コサル
金曜日の部活動が終わり、勝負の1週間が終了した。仮入部生は3名、後2名はどうしても必要な状況で剛は週末を迎えることになった。
剛は落胆しつつも、家の近くにあるフットサル場に足を運んでいた。
毎週金曜の夜8時から10時まで、個人参加型のフットサルに行くのが日課だった。通称「個サル」と言われているこのイベントは今では随分メジャーになってきている。
参加可能な年齢は中学生から社会人まで幅広く、毎週違うメンバーとチームメートになるところも剛にとって魅力的だった。
そして毎週金曜の個サルでは試合数は少ないものの、勝てば参加費2千円が半額になる為参加者のモチベーションはいつも高い。
半年前から通い始めた剛だったが、この個サルではちょっと名の知れた存在だった。
なぜなら剛のチームは人数調整で運営スタッフが相手チームに入った時ですら、1度も負けたことがなかったのだ。
剛がグラウンドにでると、顔馴染みになった社会人の中島さんが声をかけてきた。
「今日こそは中村君に勝ちたいなぁ、最も同じチームならそれが1番だけどね」
剛もニコリとして頷く。
半年間も通うと大抵のメンバーはみたことがある人ばかりになってくる。たまに新しい人も来るが高校生は皆無で大学生か社会人だ。
ストレッチをしながらグラウンドを眺めていた剛だったが、見たことのないメンバーが2人いることにふと気づいた。
もともと自由な個人参加なのだから珍しいことではないのだが、今日は少し様子が違っていた。
なぜなら2人とも明らかに若く、1人は自分と同学年位、もう1人は高校1年生か下手したら中学生であろう。
そして2人で会話をする素振りもないことから、それぞれ別々に参加したことが伺える。
最後まで言葉を交わすこともなく黙々とウォーミングアップをしている姿に、剛は2人から特別な雰囲気を感じ取っていた。
そして8時半、スタッフの中田さんの言葉に全員がセンターサークルに集まると、いつもの様にランダムなチーム分けが始まった。
「では今日はこのチーム分けで試合します!怪我のないように楽しんでください!!」
中田さんの指示でそれぞれビブスが割り振られると、3チーム総当たりでのフットサルゲームが始まることになった。