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わんにゃんシリーズ

ネコマタさんに相談したい!

作者: 夕日色の鳥

以前に投稿した『猫』と『空と散歩と犬』を読んでから読むと、さらに理解が深まります。



 他の猫よりちょっと長生きの猫。

 ちょっと物知りで、いろんな生き物から相談を受ける猫。

 長い長い年月の中、いろんな所を転々として、他の猫よりちょっとだけしっぽの数が多い猫。


 今日もまた、そんなネコマタさんに相談しに来た猫さんが1人……





「ネコマタさんネコマタさん」


「おや?

3丁目のマンションの子猫ちゃんじゃないか。

どうしたんだい?」


 まだまだ小さい子猫が1人でネコマタさんの元を訪ねてきました。


「えっとね。

僕のご主人様がまた泣いてたんだ。

僕ね僕ね。

ご主人様のことが大好きなの!

僕のことを助けてくれて。

ご飯くれて。

遊んでくれて。

だから、ご主人様が泣いてると、僕も悲しいの……

だから、なんとかしたくて、外は怖かったけど、勇気を出して出てきたの」


 そう言うと、子猫は悲しそうに俯いてしまいました。

 ネコマタさんは少しだけ考えると、そうだね、と言葉を紡ぎます。


「君は、ご飯が食べられないと悲しいかい?」


「うん。悲しい」


「君は、遊んでもらえないと悲しいかい?」


「うん。悲しい」


「君は、ご主人様が泣いているのが悲しいんだね?」


「うん!」


「君が悲しいなって時、ご主人様にはどうしてほしい?」


「うーんと、うーんと、そばにいて、ぎゅってしてほしい!

なでなでしてほしい!」


 その答えを聞いて、ネコマタさんはうんと頷きます。


「それなら、君もそうしてあげればいい。

君のご主人様が悲しい顔をしていたら、そばにいてあげればいい。

ぎゅってするのは難しいだろうから、そばで、思いっきり甘えてあげればいい。

きっと、それで元気を分けてあげられるよ」


「そっかー。

わかった!

ありがとー!」


 ネコマタさんにお礼を言うと、子猫は嬉しそうに帰っていきました。









 また別の日。


「おや、珍しい。

わんちゃんのお客さんだね」


 ネコマタさんの元に、一匹の犬がやってきました。

 飼い主の若い女の子はネコマタさんにじゃれようとする犬を落ち着かせています。


「ネコマタさん!

ネコマタさん!

相談にのってくれるの?」


 その犬はどこからか噂を聞き付けてやって来たようです。


「なんだい?

何か悩みがあるのかい?」


 ネコマタさんは自分よりも大きい犬にもまったく驚くことなく穏やかに話します。


「うん!

えっとね!

じいちゃと会えなくなっちゃったの!

じいちゃが大好きだったから寂しいんだ!」


「……そうなのかい」


 ネコマタさんが目を凝らすと、飼い主の女の子の後ろに、うっすらとおじいさんがいるのが分かりました。


「ああ、そういうことかい。

その子の守護霊になったんだね」


「なーにー?」


「なんでもないよ」


 ネコマタさんは優しく微笑むと、首をかしげる犬に穏やかに話します。


「おじいさんは遠い遠い場所に旅立っちゃったんだ。

君は、当分会えないんだよ」


「えー!

なんでー!」


「こればっかりは、どうしようもないんだよ」


「むー。

じいちゃ。僕たちのこと嫌いになっちゃったのかな」


 犬は寂しそうでした。


「そんなことないよ。

君が大人になって、おじいさんになって、虹の橋を渡ると、きっともう一度、大好きなおじいさんに会えるよ」


「ほんと!?」


「ああ、ほんとだとも」


「虹の橋ってなぁに?」


 犬は首をかしげます。


「それは、渡る時に分かるよ。

その時までは、その子たちと楽しく過ごしな。

その子のことも大好きなんだろう?」


 ネコマタさんがそう言って女の子を見やると、


「うん!

ねえちゃもママさんもパパさんも大好き!!」


 犬は嬉しそうにしっぽを振って返事しました。


「そうかい。

もう元気出たかい?」


「うん!

じいちゃにはまた会えるし、前より散歩にも行けるようになったから楽しい!」


「そうかい。

良かったね」



 その後、その犬がたびたび家族と散歩している姿を見かけて、ネコマタさんは嬉しい気持ちになりました。

 もちろん、女の子の後ろには優しい顔をしたおじいさんも一緒です。








「ネコマタさんネコマタさん!」


「おや?

この前の子猫ちゃんじゃないか」


 またしばらくすると、前に相談に来た子猫が嬉しそうに姿を見せました。


「その顔だと、うまくいったみたいだね」


「うん!

泣いてるご主人様に寄り添ってすりすりしたら、ご主人様はまだ泣いてたけど、笑って、ぎゅってしてくれた!

で、寝て起きたら、いつもの笑ってるご主人様に戻ってたの!」


 子猫は嬉しそうに話しました。


「そうかい。

それは良かったねえ」


 ネコマタさんも、まるで自分のことのように嬉しくなりました。


「うん!

それでね!

ネコマタさんにお礼したくて来たの!

えっとね、ありがとーございましたー」


 子猫はぺこりんと、その小さな頭を下げました。


「ふふ。

いいんだよ。

ご主人様と仲良くね」


「うん!」


 子猫は楽しそうに帰っていきました。






「ふう。

今日もいろいろ話を聞いたね」


「ネコマタさーん!

帰るよー!」


「ああ、ミコトちゃん」


 小さな女の子がネコマタさんに手を振って近付いてきます。


「またネコちゃんのお話聞いてたの?」


「そうだよ。

あ、今日はワンちゃんも来たね」


「へー!どんな相談事だったのー?」


「それはね……」


 女の子は楽しそうにネコマタさんと話します。

 ネコマタさんが話せることは女の子だけの秘密です。



 そして、ネコマタさんはこちらを見て言うのです。



「だから、みんなも内緒にしといてくれよ」




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― 新着の感想 ―
[良い点] 猫ちゃんも犬くんも可愛くて癒されます。 犬くんはちょっと大人になったのでしょうか、あの語尾可愛くて好きだったのでちょっぴり残念でし。 おじいちゃん、守護霊になって戻って来てくれたんですね…
[一言] 2つの作品を一つにしているのが面白いと思いました! めっちゃいい話ですね。ブックマークに入れます。
[良い点] こんにちわ、間咲正樹さんのご紹介でお邪魔いたしました。 子猫ちゃんにそんなことされたら元気になっちゃいます! 素直な犬さんもかわいらしいです。 ネコマタさんが最後、ふいにこっちを向いた時に…
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