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小さな神様達が話すことには

 長話になるから、落ち着いて話を聞けるように場所を整えるねと少年がいうと、雲の空間から一歩も動いていないのに、風景が変わり花の咲き乱れる庭園の東屋の中に立っていた。

「便利でしょ。できたばかりの星だから簡単に創造して固定できる」

「お茶とかお菓子もね、まだこの星には存在していないから、この場限りでなら紗良の望む物を出してあげられるのよ。せっかくだから、紗良が食べてみたかったものを言って」


 …なにその至れり尽くせり。こうなったら美味しい物を食べさせてもらおう。

「あなた方の恰好に合うような美味しいお茶とそれに合うお菓子を」

「なら、中国茶とそれに合わせたアフタフーンティーセットにしましょうか」

言いながら少女がおもむろに団扇を前方に差し示すと、その方向にティータイムのセットが出現していた。ほんと、至れり尽くせりだ。


「さぁ、遠慮なくどうぞ」

席に案内され、とりあえずとお茶を一口飲む。…美味しっ!!出されたお茶菓子も花や吉祥模様に模られており見ているだけでも美しいのに、食べるとこれもまた美味であり、話が始まる前に黙々と食べ進めてしまう。


「はぁ…美味しかったぁ」

「良かったよ、紗良も少し落ち着いたかな」

ひとしきり飲み食いすると、小さな神様達から声をかけられる。


「じゃあ、話を始めようか。とりあえず此処は地球とは別の場所というのは紗良もわかっていると思うけど、改めて説明するね。此処はね、地球上で創られた幾重もの物語の世界が核となって、方向性だけが決められた星。紗良のことを星の種を作った一人といったのは、紗良以外にも何人もの地球人が似たような世界観で小説や漫画、映画や音楽といった物を作っていたからね。紗良や彼らの思考の中で、この星を育てて行く上で良さそうなものだけがピックアップされて、今、この場所は作られ始めている。紗良の思考の一部がこの星の創造の一部になっているってことさ」

少年の神様がにんまりしながらいう。

「紗良が書いた小説の中に、夫婦二柱の創造神はいなかったかい?僕らはそこから創られた」


 確かに、私の書いた小説の中には夫婦神が治める中華ファンタジーな短編小説はある。あるけれども

「でも、その小説は途中で書こうにも書けなくなって、完結もせずに小説サイトに残ったままだわ…」

そんな、完結すらしていない物から星を創ってしまっていいのだろうか。


「あら、そんなこと。貴女が吾らの姿を考えたことには変わりはないわ。未完の状態だからこそ、成長するこの星とともに吾らも姿を変えることが出来るようになるのよ。」

「そもそも、この星は完成しなかった物を集めていって、延々と完結しないことが目標なんだ。途中で生き物が生まれて死んだり、国が興って滅亡したりして完結したように思えるかもしれないけど、地球のように連綿と命を繋げていくようにするのが命題。その中で、地球とは違って吾ら神の存在も常に側にあると分かるような星にしていきたいんだよね」


「完結した小説やゲームなどは、出来が良かったり信仰する者が多かったりすれば、地球とは別の惑星圏で劇場型の星なんかとして生まれている場所もあるわ。世界観が作りこまれた小説なんかは、意外と星として簡単に誕生して小説の時代までは細かく調整されるけど、小説のあとの時代は自由にしてくれって感じに放置して、発展するか滅亡するか観察することもあるみたいよ。まぁ、吾らも星の種を創る、吾らよりもさらに上の見えぬ存在から知識だけを教えられているから詳しくはわからぬことも多いが…」


 へぇ…この星以外にも地球の創作物から創られている星って言うのは案外多いのか。そして、此処もそのうちの一つで、未完の創作物から創られていると。

「私の小説の夫婦神から貴方たちが創られたというのなら、名前も同じなのかしら?」

ふと、疑問に思って呟く。完結させられなかったとはいえ、夫婦神は私が珍しくノリノリでキャラクター設定をした二柱なのだ。

「そうだよ。吾らに関しては紗良の創造した部分が多い」

「名前を呼んでくれたら、吾らもこの世界に固定されるから、是非とも名前を呼んでほしいわ」


 私が設定した夫婦神は大人の容姿であったはずだが、目の前の彼らは容貌を設定した物より幼くしただけだと気づく。となると、本当に彼らは私の神様なのだろう、名を…呼んでみる。

「私が夫婦神に名付けたのは金剛と牡丹…本当に?」

「そう、吾は金剛。貴女が創った夫婦神の男神」

「吾は牡丹、紗良が創った夫婦神の女神」


 目の前に座っていた二人が嬉しそうな顔をしながら名乗る。

「金剛も牡丹も、私が設定した容姿よりも幼いのね」

疑問に思ったことを聞くと、肩をすくめて金剛が返事を返してきた。

「まぁ、もう少し大きくなっても良かったんだけどね。それより先に地上を創る方を優先して力を残しているから」

「紗良を呼ぶのにも少し力を使ったし。地上に生き物を誕生させたりするのも最初は力が必要。生き物が生まれて、人類が誕生して、神を信仰するという段階まで導ければ、力も十全になるでしょう」


 なるほど、神の力を蓄えるための器だから力が少なくなれば小さくなると。

「そこは私が設定していないから、別の誰かからの設定?」

「それはわからない。目の前の創造者が作ったことについては答えられるが、それ以外だと答えられないこともある。ただ、吾らの力が全快になったときに、紗良の設定した容姿で止まるはずだ。今の状態はこれから万全になる間の一回限りの状態だ。今後は力が無くなると隠れるしかないな。もし紗良が設定した姿より上になるとすれば、この星を手放すように働きかけられているか、滅びの時くらいよ」

答えられないといいつつ、小さい姿は今だけど教えてくれるので、かなり親切な神様かもしれない。


「で、神様である金剛と牡丹は私に何の用事があるの?」

自分が設定した神様であるという二人に対し、否定されたがこれはやはり夢だなと思いつつ質問をする。夢じゃなければ、私は自分の作った世界に来てしまったと思いこんでいる狂人ではないか。

「…狂人ではないよ。さっきも言ったけれど、此処は夢ではない。確かに眠りについたタイミングで紗良をここに連れてきたから混乱するのかもしれないけれど。」

「それに、紗良には精神異常が起きないように今は保護魔法をかけているわ。貴女は狂ってなんかいない、今はここが現実よ。」


 おぉう、知らぬ間に保護魔法とやらを掛けられていたとは。でも、確かにそうだ。目が覚めたらいきなり知らない建物の中で、変な生き物を見かけて、白い空間に来たと思ったら神に出会うなんて、小説でよく見る異世界転生や転移だったとしても小心者の私にとっては発狂物の体験だ。それを、今、思い返しても、ヤベー、スゲーぐらいの感覚で捉えているのは明らかにおかしいし、感情を上手く抑え込まれているからなのだろう。あまりにも感情がなくなるのも困るが、神と会うという異常事態に対しては正しい対処法なのかもしれない。


「そうだね、保護魔法をかけずにいたら神威にやられていたかもしれないからね。さすがに呼んでおいて廃人にするとかは駄目だと思ったし」

「廃人になられてしまったら、召喚した意味がないわ…」

「で、何の用事かと言うと」

「手伝ってほしいの」


 …手伝う?いったい何を?

「さっきも言ったと思うけど、この星は方向性だけが決められた星。どういう人たちがいて、いつ頃国が成立するのか、魔法があるのか?戦争は起こりやすいのかとかそういった細かいことはまだ決まっていないんだ」

「とは言っても、時間は有限だからね。今からする質問にはだいたいイエスかノーで答えてもらえれば良いわ」

「え、時間制限があるんですか?結構今までのんびりお茶とか飲んでましたけど…」


 思ったよりのんびり過ごしていたから、時間の流れがゆっくりとした空間かと思っていたが、どうやら違うらしい。はぁ…と、金剛にため息をつかれる。

「本当は時間の制限があることをあまり言いたくないんだけどね。でも、紗良は僕らと会う前に屋敷の中をふらふらと探検しだすし、勝手に天馬みたいな動物を創造しているし、思った以上に時間が無くなってしまっているんだよ。別にいいよ、のんびり決めてくれても。その代わり、紗良はもう元の世界に戻れなくなるけど」

呆れたように文句を言われたが、さらっと重要なことを言われたような気がする


「…って、え。元の世界に戻れるの?」

こういうのって、お約束のように元の世界に戻れないものなんじゃないの。なに、その戻れますって言う親切設計。嬉しいけど、それでいいのか。


「別に紗良が望むなら、今から創る陸地に転生してもいいけど、今からだと人類がまだ居ないから動物スタートよ?そもそも紗良を選んだのって、長生きしそうだから地球に戻った後から地球の知識を勉強して欲しいからだし」

…人類がいない状態での転生は嫌だ。できれば種族が変わったとしても喋って意思疎通ができるものになりたいし、戻してくれるなら戻してほしいに決まっている‼ただ、私が勉強して知識を得ても、金剛や百華の役に立たないとは思うんだけれども…。


「今、紗良が吾らと会って喋ったことで繋がったからね。紗良が見聞きしたことは、吾らの知識としても積層されていくようになったんだ。紗良がたとえ内容を覚えていなくても、吾らが見たことに変わりはない。この星が発展していくときにその知識は活用させてもらいたいからね。乱読結構。なんなら百科事典とか読みまくってくれるとありがたいよ。」

「さて、本当に時間が少なくなってきたわ。紗良が今日早くベッドに入ってくれたとはいえ、多めに見積もっても睡眠時間は9時間ほどかしら。残り時間はあと半分くらいね…」


 思ったよりも、のんびりと散策やティータイムをしていたらしい。未だ目の前に居る夫婦神に慣れないが、時間は刻一刻と過ぎていっている。夫婦神として設定した金剛と牡丹は、私の中では日本神話の国産みのようなことをするような神ではなかったはずなのだ。それなのに、国産みどころか星の創造神。おそらく私以外の者が考えた設定によって、より高位の神なっているのだろう。本当に訳が分からない。でも、まぁ…滅多にない楽しい体験をさせてくれたお礼だ。正直、星の方向性がどうとかこうとかなんて、私にどうすることもできないようなことを聞かれても困るし、正直投げ出したい気分のほうが強いけれど、イエス、ノーだけの返答くらいは出来るだけやってみよう。ティーカップの中にほんの少しだけ残っていたお茶をグイッと飲み干し、姿勢を正す。

「とりあえず今から質問には答えるわ。どれくらい答えられるかはわからないけど、頑張ってみる」

こうして、怒涛の質問タイムが始まることとなったのだ。


毎週同じ時間に投稿とかをしてみたいけれども、なかなか難しいですね。来週中に三話を更新できるようにしてみたい。

誤字脱字ありましたら教えてください。


今回、小さな二柱の神様がやたら喋ってましたが、次話もめっちゃ喋る予定です。

神様として二柱と統一した方がいいかなと思いつつ、主人公の紗良が神様とあまり認識できてないまま話をしているなぁとおもったので、二人と書いたり二柱と書いたりごちゃごちゃしています。

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