1話 魔王討伐
人類は滅亡の危機に瀕していた。
原因となるは魔王をトップとした魔王軍。数年前突如として発生した天災のようなその存在は、各地で暴虐と破壊の限りを尽くしていた。
西の国は農地を荒らされ飢餓に苦しみ崩壊。
東の国は姿を化ける魔法により同士討ちを誘発され崩壊。
南の国は単純に数を以て蹂躙された。
この危機に残った人類は一致団結、王国が中心となり勇者パーティーを旗頭とした反抗作戦が決行される。
勇者パーティーは快進撃を続け敵の根城である魔王城にまで辿り着いた。
城内部の敵も蹴散らし、残すは親玉の魔王だけ。
しかし、魔王の間へと続く扉には結界が張られていた。
「どうやら勇者しか通さない……そんな結界みたいだな。よし! 後は俺に任せておけ!」
そのため勇者は単身、魔王の間へと進む。
「くそっ……!」
女戦士は最後に何も出来ないことに苛立ち。
「ま、あいつなら大丈夫だろうよ」
賢者はあっけらかんとしているものの、その握りこぶしには力が入っており。
「女神よ……勇者様にご加護を」
聖女はただただ祈りを捧げる。
魔王と勇者の最終決戦、激しい戦いとなっているだろうが結界のせいで中の音は一切聞こえない。
魔王の間の重厚な扉の前で待ち続ける三人。
永遠のようにも一瞬のようにも感じられる時を経て、突然結界は解除された。
「「「っ……!」」」
扉が開いていく。中から現れるは戦いの勝者だろう。その姿は――。
「勇者様!!」
見慣れた勇者のものだった。
「勝ったんだな!!」
三人は駆け寄っていく。
「ったく、もうちょっと早く出て来いっての」
激しい戦いだったのだろう、ボロボロになった様子の勇者。
「すまん。だがちゃんと人類の宿敵、魔王は倒したぞ」
これから人類を救った英雄として語り継がれるだろうその男の腕には――。
「すぅ……すぅ……」
すやすや眠る赤ん坊が抱かれていた。
「「「………………」」」
近づいたことでその赤ん坊を認識した三人は一瞬思考が停止する。
魔王との最終決戦、人類の滅亡を決めるその戦いを終えたはずなのに、戦いと無縁そうな存在、赤ん坊を抱えて出てきたとなれば認識がバグっても仕方ない。
「ええと……勇者様? その腕に抱かれているのは……?」
「赤ん坊だな」
「いや、んなの見れば分かるっての!」
「あれか、魔王に攫われていた子供がいたとかそういう……」
「いや、正真正銘、魔王の実の娘だ」
「ま、魔王の娘ですか!?」
「ああ。そしてこのまま育ち『魔王の因子』が覚醒してしまえば次期魔王となってしまう」
「はぁっ!?」
「だからそうさせないためにも……俺がこの魔王の娘を育てようと思う」
「な、何言ってんだよ!?」
「きちんと育てて、青春を送らせて……この娘を普通の真人間に育ててみせる……!」
混乱する三人の前で勇者は宣言した。