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修行終了

ゆっくりで少量ですが、少しずつ進めて行きます。

よろしくお願いいたします。


次のログインも、その次のログインもひたすら野菜を切り続け、ゲーム内の時間で約2週間。まだまだ修行の身なので、ユウシにチャットを送る。


"まだ当分は修行するわ。まさかスキルがやってくれるって一瞬のパッ!じゃなくて、自動早回しだとは思わないし。"


"それな。ある程度自分で調節も出来るし、奥深過ぎて戻ってこれなくなりそうだ。"


"修行が終わったら、一先ず連絡する。"


"どっちが早く一人前になれるか競争な!"


"それはしない。"


"相変わらず薄情だなー。いつもの事だけど。"


ジョンも俺の後ろで何かをしているらしく、最近、味付けを任された冷菜の調味料がさりげなく取りやすく置いてあったりと環境が良くなっている。


「ショウこれ洗っとけ。」


「はい!」


店が終わって1番はじめにするのが、皿洗い、その次に調理器具の洗浄、さらにコンロの五徳をタワシで焦げ落とし。昼のご飯を貰って食べた後、その皿も洗って包丁を研ぐ。一日中野菜を切っていた包丁は、硬いのも柔らかいのも色々混ざっているからあっという間に切れ味が悪くなる。明日そんなんで営業が始まったら全く働けなくなるから、しっかり研いでおく。


明日も早くから仕込みが始まる。早く寝ないと。










**


ゲーム内時間でさらに2ヶ月ちょっと。俺はいつの間にかディナータイムのメイン料理の手伝いや、ランチタイムのメニューを組ませてもらったりと、こんなにやらせてもらって良いんだろうか?というくらいの作業を任せてもらっていた。昼の営業終わりにペーターさんに呼ばれる。


「ショウ、来い。」


「はい!」


何時もは開ける事のない、壊れた備品を入れている棚の扉を開け、布で包まれた何かを渡された。


「もう良い。店も落ち着いた。」


「え?これ、は?」


「報酬だ。今までそう言えば給金を渡していなかったのを思い出した。それで装備を整えて、夢の騎士候補の仕事をしろ。おそらく、お前達が来た頃に外を走ってた奴らはシーツァを過ぎてデューベイに進んでいる筈だ。この辺りは空いているから、もう問題無いだろう。行け。」


そのまま首根っこを掴まれ、店の外へ。こういう時に魔法スキル持ちは貧弱で困るな。あと種族。飛ぶために身体が軽く出来てるのは仕方のない事なんだが。


「あ、えっと…長い間ありがとうございました!また、また来ます!」


「来るな。邪魔だ。」


「ちゃんと、立派な夢の騎士になって、ご飯を食べてお金を払いに来ます!」


「………それなら来い。」


「はい!」


入り口からポーイ!と遠くに投げられ、そのままシッシッと入り口で手を振られてしまった。大人しくそこを離れて、今後の寝食を確保するため、また役所に向かうことに。包みは一旦アイテムボックスに突っ込む。


「こんにちは。」


「あら!お久しぶりです。あちらで働いているの、私見ましたよ!頑張っているみたいですね。」


「お久しぶりです。実は、もう落ち着いたとかで、さっき追い出されてしまったんです。何処か、安くても居心地のいい宿とかはありませんか?」


「まぁまぁ。それは大変。あそこの大将、言葉が少なくて素直じゃ無いから困っちゃいますね。この前の地図ってまだお持ちですか?」


「はい。あります。」


この前地図を描いてくれた職員さんがちょうどいて対応してくれる。真面目に働いていたからか、好意的な目で見てくれている様だ。アイテムボックスから地図を取り出して渡すと、それに書き加える様にして宿を増やしてくれた。


「この辺りですね。もし、もう1人の方もいらっしゃるなら、同じ部屋に泊まる予定だと伝えてくだされば、2人部屋にしてくれると思いますよ。」


「ありがとうございます。もしかしたらまた来るかもしれないので、よろしくお願いします。」


「はい、その時はまたご対応させていただきますね。」


役所から出て、まずは宿に向かって部屋を取る。通されたツインの部屋は鍵もかかる様になっていて、ベッドもちゃんと整えられている思っていたよりもちゃんとした宿だった。また、ここの女将さんも俺のことを知ってるみたいで、結構好意的な反応。下町の情報網怖いな。


"修行終わった。今お前の店から3本北の通りにある赤い屋根の宿屋にいる。"


"お前もか。俺も今さっき放り出された所だ。向かう。"


しばらくするとまた連絡が。近くに来たらしく、部屋番号を教えるとそのまま入ってきた。ユウシの身体がなんだか修行前より少し逞しくなっている気がする。


「お前、もしかして筋力アップしたか?」


「おう。鍛治のレベル上げたら上がった。確かに、レベルが上がるにつれて筋力が必要なレシピもあったしな。」


「これだから動物種族は…鳥類の筋力の上がらなさに泣いた……」


「仕方ねーだろ。飛べるっていうアドバンテージがあるんだからさ。しかも体格見てると魔法スキル持ちだろ?まだ聞いてないけど。」


「そうだった。これから戦闘方面のレベリングするんだし、ある程度は戦闘方法も知らなきゃならんな。」


そして、互いに戦闘スキルを話したところでユウシにかなり驚かれた。どうやら、俺はあまり取得してる人がいないスキル持ちらしい。


「この闇魔法、取得方法がどこかに絶対あるはずなのに、世界でまだ2人くらいしか使えないスキルだ。降霊術に至っては、あるだろうくらいしか言われてないやつ。ネットで大騒ぎなんだけど、お前、どんな方法でこれ取ったんだ?」


「知らないし。このゲームの初期スキルの取得方法くらいお前も分かってるだろ。勝手に決まっただけだ。」


「そうだよなぁ……これで、お前が世界で3人目の闇魔法使いだな。いや、このスキルなら世界初の死霊術師だな。攻略サイトに載っけていいか?」


「別に良いが、俺に粘着する奴とか出たらゲーム止めるからな。アカウントも消す。」


「わかってる分かってる。前の奴、結局他の人にも粘着して、運営に通報されて垢BANらしいぜ。」


大分前に一度だけ、ユウシとこういうオンラインのゲームをした時に、ちょい珍しいスキルを覚えたってだけで粘着されて、戦闘可能フィールドに行った瞬間に自爆特攻巻き込みとか、買い物しようとして向かったら横入りされて物を買い占められたりとかを4ヶ月程された。流石にその時はキレて、数々のスクショと共に運営に報告。さらに攻略サイトにも詳細を投稿してから辞めた。最高レアリティが5のうちの4のスキルだし、取得方法もそんなに難しく無い類の、頑張れば取れそうなスキルだった。頗る面倒になって、それからはオンライン系からは少し離れていたんだよな。


「ふーん。んで、お前のは物干し竿だろ?」


「槍だよ!そりゃあ、昔から物干し竿で練習とかしてたけどさ。」


「遠目の近接なー……まぁいいや。一先ず、ペーターさんに押し付けられたこれを見よう。」


ジョンと被るな。とか思いながらアイテムボックスから包みを取り出して開くと、数種類の調味料と一振の包丁が。三徳包丁だけど、持ち手の近くが厚くて、捌きにも使えそうな感じだ。


「変な形の三徳包丁だな?」


「あ、それ、俺が師匠に言われて作ったやつ。」


「えっ!?コレをお前が作ったのか!?」


「そんなに驚く事ねぇだろ。俺が行ってたの鍛治屋なんだからさ。簡単に言うと最終試験ってところだ。何でも切れる包丁が欲しいって言われたらしくってさ、めちゃくちゃ悩んだわ。骨とかも切るって聞いたし。考えたらこうなった。ちゃんと鞘も特製のだから大事にしてやってくれ。メンテナンスは俺が出来るからさ。仕舞う時は油を塗ってからしまってくれよ。」


なんと、この包丁はユウシが作ったものらしい。それにしても、ペーターさんも難しい物を注文したな。なんでも切れるって言われるのは大変難しい。○○を切るって言われれば、それに合わせた形にするけどそれは出来ないし、何かが切れなければ怒られる。それをなんとか叶えようとしたユウシに感謝だな。


「ん。分かった。砥石は自分のを使って良いのか?」


「良いぞ。どうせなら、油とこの袋に入れとけ。手入れセットって名前になって、アイテムボックスの枠が1つになる。」


「サンキュ。」


袋もありがたくいただき、ボックスの中へ。それから、包みに使っていた布を取り上げると、調味料のビンの隙間からジャラジャラと金貨と銀貨がこぼれ落ちてきた。慌てて拾い集めて数えると、金貨が3枚に銀貨が15枚。こんなにお給料をもらって良いのだろうか?


「住み込みなのにこんなにお給料をもらって良いのか?」


「良いんだろ。ありがたく貰っとけ。俺は修理用の金属とかももらったから、もう少し少ないけどな。月に銀貨15枚分の働きって事だろ。」


「……それもそうか。俺はこれから、服装も武器の杖も揃えないといけないけど、ユウシは?」


「俺は…うーん……武器は作らせて貰ったし、盾と軽鎧もな……下に着る服と戦闘以外で着る服かな。」


「そうか。なら、まずは俺の杖を探しに行って、その後服をじっくり選ぶかな。有難い事に、役所の人が魔法系の物を揃えられる店も描いてくれたし。」


「ついて行って良いか?どんなところなのかちょっと気になる。」


「良いぞ。」


ジョンにも付いてくる用に目で伝えると、軽く頷いて俺のベッドの側からこちらの背後に移動してきた。いつのまにそんな所に。


『主人のベッドの寝心地を確認するのも私の役目ですから。』


そんな事までするのか?知らなかった。





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