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果ての花  作者: 猿山 照明
1/1

瞬間

人は自分が死ぬ瞬間を理解すると、その時どう思うのだろうか?


事故に遭う瞬間、自ら命を絶つ瞬間、ベットの上で家族に看取られながら息を引き取る瞬間。様々な場面で個々が思うことは多種多様にあると思う。


それは俗に言う「走馬灯」と呼ばれるものであり、過去を遡るように振り返ることが一般的な認識である。


そして当事者はその「走馬灯」を見て、悲しく思ったり、満足に思ったり、愛おしく思ったりするのだろう。


しかし、その周りにいる人は異常者ではない限りは負の感情しか湧かなく、さらにその外側にいる者に関しては、死亡は「人口-1」としか考えていない人が殆どだ。


他人は他人に対して思っている以上に無関心である。それが人間の性である。


過去の偉人が言った「愛の反対は憎しみではなく無関心である」。この言葉を現代人が聞いても、特に何も起こらない。そう、無関心は悪ではないのことは自分たちが証明しているのだ。


そして、呆然と青くない空を見上げている男も、その大多数の人の1人であり、極めて普通の男子高校生である......いや、そうだったと言った方が正しいだろう。


その男は恐怖や怒りのような雰囲気は一切感じられず、むしろ優しく満足げな表情でその場に立っていたのだ。


それはその男にとっては異常な行動をしたことによる結末で、それで命を落とすことに温かさを感じていたからなのだと思う。


男はボロボロな姿をしており、体力がなく、ぶら下げていた左手をゆっくりと天にかざした。そして、掠れた声を出した。


「......不思議と後悔をしていない。自分でも、こんなことをするなんて意外だと思っているよ」


1人で話しながら振りかざしていた手を弱々しく握り、口角を少し上げて笑う男は、弱々しく、しかし力強い声で言ったのだった。


「でもね、俺は初めてだったんだ......」


頭上に落ちてくる輝かない星は理不尽に近づいてくる。


その瞬間、男が思ったことはなんだったのだろうか?




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