を上げてしまったのだった。

「本当の期日を言ってしまったら、君はたぶん…」

皇子の考えは当たっていて…

また苦しい想いをする位ならって、ここの所ずっと考えてしまっていたのだ。

予定日前日まで第3皇子の隣で笑って。

それで私は御終いにしようって…

自分の人生にけりを付けてしまおうって本気で考えていたのだ。

けれども考え自体皇子には筒抜けで…

それでも予定日に嘘を付かれていたとしても、

私は第3皇子を怒る事は出来なかった…

私自身が先に楽になろうとして第3皇子を裏切ろうとしたのだから・・・

そのくらいの事を考える冷静さがその時の私にはあったのだ。

けど…

また苦しい保護具と矯正具を身に着けて自由に動けない生活の幕開けで…


「ま、また…

また私は…う、動かない、腕が…足が…

動かないよぅ…」

「解っている。解っているから言わなくていい」

「お腹が、苦しいよぅ…

動かしたいよぅ…

あ、ああぁっぁっぁぁああぁぁぁ――――――――」

私は泣いた。

第3皇子の胸の中でその日は泣き続けた…


また保護具の他に体の形を整える器具を身に着けて、

甲斐甲斐しくお世話される日々が戻って来てしまったのだった…

一年前のあの苦しかった術後の検査と調整の日々が始まってしまった。

2回目だから、それがどれくらいの期間がかかるのか解ってしまって、

一日一日と大人しくベッドの上で保護具の状態を確認される日々。

私の気持ちがまた前を向くのには相当な時間を必要としたのだった。

2度あったのだから、3度めが必ずあるという現実。

来年もまたって考えれば…

体力を戻すこと自体が無駄に思えてもきて…

それでも一日の終わりに皇子に確認される、

「生きている事」「傍にいる事」を認識する度…

まだ死ねない。

この人の為にも生きなくちゃって何度だって思い起こして、

リハビリの許可が出るまで私は待ち続けるのだ…。

死にたいとグラつきかける意志を押し留めて。


けれどその手術から一カ月がたった頃…


その日、私は何時もと違う格好となるドレスが準備されていた。

保護具もバスク型の矯正具も一段と立派な物が用意されて、

なにより首回りと頭に色々な物を身に着ける事になったのだ。

私の体調の回復状態と容態の安定してきたタイミングで、

見計らったかのような状況で隣国から使者が来るとの事だった。

第3皇子の隣に立って使者と面会をする事なんて、

体調が許す限り参加していたから、今の私には珍しい事じゃなくなっていた。

けれど使者と会う程度なら、特別なドレスを身に着ける様な事じゃない。

なのに侍女は顔を歪めながら説明するのだ。


「今日出席する式典のドレスは、皇太子妃と第2第3皇子妃は、

「規定」に即した物をご用意する事が皇子達の間で決められています。

それぞれドレス事態は違う装いになりますが…

総じて大きな襞襟がおありになる事が求められます」

「そう、なのですね」


そう言って着せられたドレスは大きすぎると言って良いほどの襟を、

持つドレスだった。ハイネックで首は完全に包まれながら、

その首と肩を利用して、頭全部を覆い隠すほどの高さまで聳え立つ、

セーラー服の襟を逆立てして更に大きくして頭を囲う様にした、

頭の後ろに立つように固く作られた襟を持つ異色のドレスだった。

何枚も重ね合わせて作られた、内張が仕込まれた固い物は、

不自然なほど強固でしっかりと私の肩と首を使って固定されたのだった。

肩と首周りから聳え立つ大きな襟の所為で周囲を見る事は出来ず、

顔周辺に纏わりつく固い襟は正直邪魔くさい。

その上で行き場を無くした髪は全て頭の上でまとめられて、

綺麗にな編み込みが施されて整えられたのだ。

腰まで届く長い髪を後頭部できつく纏め上げられるだけでも、

頭がいつも以上に重たく感じる。

後頭部に纏められた髪が、頭を包む襟を押し広げようとするのだけれど、

それでも襟は肩と首にしっかりと縫い付けられてほとんど広がらない。

何枚も重ね合わせられた襟で包まれ頭の周りに立ち続けるのだった。

頭を動かして横を向いたとしても大きな襟が邪魔をして、

周囲を見る事が出来なくなっていたのだ。

まるで薔薇の花弁の中心から顔を出している様な…そんな気分にもなる。

その襟の登頂部分から首周りにまで至るまで、

また別の厚手の布が縫い付けられていて背中にマントの様に垂れ下げられている。

ともかく前しか見る事が出来なくなっていて…

ドレスから続くように襟自体にも細かく刺繍がしてあって、

決して別体で取り付けたようなモノじゃない。

こういったデザインだって主張していた。

けれど普段使いのドレスと違い過ぎて違和感を覚えない訳にはいかなかった。

それにいつもは身に付けないで良い上半身を包む皇子妃用として用意されるケープ。

それもこの巨大襟付きドレスに合わせた物でこのドレス専用に用意されていて、

着る前に内側の革で出来た胸当てを身に着けさせられて、その上に縫い付けられた、

ケープを体に乗せる形を取らされたのだ。

あくまでケープですと主張する物なのだけれど、その形や構造は全くの別物。

内張が仕込まれた2重構造へと仕上げられていた。

そのケープを首周り襟の裏側に取り付けられた留め金で固定しながら、

しっかりと繋げられれば私の上半身を優しく包み込んで、

大きく見せて聳え立つ襟が違和感が無くなる様に仕上げられていた。

その上から妃用マントまで用意されていて私は全て身に付け終われば、

厚着のし過ぎで良く解らない丸まった格好となっていたけれど…


「何の問題もありません。

第3皇子妃として本日の式典に相応しいお姿になっただけなのです」


侍女はそうとしか答えてくれなかった。

私のいつもよりも念入りな準備が出来次第、第3皇子が迎えに来てくれて、

いつも通りケープにもある、隠しスリッドから私の腰に手を回して、

バスクのベルトを掴んだ。

それだけで私の重かった体は軽くなって歩行できるようになる。

仲睦まじく歩く姿を家臣に見られながら、

私は今日行われる式典の会場に足を運ぶのだった。



次回の更新は明日の20時です。

完結まで毎日更新します。

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