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異世界召喚された私は姫様の影武者として生かされ、そして復讐を誓う【8-1】

私の体力を戻すリハビリは、予定より遅いながらも順調?に回復していた。

それを周囲の皆も喜んでくれた。と言うよりほっとしていたのが正しい。

毎日保護具を取り付けての生活は体力はもとより精神的に来るものがあった。

体が自由に動かないという現実。

術後、当然の様に体は動かないって私自身は理解しているの。

けれど体は違った。

「こんなはずはない動けるはずだ」って、動こうとするのだ。

特にお腹周りは自然に動こうとするからふいに態勢を変えようと、

体を捻ろうと何も考えずに動こうとしてしまうのだけど、

その度にお腹周りを整えている保護具が体を固定して…

「うっく」ってなってしまう。

他には私の数少ない公務で「承認」サインをしようと、

動かない右腕が動くつもりで羽ペンを手に取ろうとしてしまったりとか…

その度に右腕はまだ使えない事を理解して私は左腕で、

侍女に補佐してもらいながら汚い文字を書く事になるのだ。

他愛のない、ごく自然に行っていた事がある日突然出来なくなった事が。

些細な事の積み重ねだけれど辛いのだ。

動かない…

動くはずが動かない…

その私の漏らした声を侍女達が聞いて私にすかさずフォローを入れる。

その事で不便はしないけれど体の保護具をチェックされて、

お腹周りは入念に確認される時間が続くのだ。

呪いの起点があったナイフの残滓はその周囲の汚染された毒袋を取り除いても、

全て取り切れている訳ではないのだから。

容態が悪化していないかを確認して私の様子に安堵する侍女達を見る度に、

大切にされている事は理解できるけれど、

「こんな簡単な事も出来なくなった」っと、自覚しなければいけなくて、

複雑な気分になってくるのだった。


私の体調に合わせて公務は管理されて、

よほど重要な祭日で第3皇子の隣に立つ事が必要な場合を除いて、

侍女達の手厚いフォローと管理を受ける毎日が続く。

震える手でする私のサインだって本当は必要じゃない。

国政に係る重大な書類にサインする訳じゃないし。

私が公務に使う物は第3皇子殿下の政務官が全て手配してしまう。

食の細くなった私が気に入って食べる物など些細な物事まで、

私の生活にかかわる事は全て侍女達とその政務官たちによって、

整えられてしまっているから、

私の事務仕事は全て「見せ掛けの公務」状態なのだ。

それでも第3皇子妃としての立場と体裁を整えるため「公務」は与えられて。

その最たる仕事がしてもしなくても良い「皇子妃としてするサイン」だった。


利き腕の反対の腕で書く私の字はとても汚い。

まともな形だって保てていない。

侍女に腕を支えて貰わなければその字だって他の人が読める形にならない。

何もできない。

何も役に立てないと自覚するのに時間はかからなかった。

自分が書いた汚いサインを見て思ってしまうのだ。

私に関わる申請書類への許可のサインは全て第3皇子がするから、

私がサインする事なんて必要とないと解っていながら、

それでも皇子妃として生かされていく事に、

涙を流さずにはいられない日々が続くのだった。

だた、第3皇子の隣に立つ事すらバスクのベルトを持ってもらわなければ、

いけないなんて…。

最低限の体裁さえ自分一人では行えない。

健康でありたかった。自分一人で動きたかった。

けれど、今の私には全て叶わない。

そんな日々が続く。


それで、夜になれば私は第3皇子と一緒にベッドに入って。

第3皇子に抱きしめられるのだ。

そして…

「腕の中にいるよな?」

「はい」

「今日も生きているな?」

「生きています」

「よし」


皇子の問いかけが、確認が、皇子が眠りに着くまで続くのだ…

それだけで私は自分が必要とされているって思えて嬉しかった。

第3皇子はほとんど何もできない私が否定的な考えに陥らない様に、

色々と手配し始めてしまったみたいだった。

何もしなければ、自ずと考えてしまう自分の体の事。

リハビリで治すんだ。

治るんだって必死になって体を動かして。

それで、リハビリが終わった後に襲ってくる恐怖…



この程度の頑張りで私の体は治るの?


もう、体が元に戻らないんじゃないの?



悪魔みたいに囁き掛けて…

私は我に返りそうになっていたのだけれど…

リハビリの後には第3皇子が手配した「冒険者」が、

何時の間にか私の所に訪れるようになっていた。

「冒険者」なんて呼んでいるけれど、もちろんそんな人達じゃない。

帝国の爵位を持つ列記とした貴族なのだけれど、

世界中を歩き回って色々な事を見て回り各国の事を偵察したり、

帝国内にある「ダンジョン」や「迷宮」と呼ばれる施設?に潜って、

お宝を見つけてくる事を生業?趣味?にしている貴族の旅人や、

近衛の中からトレーニングと称してダンジョンに潜る集団のリーダーを、

呼んだりして、探索して見つけた「物」を私に見せるという娯楽?が、

私に与えられる様になったのだ。

楽しい世界のお話と、そこで見つけた物を見せてくれる「冒険者」が、

持ってくるものは基本的に「ガラクタ」なのだけれど。

(もちろん持ち込まれる物は全て危なくない物かチェックされた後。

第3皇子が先に選別して、見せて良い物だけが私の元に来る)

その中には絶対にこの世界では作られない物がいっぱい有ったのだ。

第3皇子もソレを見越して見せているのだろうけれど。

私の気持ちも、上向く物がほとんどだった。

私と同じでこの世界に「落ちてきた」見た事のある品々で、

その品をどうやって手に入れたのかを「冒険者」に語ってもらいながら、

その見つけた物を見るのはとても楽しかったのだ。

苦難の果て秘宝として宝箱に収められていたのが、銀板と言われて、

見せられたのが「電源の入っていないスマホ」だったりとかするから。

笑ってはいけないのだけれどその苦労して手に入れた物とのギャップは、

笑わずにはいられなかったのだ。

けれどその笑った私の顔を見る度に周囲の侍女や政務官が喜ぶのだ。

だから良い傾向として私と「冒険者」との「お話」は定例化して行った。

そんな冒険者が見つけた物は、基本第3皇子に献上される事が決まった、

物だけが私には見せられていたみたいで…。

私が欲しいと思ってしまうものもいくつかはあったのだ。

それは、異世界転移前の世界にあった故郷を思い出させる物。

この世界の食文化では絶対に使い道のない木で出来たお茶碗みたいな。

元の世界ではあって当然だけれど、

この世界では特別に作らないと絶対に見る事が出来ないお箸とか。

食器の数々。

もちろん、あったとしても使わせて貰えないし。

飾っておくだけしか許されないコレクションみたいな物なのだけれど。

その他愛もない平凡な日常品が見られる事が私には嬉しかった。


「あのお椀、懐かしいな…」


冒険の果てに手に入れたのが木で出来たお椀であることにも驚いたのだけれど、

私が何気なく呟いたその一言は侍女によって伝えられて、

第3皇子はそのお椀を手に入れていた。


次回の更新は明日の20時です。

完結まで毎日更新します。

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