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オーバーラップ!!  作者: 松本 銀治
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メインイベント

赤チーム対青チームの試合は牧野を要する赤チームの圧勝で終了した。


しかし、ラスト青チームのゴールによってワンサイドゲームで終わらなかった、次に期待が持ち越しされたような奇妙な雰囲気がグラウンドに包まれている。


剛はコートの外で水を飲んでいる若い彼に近づくと声をかけた。


「ナイスプレー、特に最後のワンプレーは凄かった」


急に話しかけたせいか、若い彼は驚いた顔を見せたが剛の言葉に笑顔を浮かべた。


ただ、すぐに


「負けちゃしょうがないです」


とつぶやくと


「赤チームの二番(牧野)の人凄いっすね・・・。あ、次は青と緑の試合ですね、よろしくお願いします!ちょっとトイレ行ってきます!」


と続けると足早に建物に向かって走って行ってしまった。


剛は牧野を抜いたプレーを話したかったが、次は剛の緑ビブス対青ビブスの試合だったこともあって諦めるとコートに入って緑チームのボール回しに加わった。



10分ほど経って、青チーム対緑チームの第二試合が開始された。


若い彼は相変わらず最終ラインで堅守を見せ、剛はそのプレーを驚きをもって見ていた。


(あいつのテクニックはちょっとずば抜けている・・・。特にトラップの技術が桁違いだ。それに状況判断も良い。基本をよく分かってるプレーだ)


実際にマッチアップをしてみて、剛は改めて彼の実力を肌で感じていた。


試合は後半、青チームの選手が決定的なチャンスを外したところをカウンターで剛が決め、試合は緑チームの勝ちとなった。



試合終了後、剛のもとへスタッフの中田なかたが近寄ってくると笑顔で話しかける。


「赤ビブスの彼、中村君わかる?」


剛は頷きながら答える。


「知ってます、浦和大和の牧野君ですよね、テレビでみたことはありましたけど、ちょっと高校生のレベルじゃないですよ」


すると中田が急に真剣な顔になる。


「いや、中村君も凄いよ。こないだ中村君、僕のチームに助っ人としてソサイチの大会に出てくれたでしょ。その時対戦した相手に埼玉教員がベースのチームがあって、偶然浦和大和の監督が応援で試合をみていたらしいんだ」


事態が飲み込めない剛は、 はぁというしかない。ソサイチは七人もしくは八人で行うサッカーである。フットサルよりサッカーに近いと言える。


確かに春休みに入って最初の土曜日、剛は中田に誘われてソサイチの大会に参加していた。


「そこで剛君、その埼玉教員チームの人にに所属聞かれたでしょ?そしたら四月にサッカー部できるまでは所属チームはないけど、毎週金曜ここで個サルしてるって答えたって聞いたよ」


中田のチームのレベルもかなり高かったが、比例して対戦相手のレベルも高く、剛もかなり真剣モードでプレーしていたことを思い出した。そう言えば準決勝で負けた時に相手チームの人に話しかけられた気もする。


「そのことを後から浦和大和の監督が聞いて、今日牧野君をここに寄越したらしいよ。牧野君にとっても中村君にとっても刺激になるって思ったのかもね」


まさか浦和大和の監督の目に入るとは・・・剛は苦笑いをしたが、中田の最後の推測は言葉は事実ではないだろうとも感じていた。


それは何度か牧野と目が合ったときに感じる印象で、あの牧野の目は刺激を受けたいとかそういった類はなかったからだ。


どちらかと言えば、敵意に近い。



「ただ・・」



中田は続ける。


「今日もう一人の初参加の彼、岡本君っていうんだけど、彼も凄いなぁ。あれで15歳って言っていたから、日本もレベルが上がってきてるね」


中田は1人でうんうんと頷いた。



(15歳だって!?)



剛は目を見張った。


あの技術で先月まで中学生とはどんな経歴の持ち主なんだ…しかし、その思考は中田の言葉に打ち切られた。



「よし、そろそろ牧野君と中村君の直接対決、日本中が注目の今日のメインイベントだね」


笑いながら大袈裟な表現を中田はしたのだが、近い将来、中田は決してあの表現が的外れではなかったと実感することになるのである。

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