異世界召喚された私は姫様の影武者として生かされ、そして復讐を誓う【6-1】
帝室の人々との顔合わせと言うのは、
そのままその日の夜に行われた。
私と第3皇子の結婚式というモノは本当に皇帝陛下に認めてもらうだけで、
公式な挨拶は済んでしまったのだった。
それは、大広間で集められた人々だけに私はお披露目される形で、
帝国の主要人物への公開は終わりだって事を意味していた。
もちろんその後私室というか第3皇子の執務室に、
私と深く関わり合いになる人々は別途全員集められて、
第3皇子殿下の私的なお披露目は完了したのだけれど…
その第3皇子のお披露目の方が人数が多いくらいだった。
そのお披露目に集められた人員たちだって、
第3皇子の為にいる訳じゃなかったのだ。
その30%に匹敵する人間が私の為に用意された人間だった。
私には王国からずっと一緒にいた3人が傍付きがとして与えられた他、
私の生活を支える為に多数のメイド達が集められその人数だけでも、
選別をクリアー出来た20人が私の為に働く事になるらしかった。
これからも選別をクリアー出来たメイドは増えるらしい。
顔こそ合わせないけれど、各部署の代表者2名が私のお披露目に
参列した他、生活を支える以外の集団としてもう一つの独立した集団。
その集団がお披露目会場で一番存在感を主張していたのだった。
そう女性騎士が何名も配属されていて顔合わせに来た騎士は10名にも及ぶ。
この世界で女性騎士は珍しい存在なのだけれど、
その珍しい女性騎士を惜しみなく配属されたのだった。
もちろん実力は折り紙付きで、
並みの男性騎士なら軽くのしてしまう力があるらしかった。
見眼麗しい集団にも関わらず、男性と同じように全身鎧を身に纏って、
お披露目会場では第3皇子の指揮下にいる事を表す、
刺繍の施されたマントを誇らしげに身に着けていた。
1人1人が強い意志を持った瞳をしていてまさしくエリート騎士と言った、
強者の貫録を漂わせた感じだった。
その下に侍女兼専属の魔法使いが3名配属されて計13名が私の視界に入る所で、
護衛をする事になるらしかった。
その他に30名以上が周囲の警備に当たり私の周りを固める事を教えられた。
帝国の皇子妃としてはそれが最低限で王宮の自室にいる限りは、
その人数で許されるけれどもしも外出する事になったら最低でも倍以上の人数が、
護衛に付けられると教えられてなんだか不思議な気分になる。
大切にされる事は嬉しいけれど―――
そこまで厳重な守りが必要なのかなって思ってしまうのだ。
皇子妃に対する護衛はそれが帝国では普通で。
皇子達はそこまで護衛を連れて歩かないとまで言われてしまった。
「殿下達が倒されるような相手なら騎士達はあらゆる意味で、
手に負えない相手という事ですから」
そう帝国に置いて皇子と言う存在は絶対無敵の存在として崇められているみたいで、
その圧倒的な強さからどんなに厳しい戦局でもひっくり返してしまえるほどの、
力を持っているらしかった。
その気になれば中堅国家VS皇子も可能らしくてその皇子達のポテンシャルの高さは、
他国から戦略兵器として恐れられる程度に強いのだ。
もちろんその超常的なパワーの所為で毒殺等も不可能で自力で完治できてしまって、
肉体的な暗殺なんて不可能な始末。
その為に歴代の帝室は成長と共にも皇子に対して警備する事は辞めていき、
その代わりに戦友となれる家臣達を用意するようになってしまっていた。
とにもかくにも大勢紹介された人々の大半は私の護衛と生活を支える為の人々で、
その内の何名かは第3皇子殿下の戦友として使える人を、
夫に持つ女性騎士もいる状態だった。
それはもちろん未来の乳母となる事を期待されている人って事は私でも理解できる。
まるで固い殻に守られて私が何に怯える事もなく生活できるようにと整えられた、
第3皇子妃の為の箱庭がそこにはあったのだった。
そのお披露目の人数は皇帝陛下の下でお披露目されたときより、
人数がいた様にすら感じられる。
もちろん執務室いっぱいに並んで、窮屈そうだったって事もあるんだろうけれどね。
そしてお披露目の後は第3皇子殿下と結婚後初めての夕食を食べて、
約束の帝室の顔合わせの時間となった。
夕食を全員で取るという事でもなく。
その後にセッティングされていたのだった。
その理由は簡単で…
案内された場所は宮殿の中でも重要な帝室の為の空間であり、
信頼のおける人間ですら選別された者しか入る事の許されない、
皇帝陛下の専用区画の一室に設けられた、窓がなく強力な結界の張られた空間へと、
私と第3皇子殿下は案内されるのだった。
その空間は2重扉で内側に入れるのは、
私の傍付きとして宛がわれた侍女と第3皇子殿下の一番の戦友だけ。
それ以外の入室は許されずその扉の内側に入った後は、
連れてきた二人は壁際に立って決して動かない。
そして私と第3皇子だけがその部屋の中心に近い場所に設置された、
椅子へと近づいて行く。
背中側に大き目のパーテーションが置かれていて透けて見えるのだけれど、
中の人の状態は決して分からない。
シルエットをぼやけさせる魔法がかかっているのか他の参加者である、
皇太子と第2皇子の存在を認識できたのはそのパーテーションの、
内側に入った時初めて視認出来るっていう不思議な空間になっていた。
そしてその空間の中で二人の皇子は異常な表情で私と第3皇子を出迎えたのだ。
皇太子第2皇子共に、自分の妃を膝の上に乗せて。
それだけならば私もそれ以上、気にはしなかったのだろうけれど。
膝の上に乗せられた妃達は明らかに困った表情を浮かべていたのだ。
腰に回された腕は各々の妃達をしっかりと掴んで離さない。
それは大切な物を取られない様にする子供の様な形で。
二人の妃は各々の皇子の肩に頭を乗せていてその後頭部を、
皇子達が押さえつけて動かせない様にしていたのだ。
それは、まるで第3皇子に顔を見せない様にするかのような形を取っていた。
その押さえつけられた状態でも妃達は大人しくしている。
・・・何となく解ってしまったのだ。
膝の上の妃達は動けない。
手を引かれて入室した私と第3皇子を見て。
皇太子と第2皇子はほっとした表情を私に見せてくれる。
そしてにこりと微笑みかけてくれたのだ。
けれど…
それを差し引いてもこの空間は異常だった。
帝室の人間しかいないからという言い訳を差し引いても、
皇子達は私と第3皇子を見て明らかにほっとした表情を浮かたのだから。
「やっとお前にも妃が出来たのか…安心した」
「これで俺達の妃を見る目も変わるな。良かった」
「兄上達。いつも言っていたではありませんか。
私は兄上達の妃に興味はないと」
「そうだったな。それが今日やっと証明された」
「お気に入りに手を出されるという事がもうないと思えば気が楽なる」
その会話を聞いて私は確信せざるを得なかった。
彼等は皇子たちはたぶん壊れている。
そして、その壊れた自分を保つために妃を必要としている。
人目を気にしなければ妃を手放せない程度には不安で押しつぶされそうな、
気持ちを抱え続けて何時までも怯えながら生きているのだ。
昼に結婚式の時、現皇帝の後ろでニコニコとしながら立っていたその姿は、
二人とも立派な皇太子であり第2皇子であったのだけれど。
帝国を支えるには心が弱かったのかもしれない。
潰れた。
潰されてしまったのだ。
それでも皇太子も皇子も辞められない。
その皇子達を支える為の妃が必要だった。
彼等皇子達にとって帝国と同じくらい大切な妃なのだ。
皇帝陛下が第3皇子に言った意味も今なら私にも解ってしまう。
守り・支え・育てよ。
それは生涯の代わりの利かない心の支えとなる皇子達の唯一無二の、
存在だからそうなる様に努力し育てなさいと。
そう皇帝陛下は忠告したって事だった。
僅かだけれど王国の王妃に教えられていた重要な事。
帝室に嫁いだ妃達に権限は一切生まれない。
そして行動は厳しく制限されると聞いていたのだ。
けれどその「行動を制限される」というのはどちらかと言えば、
要人として守られるという意味だって私は解釈していた。
けれどそうじゃない。
皇子達の依存が酷いからその依存性の高い皇子に悪魔の囁きが出来ない様に、
妃達が思考汚染されない様にする為に守られるのだ。
帝国の政治は現在とても安定している様に見える。
それは皇帝を中心に強固な権力体制が維持されていているからで。
その次代を担う皇太子夫妻もまた優秀にこの帝国を動かしている。
皇太子は優秀だから色々な誘惑に惑わされる事はない。
けれど、その心の支えとなる王太子妃はそうじゃない。
害悪に晒されれば直ぐに汚染され壊れてしまう。
そして汚染され穢れた妃はいとも簡単に皇太子を破滅に誘い、
帝国を地獄へと誘うでしょう。
側室なんて作れない。
そんな人を作ってしまって皇太子の依存する正妃が、
側室に影響されて狂ってしまったら目も当てられない。
そうさせないためにも帝室の妃の管理は厳重に守らなければいけない。
夕食を共にしたとしても絶対に気付かれない。
完璧な皇太子夫妻を見るだけだったと思う。
けれど私は知らなくてはいけなかった。
巨大帝国の抱える問題を。
妃が唯一対等に交流を持つ事を許されるのは、
同じ皇子達を夫に持つ者だけ。
なのだから。
けれどその交流だって相当制限されるはずだ。
この空間を見ればそう見えても仕方がない。
皇子達はそのまま会話を続けるのだがその間、皇太子妃と第2皇子妃が、
言葉を発する事は一切なくただただ膝の上で大人しくし続けているだけ。
第3皇子が私を連れて来たから、安心した皇子達は頭を押さえつける手は、
放したけれどそれても皇子達は自分の妃を自由にしたりしない。
しっかりと膝の上に置いたまま腰を押さえつけて、
頭を押さえていた腕は背中に移動しただけ。
けれどそれだけでも自由になった妃達は。
私の方に態勢を変えてにこりと微笑みかけてくる。
けど、彼女達に許されるのはそこまで。
何かを喋りたそうにしている事は解るのだけれど皇子達の会話に入る事は、
許されない。
第3皇子は私の手を引き開いている椅子へと腰掛ける。
彼もまた私を持ち上げて他の兄弟達と同じ様に膝へと乗せて他の妃と、
私の体勢が同じになるように抱えるのだった。
ふわりと持ち上げる体は皇子の両手にしっかりと支えられて、
決して膝から降りられない。
その姿を見た第2皇子妃が私に対して微笑みかけながら小さくパチパチと、
手を鳴らして祝福してくれた。
それは声にならない誘いの合図だったのかもしれない。
―私達と同じ立場にようこそ―
共感するようにまた皇太子妃も拍手してくれる。
―貴方も頑張ってね―
そう言われている気がしてならなかった。
私達は皇子達が国政や経済の話をしているのを聞きながら、
けれど決して喋ったりしなかった。
皇子達3人の長い語らいの時間は続いてく。
それで国政が決められて、
明日からの立法や経済対策の大枠を決めていくのを聞いていると、
ああここはやっぱり帝国なのねと思わずにはいられなかった。
今日の3人の語らいはなかなか終わらなかった。
止める者がいないのと同時に私が妃となった事によって、
バランスが取れてしまった兄弟の会議はいつも以上に進んでいたと、
付き添いの侍女に後で教えられる事になる。
私は帝国の生末を決定する重要な会議をただ見つめ続けるだけだった。
次回の更新は明日の20時です。
完結まで毎日更新します。




