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8話目



 朝の散歩の付き添いは、僕の具合が悪くない限り、担当は僕だ。朝は義兄さんが支度で忙しいので、毎日付き添いをしている。

 さすがに今のまおの体格では、とっさの判断でケルベロスのリードをひっぱることはできないので、リード係を担当している。まおの担当はケルベロスのうんこ回収バックを持つ係だ。お世話係はまおが一任されているので、もちろん排泄物回収係はまおだ。

 ケルベロスはうんちをするたびに、自分の排泄物を唯一無二の主に回収させることを申し訳なさそうにしている。


「ケルベロス、郷に入ったら郷に入っては郷に従えっていうだろ。この世界では、テイマーした生物の排泄物処理は、主の責任なんだよ」

「うわぁん」


 理解しているが、魔王様に排せつ物の処理をさせるのは……というかのように、毎回鳴いている。これに慣れるのは、魔王様のペットであった記憶がある限り無理かと思いつつも、ケルベロスの主はあくまでもまおなので、ケルベロスには我慢してもらおう。本人は、前世のペットであったケルベロスの排泄物の処理をすることに抵抗はないみたいだし。


「けるべろす、きにするな。これをすることでおまえとまたすごせるのなら、やすいものだ。……それに、けるべろすの主はまおだ。かいぬしのせきにんをはたすぎむがはっせいする、それをはたすのはあたりまえのことだ」

「くぅぅん!」

 魔王様! 私も一緒に居られて幸せです、とケルベロスがいっているような気がする……。感情表現がわかりやすい子だなぁ。

しかし、この流れ、まおがケルベロスの排泄物の処理をするたびにするのかな。散歩するたびに一回はしているような気がするんだけど。


「前から思っていたんだけど、この世界のケルベロスも感情表現が豊かではあるんだけど、この子はさらに、伝えたいことが伝わってくるよね。なんか、こういっているような気がする……って感じるんだよ、不思議だよね」

「それについてはなそうとおもっていたのだ。このけるべろすはどうやら、のらのときに、まおのまりょくをせっしゅしてしまったようなのだ。……しかも、にどだ。そのけっか、えられたのうりょくのひとつが、にんげんがわに『なんとなく、けるべろすがこうつたえているようなきがする……』という、のうりょくなのだ」


「ケルベロスは、まおの魔力を吸収してたの?!」

 しかも二回も?!

「そうなのだ。そのけっか、けるべろすがえられたのうりょくが、さきほどいったのうりょくとけるべろすのきおくだ。まあ、そのおかげで、まりょくからあたえられたけるべろすのきおくとはいえ、けるべろすとまたであえたのだが」

 ケルベロスが家族になったし、それに回収しなければいけない魔力も回収できた。……これが二度おいしいってやつだなと、にこぉと笑う。きょうもまおはかわいい。


「どうして、わざわざケルベロスの記憶を与えられたの?」

 まあ、大した理由がなくても、まおがハッピーそうだから良いんだけど。


「いちどめはじゅんすいにからだのきょうかにつかわれた。まおのまりょくをいちどきゅうしゅうしたくらいじゃ、このせかいのせいたいけいにえいきょうはないんだ。しんたいきょうかを、ちょうきてきにつかえるりょうではないからな。しかし、けるべろすはにど、まりょくをきゅうしゅうしてしまった。そうなると、はなしはべつになる。

にど、きゅうしゅうすれば、しんたいきょうかをちょうきてきにおこなえるたいないかんきょうがととのってしまうのだ。それをまおのまりょくが、ききかんをおぼえたらしい。しかも、それがげんじつとなってしまった。このけるべろすのちからは、まりょくがないせかいでは、あまりにもつよすぎる。てかげんをてっとりばやくまなばせるため、そしてにんげんをおそわないりせいとして、けるべろすのきおくがあたえられたのだ」


「結局、人間側に『なんとなく、ケルベロスがこう伝えているような気がする……』という能力は、魔力が与えた能力なの? それとも……」

「けつろんからいうと、それは、けるべろすののうりょくだ。なんとなくけるべろすのいいたいことがつたわるようになったのは、りせいをおさえるためにきおくをあたえた、ぐうぜんのさんぶつだ。けるべろすがもっていたねんわが、きおくをうけついだことで、もっていたねんわののうりょくがかんそばんになって、うけついだのだ。かんそばんになったのは、ぜんせではくうきちゅうにあったまりょくをきゅうしゅうして、ねんわをしていたが、このせかいにあわせてしんかしたからだ。げんざいはきゅうしゅうしたまおのまりょくからねんわをするかたちにしんかしたため、すこしでもしょうひするまりょくりょうをへらすために、このようなことをいっているきがする……とかんじさせるかたちになったのだ」


「まおの魔力は、この世界を魔力のある世界にしようとしているわけじゃないんだ?」

「うむ、このせかいをくうきちゅうにまりょくであふれさせるのはふかのうだ。あまりにも、このせかいはまりょくてきせいがなさすぎるがゆえ、どうやらまりょくがまったくないこのせかいで、えいきゅうてきにそんざいしつづけることにおもきをおいているようなのだ。それは、けるべろすのじょうたいをみてそうかんじた。

えいきゅうてきに、まおのまりょくをそんざいさせるためにおこなったのが、にどいじょうまりょくをきゅうしゅうしたそんざいにたいして、まりょくのうつわのさくせいと、まりょくのじゅんかんするきかんをゆうせんてきにつくること。そうすることで、つねにまりょくをしょうひし、まりょくをじゅんかんしつづけることで、まりょくりょうをふやし、まりょくをもつそんざいをつくれることがじゅうようなようだ」


 まおの魔力には意思があるのか……? ここまで、この世界に適応しようとするなら、回収しなければいけないかもしれないな。


「思ったより、まおの魔力の適応力は高そうだね。これは、早く回収しないといけないんじゃないの?」

「だいじょうぶなのだ。まりょくのてきおうのうりょくがぜろにひとしく、まりょくのそんざいを、このせかいでいじしつづけるため、ひっしにまりょくのやどぬしはみつけるが、まりょくのはってんにちからをいれていない。それはまりょくのてきおうのうりょくが、ないにひとしく、くうきちゅうにまりょくがそんざいできるようになるはってんがみこめないからだ。いま、できるさいだいのかつどうが、いかにまりょくのそんざいをいじするのかだから、むりしてかいしゅうするだんかいではない。

このせかいには、まりょくにたいしょできるにんげんがいないため、にんげんにきけんがおよびそうなばあい、まおがいたせかいのせいぶつのきおくが、ふよされるようになっているようだ。……けるべろすがそのれいだな。

かいしゅうをするのは、あくまでも、せいぶつがはんしょくして、まりょくをもつせいぶつのはんしょくをふせぐことがもくてきだ。ふえすぎては、まおだけではてにおえず、ほかのにんげんにめいわくかけるからな」


「それじゃあ、ゆっくり生産者さんをまわっていくしかないみたいだね。なにもなくても、普段と変わったことがあったら、連絡してもらえるように、生産者さんに伝えておいて」

 そういえば、うむと頷いた。

 この前、ケルベロス(ここでいう、犬のことね)を飼いたいんじゃないかと、義兄さんに相談したときに、生産者さんと繋げてもらえるように頼んであるから、時期に魔力回収活動を開始できるだろうけど……。まお的には、この世界があまりに魔力が存在するのに適してないから、急ぐ必要はないと考えているみたいだけど、回収は必要不可欠とは考えているんだね。


「まあ、あいつらはもともとまおのまりょくだったからな。ともにいきておったから、まおのきおくをもっている。つぎに、けるべろすのようないきものをやどぬしにするとしたら、どのようなものにするかはおおかたそうぞうがつく。

そのそんざいいがいで、にどいじょう、まりょくをあたえられるとしたら、またこのせかいのべつのけるべろすだ。あたまをみっつもち、じがもおなじかずだけもつ、けるべろすのべつのじがをうえつけるか、ぐらいだ。どうぶつはすくなくてのこりいっぴき、おおくてさんびきといったところか。まりょくのやどぬしになったどうぶつは、ゆうせんてきにかいしゅうしていきたい」


「つぎ、やどぬしになりそうなどうぶつって?」


「このまえ、ぺっとしょっぷにいったときにはなしただろう。まおうであったときにかっていたネコマタだ。つぎのまりょくのやどぬしにえらばれるのは、このせかいのネコマタだろうとかんがえている」

 ああ、一応間違っていたらいけないから聞いてみたけど、そうだったか。動物になると、まおの魔力だったからか、人間に危険が及ばないように、まおに関連のある記憶が植えつけられて理性が働くようにはされているみたいだけど、それでもこの世界への影響力は高く、回収する優先度は高いと考えているんだな。

 それなら、僕ができることはまおが入れるこの街の保護猫カフェを探して、行くこと。それでも見つからなかったら、この街の保護猫団体を探すことだな。ケルベロスを家族にした経験上、記憶を植え付けられてまお以外を主を受け付けなくなっているみたいだから、すぐに該当の子は見つかるし、保護団体の人も手に余っていてトライアルに繋げやすいと思う。

 別の飼い主さんに見つかる前に、こちらで保護しないといけないな……、とこれからの回収活動の計画を立てながら、帰路に就くのであった。




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