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それだけのこと

作者: こぶた


僕には一歩を踏み出す勇気がなかったんだ。ただそれだけのこと。


友達が欲しいとずっと思っていたんだ。僕にはその輪に入れてって言葉を使う勇気がなかったんだ。ただそれだけのこと。


好きな人がいたんだ。僕にはその人に気持ちを伝える勇気がなかったんだ。ただそれだけのこと。


やりたいことがあったんだ。僕にはその波に飛び込む勇気がなかったんだ。ただそれだけのこと。


普通になれなかったんだ。自分はこれでいいと思う勇気がなかったんだ。ただそれだけのこと。


誰からも必要とされない場所に行くのが嫌だったんだ。僕にはそこから逃げる勇気がなかったんだ。ただそれだけのこと。


僕の苦しみはただそれだけのこと。ただそれだけのことと言われるだけのことでも…


もう自分にはなにも無くて、そんな自分が大嫌いで、生きる価値も意味も理由も権利も無くて、死ななくちゃいけないと思ったんだ。

僕には一歩を踏み出す勇気がなかったんだ。それだけ。ただそれだけのことだったんだ。

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