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後輩は積極的  作者: Joker
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第6話



 夏休みに入った。

 大学の夏休みは長い。

 俺はそんな夏休みをどう過ごすかと言うと……。


「いらっしゃいませ〜」


 もちろんバイト三昧だ。

 稼げる時に稼いでおかなければ、遊ぶことも出来ない。

 俺は平日はいつもの倍の時間シフトに入っている。


「はぁ……疲れた」


「お疲れ岬君」


「小山君と一緒に上がりなんて、なんだか違和感だな」


「岬君はいつも僕より早く帰って行くからね」


 時刻は夜中の12時。

 いつも俺は遅くても夜の10時にはバイトを終えてアパートに帰る。

 こんな遅くにバイト先に居るのは、長期休みの時だけだ。


「小山君は大変だな、毎日こんな遅くまでバイトして」


「慣れちゃえば大変じゃないよ」


「そういうもんかなぁ? じゃ、俺はさっさと帰るよ」


「あ、待った。よかったら、このチケットいらない?」


「え? これって、プールの入場券?」


「あぁ、最近出来た遊園地とか映画館が入ってる、大型のアミューズメントパークだよ。僕はそう言うの興味ないし、よかったら小山君行ってきてよ」


「いや、俺も興味ないし……それに、これペアチケットだろ? 一緒に行く相手も居ないし……うん、絶対に居ない!」


「なんで二回言ったんだい?」


 なぜか知らないが、一緒に行く相手の事で一瞬先輩の事が脳裏を過った。

 あの人と一緒にプール?

 どんな罰ゲームだよ。

 男からはきっと嫉妬の視線を向けられるだろうし、先輩は先輩で俺を顎で使うに決まってる。

 そんなチケット、家にだって無いほうが良いに決まってる。

 ここは丁重にいらないと言っておこう。


「誰か別な奴に渡してくれよ」


「そっか……じゃあそうするよ。お疲れ様」


「あぁ、お疲れさま」


 俺はチケットを返して、家に帰る。

 俺の夏休みはバイトばかりしている訳では無い。

 しっかりと友人と遊びにも行くし、課題もやっている。

 しかし、残念ながら彼女なんて居ないので、ペアチケットなんて宝の持ち腐れだ。


「さて、帰るか」


 俺は少し涼しくなった帰り道を自転車で帰って行く。





「え? プールの入場チケット?」


「うん、愛実ちゃんいる? 誰かと行っておいでよ」


 バイトのシフト終わり、私は小山さんから最近出来た大型アミューズメントパーク内にある、プールの入場チケットを渡された。


「でも、一応私は受験生ですし……」


「息抜きは必要だよ? それに……岬君と行ってきたら?」


「え!? な、何を言ってるんでしゅか!! なんで私がせ、先輩と……」


「大丈夫、僕は誰にも言わないから。好きなんでしょ? 岬君の事」


「え、えっと……は、はい……」


 まさか小山さんにバレていたなんて……。

 絶対にバレてないと思ったのに、この人は感が鋭いのよね。

 

「最初は岬君に渡して、愛実ちゃんを誘うように言おうと思ったんだけどね、いらないって言われちゃったから、愛実ちゃん誘ってみたら?」


「せ、先輩とプ、プール……」


「毎日勉強がんばってるんでしょ? たまには生き抜きして来なよ」


「ぷ、プール……水着……せ、先輩とデート……」


「あぁ……自分の世界に入ってるなぁ……」


 先輩とプール!

 これはデートに誘う言い口実になるのではないだろうか。

 しかもお互いに露出の高い水着!

 先輩の水着なんて……ちょっと興奮するかも……。


「へへっ……えへへ……」


「おーい、愛実ちゃ〜ん。女の子がしちゃいけない笑い方になってるよぉ〜」


 私はは小山さんからプールのチケットを受け取り、家に帰って来た。


「さて、どうやって先輩を誘うか……」


 私はベッドの上で寝ころびながら、チケットを眺めて考えていた。

 バイト先でも夏休みのせいもあってか、上がり時間が被ることが少ない。

 

「うーん、やっぱり電話だよね……」


 私はそう言って、スマホを手に取り連絡帳のアプリを開く。

 先輩の名前を見つけて私は考える。

 なんと言って先輩を誘えば良いのだろう?

 いや、普通に「一緒にプールに行きません?」で良いと思うのだが、断られたらショックだ。

 絶対に断られない方法を考えなくては……。

 私は勉強よりも一生懸命になって、考えた。

 どうやったら先輩に断られずに、一緒にプールに行けるか


「よし! こうしよう……」


 私は一つの結論にたどり着き、先輩に電話を掛ける。


『もしもし? どうしたの愛実ちゃん?』


「いや〜夏休みに入って女っ気のますます無くなった先輩に、可愛い可愛い私が気を利かせて電話を掛けてあげたんですよぉ〜」


『早速切りたくなってきた……』


「ダメですよ。怒りますよ」


『え? 怒って良いのって俺だよね? なんで俺がガチトーンで怒られてるの……』


「そんな事より先輩、プールに行きたいですよね?」


『いや……俺は別に……』


「私と一緒でも……ですか?」


『うん』


「怒りますよ」


 本当にこの人は乙女心を理解していない!

 私が勇気を持って、こうして誘っていると言うのに!!


「行きますよね? 私とプール」


『いや、俺は別に行かなくても……』


「行きますよね? ね?」


『そ、そんな圧力を掛けられても……課題とかあるし……大体君は受験生だろ? 勉強しないと……』


「合コンで女子高生に手を出そうとしてたって、パートのおばさん達にばらしますよ?」


『そ、それは卑怯だろ……』


 飲食店におけるパートのおばちゃん達は、言わばその店の情報塔だ。

 おばちゃん達に話せば、その話しは店のスタッフ全員に広まる。

 合コンで女子高生を口説こうとしていたなんて、そんな話しが店で広まれば、先輩は他の女性スタッフから軽蔑の目で見られて、仕事行きづらくなる。

 私はそれを利用して、先輩を脅しているのだ。


「さぁどうします?」


『はぁ……分かったよ、行けばいいんだろ?』


「やった! じゃあ、詳細はあとで送りますね!」


『はいはい、じゃあ俺はこれから風呂だから』


「奇遇ですね、私もです」


『あっそ』


「想像しました? 私の入浴シーン」


『全然』


「怒りますよ」


『だから、なんで!?』

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