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4話 子供同士の交流


「誰、その子……?」


 勇者ファルがお隣さんの子共マースを連れて家に戻ると、魔王の娘ナミカが仁王立ちで出迎えた。




「こら、ナミカ。人を指ささない。この子は……」


「誰じゃねえ。俺はマースだ!」

「名前は聞いてない」


「お隣の家の子で今日預かることになって……」


「じゃあ俺も名前を聞かない!」

「どうでもいい。私も言うつもりない」


「えっと、だから……」


「なんてな、ナミカだろ」

「っ!? 何で……」


「その……仲良くな?」


「へへん、そっちのおじさんがさっき言ってただろ」

「もうお父さん! 勝手に私の名前を言わないで!」


 紹介している間におじさん呼ばわりされるわ、ナミカからは理不尽に怒られるわで集中砲火なファル。




「あー仲良さそうなら良かった」


「「仲なんて良くない(もん)!」」


「ははっ、今日一日よろしくやってくれ。……って、いたっ、やめろ、そこは引っ張るな」


 息ピッタリな二人にこれなら心配いらないかと鷹揚に笑うファルの様子に、むくれたナミカとマースは突っかかるのだった。






 それからしばらくして。


「はい、タッチ! おまえ鬼な!」


「はあ? 何よいきなり」


「びびってんの? 鬼さんこちら、手の鳴る方へ」


「……ふん、やってやろうじゃない」


 マース君とナミカは二人一緒に遊んでいる。




「………………」


 成り行きだったけど、同年代の子供と一緒に遊べて良い機会になったな。




 ナミカは日曜学校に通っていないため、同年代の子供と遊ぶ機会がこれまで無かった。

 ファルが一日中家にいるため預ける必要が無いとは言えるが、日曜学校には人との関わりを学べるという側面もある。


 そのため通わせるつもりだったのだが、ここでナミカが魔王の娘であることが響いた。


 もしバレたときの問題性やらセキュリティの観点で登校は認められないと王国の政務部からストップがかかったのだ。

 ナミカに不自由はさせたくないとファルは食い下がったが、あちらの決定も固く覆らなかったため交換条件を提示してこの件は従うことにした。

 たまに近所の公園を散歩して同年代の子供たちが遊んでいる姿を見かけることもあったが既に出来上がっている輪に入るのは難しく、ナミカの遊び相手はこれまでファルだけであった。


 それが今はどうだ。


「タッチ、あんたが鬼ね」


「はあ!? そんなショートカット、ズルだ、ズル!!」


「私の家だもん。地の……る? れ? を活かして当然でしょ」




「ナミカ楽しそうだな……父ちゃん嬉しいぞ」


 活発的なマース君に振り回されている形だが、引っ込み思案な気質のナミカにはちょうどいいだろう。






「おらっ、ダイビングタッチ!!」


「バレバレね」


「あっ……」




「っと、『ウィンド』」


 マース君が頭からナミカに突っ込むがひょいと避けられて地面に激突しそうになったところを風魔法で受け止める。

 元から何かあったときはこうするつもりで見守っていた。




「……あれ? 浮いてる?」


「遊びに夢中なのはいいけど今のは危険だから無しな、マース君」


「え、おじさんの魔法!? すげー!!」


 風を操り着地させると目を輝かせるマース君だが、今のは初歩級の魔法だ。元勇者である俺にとっては朝飯前の芸当である。




「さあて二人とも走り回ってお腹空いたんじゃないか? そろそろおやつの時間だぞ」


「そんな時間か」


「おやつあるの!! おじ……お兄さん!!」


「ははっ、現金なやつだな。持ってくるから良い子にして待っておけよ」


 そのようにして穏やかな時間は過ぎていくのだった。

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