第18話 今年のロボバトは最高ですね
そして決勝戦当日。
会場自体は同じものの、照明や機材、
セット関係が遥かにグレードアップしており
ゴールデンタイム生中継という物を実感させられる。
「うわー。これは凄いね」
「この大舞台でねいねちゃんは戦うんだ……」
「私もこんなのは初めてで少し緊張するわ」
いつもの様に設営中の会場を見て回る二人。
会場設営中の雰囲気を味わう事により
少しずつモチベーションを高める事が大事だと
知奈は他の人よりも外に出る事を好んでいる。
会場を見渡しながらゆっくり歩いていると、
ロボの待機場から例のメイド集団が現れた。
「あっ」
「やっぱりあの人たち目立つねw」
「ごきげんよう天使さん」
フィフネルガールズの先頭を歩く
伊集院まりぃはねいねに声をかける。
「まりぃさん、やっほー!」
知奈はこの前の事もありフランクに挨拶を返す。
「噂は聞いてたけど、元気そうで良かったわ。
ま、私のライバルだから心配はしてなかったけどね」
それを聞いて知奈とみぅはお互いの
顔を見てクスっと笑った。
まりぃは今でこそ余裕の顔をしているが、
ねいねが店でドタバタして早退した事を知った時、
血相を変えて店に飛び込んで来て同好会メンバーと
言い争いをした挙句「私、どうしたら良いの……?」と
真剣に悩んでいた事を二人は知っている。
それでも住所を調べて凸したり連絡をしてこなかったのは
彼女なりの信頼の現れかもしれない。
その話をみぅから聞かされた時、
まりぃの優しさを感じられて
知奈はとても嬉しかったのだ。
「ありかどうございます。まりぃさんも
3位決定戦頑張ってくださいね」
「あら。私があんなガラクタに苦戦するとでも?」
「い、いえ、でも相手は結構厄介で……」
「それは他のチームの戦い方がなってないからです!」
完全に言い切るまりぃ。
「まぁ、見てなさい。秒殺は無理ですが
圧倒的な戦いを見せてさしあげますわ」
笑顔も見せず淡々と話すまりぃを見て
脳内で完全にシミュレーション出来ているのだと
知奈はパラスアテナの勝利を確信した。
「そんな事より天使さんの方はどうなの?
あの化け物に勝つ秘策とか見つけられた?」
「え、えーと……はははっ」
思わず言葉を濁す知奈。
「……まぁ、そうでしょうね。
私もシミュレーションしてみたけど
残念ながら突破口は見つからなかった」
「やっぱりそうなんですか……」
このまりぃさんの頭脳を持ってしても
勝機が見えないならもう駄目じゃない
「でもね」
「?」
「私は知っています。不可能を可能に変える
パイロットが中に入っているという事を。
そして追放天使はそのパイロットに答えてくれる
凄いロボだという事を」
「まりぃさん……」
「私のライバルは伊達じゃないんです!
ですから、精一杯戦いなさい。そうしたら
きっと光が見えてくる筈です」
「はいっ!」
二人は笑顔で固い握手を交わした。
…
……
………
そしてついにテレビ特番が始まり、
会場は大会最終日に相応しい賑やかな雰囲気に包まれる。
今までの試合のダイジェスト映像が流れている横で
三位決定戦で戦う「DAN-GAN ZZ」と「パラスアテナ」
そして決勝戦で戦う「追放天使」と「カイエン」の
4機が待機場で並ばされていた。
カラーリングを白金色と金色に一新させた
従来ロボの通常進化版ともいえるパラスアテナ、
ロボというより作業車の風貌を持つ
重機型ロボのDAN-GAN ZZ
既存ロボとは一線を画す完全な人型
次世代型最強ロボのカイエン
そして最先端の技術を駆使して
ロボバトの常識を根底から覆した追放天使
ここまで個性が分かれた4機が上位というのは
今までのロボバトでは考えられない。
追放天使の横で並んでいるロボットアニメ同好会は
昨今の重機バトルとは違うこの光景に満足していた。
様々な可能性を秘めた個性的なロボ達の戦い。
そう、我々はこれが見たかったのだと。
……
しかし、同好会メンバーの中で一人、
別の楽しみ方をしている者がいた。内海だ。
内海はこの光景を見ながら、
同時に遠くない未来に思いを巡らせる。
最初は半分趣味で始まったロボットバトルが
着実に進化して機械や重機業界も参加する
規模にまで到達した。
そして、今回のロボバトで確実に”一線”を超え、
次の、いや一気に最終段階まで進む事だろう。
「ふふふ」
内海は今までとは違う表情を見せる。
― そう。この技術は確実に軍事技術に転用される ―
そもそも、今回追放天使プロジェクトに参加した
企業達が硬化テクタイトや最先端技術を惜しげもなく
投入した理由はそこにあった。
稼働時間や稼働環境こそまだ限られているが、
それもこれから改善させ、追放天使の血を引いた
ロボが遠くない未来にパワードスーツとして
戦場を駆ける事になるだろう。
その為の実戦テストとプレゼンとして
ロボバトは絶好の舞台だったのだ。
「それに、そう考えていたのはどうやら
僕達だけではなかったようですしねw」
内海は隣で立つカイエンとホソダチームを
横目で見ながら楽しそうに呟いた。
この大会が終わった後、
状況は大きく変わるであろう。
「会長?」
「ん?どうした内海」
「今年のロボバトは最高ですね」
「ふふん。そりゃあ我々が台風の目となって
大会をかき回したからな。うわははは!」
「そうですね。本当にこれからの…」
― これからの巨大ロボット業界が
どうなっていくか僕は楽しみで仕方がないです ―
…
……
………
「ねいねちゃん、ついに決勝戦だねー」
「そうね。長いようであっという間だったな」
ねいねはお店に突然現れてロボ企画書を
見せてきた戸坂会長の事や今までの事を思い出す。
「今まで色々あったし、今日なんて……」
そう言いながら時計を見て
そろそろ八月朔日の配信が始まる事を知り、
ねいねは曇った表情を見せる。
「ねいねちゃん……」
その時、ダイジェスト映像も終わったらしく
司会から威勢の良い声が聞こえてくる。
「あっ。そろそろ幕が上がるね」
「うんっ!頑張ってね!」
― そうだ。私は胸を張らないといけない ―
「ありがとう、みぅ」
― 私に元気をくれたみぅやまりぃさん、
同好会のみんな、応援してくれるみんな ―
― そして、私を推してくれるほづみ君の為に ―
「勝敗は関係無い。私は全力を出し切って
笑ってこの大会を終わらせるんだから!」
司会の声に合わせて目の前にある
超巨大な幕がゆっくりと開いてゆく。
ロボバト最終日はこうして始まった。
【次回予告】
【12月19日更新!】
次回 推しVロボ第19話
まいったな。ここまでされたら……
お楽しみに!




