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第2話


 現在、地球は初めて知的生命体による侵略の危機に立たされていた。

 人類は数年前、初めて外宇宙からやってきた、知的生命体と接触に成功。その接触によってもたらされた情報によって、人類の科学技術は、一段階も二段階も飛躍する。それだけでなく、人類の進化の可能性まで示された。それが、<覚者>と呼ばれる人類は、景のように変身し、超人的な力を得る。その力は、過去の科学技術を凌駕し、無用のものとした。


 しかし、その力を持つ者は少ない。人類の危機に対抗出来る人間は限られている。

 景はその自覚が薄く、そんな景を、凛はとても心配していた。


「……」


 凛の望む言葉は、景の口からは出てこない。こうなっては、幾ら待っても時間の無駄だ、と長い付き合いから知っていた。


「ふぅ……この話は、また今度にしましょう」

「うん……」


 結局リラクルームを利用することもなく、二人は無言のまま別れ、それぞれの自室に戻った。


◆◇◆◇◆◇


「もうすぐ……もうすぐだ」


 男は自分に言い聞かせるように呟く。

 簡素な室内だった。机と、男が座っている椅子があるだけの部屋。生活感らしい生活感は、机の上の写真立て一枚。それも、所々焼け落ちている、笑顔の男と少女が写っているだけの写真だけ。


「よかったのか? 血が流れることになる」


 それに応えたのは、宙に浮く奇妙な生物。ぬいぐるみのような見た目をした生き物で、目には理知的な光をたたえ、男の言葉を理解し、自身もまた言葉を発していた。


「外から来たお前が気にするのか? それに、もとより覚悟の上だ」

「そうか……いや、そうだったな。なら、始めてくれ」

「あぁ、始めよう。世界を啓蒙する戦いを」


 男は立ち上がってそう呟くと、全身が光に包まれ、真っ黒な拘束装甲に身を包んだ人型が現れた。


◆◇◆◇◆◇


「任務の変更、ですか?」


 ブリーフィングルームに呼び出され、上官から言い渡された指令に、景の脳裏に不安がよぎる。先ほど凜との会話が否応なしに思い起こされたからだ。


「そうだ。この付近の海域で、不審な大型船が発見された。この艦はこれより、全ての予定をキャンセルし、その船を追跡、可能なら拿捕する」


 補足された情報は、景を安心させるどころか不安視していた現実が確定化されたことを知らせるだけだった。


「大型船の拿捕、ですか?」


 せめてもの抵抗、という程でもなかったが、景は疑問に思ったことを口にすると、30代半ばの上官は、頭をがしがしと掻く。


「ま、我々の任務ではない、という気持ちはある。が、どうやらこの件は根が深そうでな…モニター、だすぞ」


 モニターに投影された映像は、有名な動画投稿サイトの画面だった。映し出される映像は、スマートフォンか何かで撮影されたのか、手ぶれが酷く、画質もあまり良くない。

 良くない…が、それでもそこに映し出されている映像は、衝撃的な映像だった。

 炎上する研究所らしき建物、そこから飛び立つ人型の姿がバッチリと記録されている。


「ヴェスター……?」


 映っているのは、自身もよく知る…というより、自分と同じ力を持った人間の姿に見える。


「やはりそう見えるよな…お前たち覚者の変身形態…ヴェスター形態によく似ている。しかし、この人影が覚者だとすると問題があってな。このような覚者は、どの国にも存在しない」


 現在、覚者とは国家が保護する人物であり、公表こそされていないものの、国家間ではその情報のやり取りがなされ、条約によって、その存在の隠蔽を禁じられている。

「それと、この映像はここからほど遠くないある国で撮影されたものなんだが、これと合わせて幾つか情報局が気になる情報を拾ってきていてな。この建物は国が保有するピース研究施設であり、そこからピースが強奪された、という情報だ」

「えっ!?」

「今回上層部からの命令は、不審な船の追跡、可能なら拿捕。それ以上の情報は、追って指示、ということなんだが、どうもこの動画の内容と無関係とは思えなくてな」


 上官はそう言って、また頭をガシガシと掻いて続けた。


「任務前にこういう情報は公開しない方がいいんだろうが、もし万が一、この情報の断片が全て繋がっている一連の事件だとするならば、今追いかけている船には、どこにも所属してない覚者と、ピースが存在することになる」

「……」


 予想だにしなかった情報の数々に、景は何も応えられなかった。


「戦いになるかもしれん。そうなったら、お前頼りになる。今なら適当な理由を付けて、退くこともできるが?」

「……いえ、大丈夫です」


 上官は、やれ面倒になった、とでも言いたげに、ため息を一つついた。


「そうか……なら、今のうちに身体を休めておけ。2時間後には出撃準備を整えるように」

「了解しました」


 雲行きの怪しい状況になってきていたが、景は命令だからと、自分の考えに蓋をしていた。

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