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後輩は積極的  作者: Joker
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第21話


 夏休みも中盤に差し掛かった今日、俺は今日もバイトに励んでいた。

 

「いらっしゃいませー」


 今日は休日と言うこともあってか、店の中は忙しい。

 昼のピークの時間帯は、油の匂いと暑さで熱中症になってしまいそうだった。

 ようやくピークを抜け一息ついたところで、俺は昼休憩を取っていた。


「あぁ……なんか疲れたな……」


 休憩室で水分補給をしながら、コンビニで買ってきたそばをすする。 食欲の無くなる夏場は、どうしても素麺やそばなどの麺類ばかりになってしまう。

 もっと栄養の有る物を食べろと、この前両親に言われてしまったが、三食しっかり食べてるだけでもマシだと思う。


「お疲れ様でーす」


「ん? あぁ、お疲れ」


 俺の休憩中に入ってきたのは、同じバイトの安達君だった。

 安達君は大学一年生の男性スタッフだ。

 別な大学で、今年のゴールデンウイーク開けからこの店でバイトをしている。

 

「もうバイトは馴れた?」


「はいっす! 色々大変ですけど」


「そっか、なら良かったよ。この仕事は合わない人は合わないからね」


「そうなんすか?」


「まぁね、仕事を覚えればそんな事も無いけど」


「なるほど、確かにやめる人は直ぐにやめますね」


「だろ? だから、人の入れ替わりは多いかな? 社員さんも色々大変そうだし」


 バイトの愚痴や世間話をしながら、俺と安達君は休憩時間をすごしていた。

 考えてみれば、安達君とちゃんと話すのはこれが始めてな気がする。

「安達君は大学一年生だろ? 一人暮らしとか大変じゃない?」


「少し大変っすね、自分で全部やらないといけないし………」


「一年もすれば馴れるよ、俺がそうだったし」


 二人で一人暮らしあるあるを話し、体を休める俺と安達君。

 そんな時、ふと安達君が俺に尋ねてきた。


「あ、そう言えば先輩って……」


「ん?」


「彼女居るんですよね?」


「はぁ? 誰から聞いたんだそんな話し?」


「いや、誰からって訳じゃないっすけど……愛実ちゃんと仲良いですし、一緒にプール行ったり、お祭りに行ったって聞いたんで、俺はてっきり……」


「ないない、愛実ちゃんとは仲が良いだけだって」


「そうなんですか? 自分はてっきり……」


「だって、愛実ちゃんは高校生だよ? 学校に彼氏でも居るんでしょ?」


「そうですかねぇ? 彼氏居たら、先輩とプールなんて行きませんよね?」


「確かに……言われてみれば……」


 確かに、彼氏がいるのなら俺とプールなんて行かないか……。


「でも、好きな人くらい居るだろ? あの子だって女子高生だし」


「だから、愛実ちゃんは……」


 そう安達君が言いかけた瞬間、休憩室の扉がバッと勢いよく開かれた。

 ドアを開けたのは、小山君だった。

 休憩室に入ってきた小山君は、入るなり安達君の肩を掴む。


「安達君! ちょっと良いかい?」


「え? な、なんすか!?」


「良いから、良いから」


「え? え? な、何?」


 小山君はそう言うと、安達君を連れて休憩室を出て行った。

 

「どうしたんだ?」





 休憩室の外に出された安達は、笑顔の小山に恐怖感を抱いていた。 

「ど、どうしたんすか? 小山先輩?」


「いや、少し注意と言うか、なんというか……」


「え? 俺なんかやっちゃいました?」


 仕事で何かミスをしたのかと思ってしまった安達は、内心少し焦ってしまった。

 馴れてきた時にミスをすると良く言われていたのを思い出した、安達は今日の午前中の仕事の事を思い出そうとする。


「いや、仕事のミスじゃないんだ。愛実ちゃんの事なんだ」


「え? 愛実ちゃん?」


 思っていた内容と違った安達は一安心し、小山に尋ねる。


「単刀直入に言うと、安達君の考えは正解だよ」


「え? 愛実ちゃんが岬先輩を好きって話しっすか?」


「うん、でもそれを岬君には言わないで欲しいんだ」


「なんでですか?」


「こう言うのは、あんまり外野が騒がない方が良いし、本人達の問題でもあるからね」


「な、なるほど……でも、なんかショックだなぁ……」


「ん? 安達君て愛実ちゃんが好きだったのかい?」


「いや、そうじゃなくて……岬先輩は女の子に好かれて羨ましいなって……」


「それに気がついて無いから、余計に質が悪いよね」


 同じバイト先の鈍感なバイト仲間の話しをしながら、安達と小山はため息を吐く。

 

「ん? でも小山先輩もイケメンじゃないですか!」


「イケメンとモテるのは別だと思うけど? それに僕は別にイケメンじゃないよ」


「あぁ……ここにも鈍感な人が居たよ」


 結局モテないのは、自分だけかもしれないと思った安達は肩を落として休憩室に戻って行く。





 少しして安達君が休憩室に戻って来た。

 

「小山君なんだって?」


「いえ、なんでもありません……先輩方が羨ましいって話しですよ」


「? 何を言ってるんだ?」


「何でも無いっす……」


 安達君はなんだか元気が無くなっていた。

 一体小山君に何を言われてのだろうか?

 

「あ、そう言えば安達君、今度の店舗休みの日って何か用事ある?」


「あぁ、あの空調設備の調整と店内の清掃とかある日ですよね? 確か二日間休みになるって……」


「うん、その時に店の皆で、温泉旅行にでも行かないかなんて計画してるんだけど、安達君もどう?」


「良いっすね! 俺も行きたいです!」


「よかった、じゃあ詳細は追って連絡するから」


「店の皆で温泉なんて、楽しそうですね!」


 良し、これで四人目だ。

 後は小山と店長だが、参加するだろうか?

 プールに行った時に、愛実ちゃんから温泉に行きたいと言われた時は焦ったが、なんとか二人きりは避けられそうだ。

 そんな話しをしている間に、休憩時間が終わり、俺と安達君は厨房に戻って行く。


「いらっしゃいませー」


 再び始まる地獄の時間。

 休憩室と厨房の温度差に驚きながら、俺はサウナと化した厨房でハンバーガーを作る。

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