1. 前世の記憶と決意
ぜひ読んでみて下さい!!
ドアをノックする音。
「お嬢様、失礼します。」
「えぇ…。」
侍女が部屋に入る。
テキパキと洋服を選び、カーテンを開けた。
「一度下がってくれる?」
「かしこまりました。」
そして、そそくさと部屋から出て行った。
..
アレからもう一週間か…。
「私って…悪役令嬢の…ティナレーナ?」
鏡の前で呟く。
気づいたきっかけは、高熱で倒れた時。
私には、前世の’西園寺雅’の記憶があった。
前世の私は、お金持ちで、有名企業の社長の娘。
お嬢様学校に通ってたし、学年一位を誇る成績だった。
でも、私の人生が崩れ始めたのは…祖父が亡くなってからだ。
あまりにショックで父が急病にかかり、母はその看病を休む暇なくしていた。
結果––、父は亡くなり、母はその後を追うように忙しなくあの世へと旅立った。
会社は叔父に乗っ取られ、生活費だけ定期定期的に送ることを条件に、追い出された。
それから一人暮らしを始めた。
料理もろくにできなかった私の心の支えとなったのは、乙女ゲーム『貴方に花を捧ぐ』。
ヒロイン・アリシアと、攻略対象の第一王子のルーカスが数々の試練を乗り越えながら、結ばれ
るという、攻略系ゲーム。
ただ、ヒロインがいれば、悪役が存在する。
その名は––、スミス・ティナレーナ。
一見、金髪に紫の瞳と可憐な容姿を持つが…シナリオでは、ヒロインを虐める悪女。
その、ティナレーナに転生してしまったのだ…。
でも、本当にティナレーナって…容姿がいいわね。
鏡の前だと、彼女がどれだけ綺麗だかわかるわ。
それよりも、問題は学園への入学。
現在私は14歳。
今は学園ではなく、
学園への入学は誕生日が来て、15歳になったら。
つまり、誕生日順ってことよね。
誕生日まで後2ヶ月…ヒロインの入学まで後4ヶ月って訳ね。
でも、私は前世もお嬢様。
あまり立場は変わんないわ。
あぁ、私の学校にもいたわね。
ヒロインみたいに元気で、可愛くて…性格も良くて…でも、私はその子を虐めてたわ。
父親には言わなかったのよ。
その子のお父さんの会社は私のお父さんの子会社だったし、出世の影響が出るとでも思ってたかもね。
確か…有紗って名前だった気がするわ。
ここは、ゲームの世界。
つまり、シナリオ通りってこと。
運命には抗えないし、どうせ悪役なのでヒロインを虐めましょ!!
「ふふっ!後4ヶ月で入学ね!まさか、あの乙女ゲーム『貴方に花を捧ぐ』のヒロインになるなんて…!私はゲームの中のルーカスと結ばれるんだわ。悪役令嬢のティナレーナ…かかってきなさいな。ルーカス様が私を守って下さるはずよ。」
1人の少女はクスクスとずっと笑っていたのだった。
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