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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

戦記 短編

戦国時代に無双したかった・・・

「で、クソ幹事長は出るんだな?」


「はい、仙谷殿は出陣とのことです。殿もその策に賛成とのよし」


 困ったな、戸次川の合戦って、十河討ち死になんだよ。十河存保まさやすも俺、存之まさゆきもさ。


 せっかく棒火矢作って讃岐を半ば平定、土佐のおっさんも何度も撃退してやった。秀吉はほら、信長時代から臣従を誓ってるから阿波を手にしたクソ幹事長、あ、単に俺が仙谷って事で勝手に読んでるだけだが。


 豊臣による九州征伐となった今回、四国勢の一員として九州にやってきた。が、長曾我部は全くやる気なし。仙谷やうちの殿は上を目指して無茶をやりたいらしい。功名を焦ってるんだろうな。そんなだから史実ではここで、負けるんだ。本当は長曾我部の言う通り、増援待つべきだと俺も思う。


「ご家老、これより参りましょう」


 おいおい、これから夜なんだが?夜戦やるの?バカじゃね?


「わかった。擲弾兵二中隊は殿と、一中隊と重迫隊は俺と来い」


 擲弾兵。カッコいい名前だろ?


 本来、関ヶ原の前あたりに開発される棒火矢ってヤツを未来知識を使って作ってみた。


 棒火矢は鉄砲の先に込めて撃つらしいが、俺はロケットの要領でRPG7みたいに構える様にした。

 竹でできた本体を鉄のリングで補強した本体に、RPGよろしく弾頭を差し込んで発射する。


 本来、RPGはロケットではなく無反動砲なんだが、竹製の筒にそんなものを求めてはいけない。そもそも、ここは戦国時代、16世紀なんだよ?

だが、頑張った。

 矢のような本体の後部に火薬を詰めてこれを装薬として打ち出す。さすがに開発は失敗の連続だった。火薬量が多すぎて竹筒が吹っ飛ぶこと多数。けが人も出た。

周囲から危険な火遊びをするバカと言われ続けたが、何とか改良して安定させるのに2年も要してしまった。


 だが、たかが木の棒を飛ばしても意味はない。そんなものより矢や鉄砲の方が有効だ。

それが分かっていたから当初から弾頭に火薬を詰めてその外側に小石を詰め込んでRPG7の弾頭のようにしつらえた。そして、導火線に発射時の装薬の火を点火して飛翔させ、だいたい1町から二町、110mから220m飛ばして爆発させるようにした。


 讃岐平定時に使用したときは凄かったね。

鉄砲の射程より先で、矢がどうにか有効という間合い。そこで突撃してくる槍隊の眼前で爆発させるんだ。

クレイモア地雷ってあるだろ?中に鉄球仕込んでる凶悪な奴。あれを空中炸裂させた感じだな。

危害半径は6間程度、だいたい直径10mちょっとの範囲に小石を高速でまき散らす。そりゃあもう凄まじい散弾だよ。

 案外、致命傷にはならないんだが、そこらじゅうを小石にやられて戦どころじゃなくなるんだ。致命傷じゃないと言ってもこの時代の医療技術じゃほとんど助からないから致命傷ともいえるかな?


 そいつが今、300門ある、100門一中隊として編成して3中隊連れてきている。

 しかも、他家には一切その技術は伝えていない。弾頭は最低限しか持ち歩かないし外から見えにくくもしている。兵には過酷だが、倒れた奴の弾頭には生き残った仲間が火をつけることを徹底している。

 第一、こんなものが広まってみろ。時代を300年も進めちまうだろ?規模が小さいとはいえ、こいつでの戦は第一次大戦の惨劇に近い。さすがにヤヴァイのは自覚している。


 俺はここで死にたくないから本隊に2中隊預けて敵の足止めをやってもらう。そして俺たちは・・・


 もう一つ、重迫隊ってのは何かっていうと、そのまんまだよ。

 こいつは初歩的な迫撃砲なんだ。雷管が作れなかったけど、そこは圧気発火器を応用した信管を作った。

 

 圧気発火器って知ってる?アウトドア用品にあるんだが、シリンダーになってる先に火種を取り付けて、シリンダーを一気に押し込むだけ。圧縮された空気が高温になり、火種になる綿などが発火する。この原理を利用した空気式信管による機銃弾のマ弾ってのを日本陸軍が作り出してるね。そこで興味持ったわけよ。


 こいつも苦労した。もともと、圧気発火器ってのは東南アジアの発火器具らしいんだが、この時代はまだ日本にはない。だから、一から作って試した。

最初は全く火がつかなかったが、何とかつくように出来て、火薬で試したらびっくりしたね。ヤヴァかったよ。

 雷管として使えるように調整して、花火の筒みたいなものを木と竹で作って、底は雷管打ち付けてよいように鉄にした。

 砲弾は迫撃砲弾を参考に鉄と竹で作って、砲弾の底に圧気発火式雷管、その周囲を装薬で固めている。

 弾頭にも圧気発火式信管付けたかったけど、弾速や着弾地点の地面の硬さで不発弾になる割合が多いので泣く泣く導火線式にした。そして、射程に合わせて長さを調節することで対応している。最大射程は何と30町、約3.3kmにもなる。


 その重迫隊を引き連れて島津本陣を射程に収める位置へと向かう。


「ここなら本陣まで25町ってところだな」


 島津本陣から2.7km、この時代はこんな距離で攻撃されるとは思っていない。


 目的は一発ぶちかまして敵を混乱させて撤退の隙を作ることだから、本陣のメンツを死傷させる必要はない。そもそも、こんなに離れてちゃ確認しようもないが。

 それに、本来重迫隊は攻城部隊だし、世間でもそのように認識されている。攻勢準備射撃なんて言う物量にものを言わせた使用は戦国時代には不可能だしな。


「重迫隊、準備できました」


 しばらくしてそのような報告が入る。


「して、味方はおっぱじめたか?」


 そう聞き返したときには銃声が鳴り響き、どうやら突撃も始めているらしい。押しているのが敵か味方かまではわからなかったが。


「始まったらしいな。よし、二斉射したら退くぞ」


10門の迫撃砲が火を噴く。


 そして、しばらく待って島津本陣上空で花火が花を咲かせる。

 使用しているのは攻城用の焼夷弾だから、実は野戦の本陣には大した効果はない。せいぜい旗や着物に火が付く程度。多少は火傷も期待できるかな?


「第2射、いけ」


ずしんと来る発射音がまた響き渡る。


「よし、退くぞ」


 急いで迫撃砲を解体してそれぞれが背負って撤退を開始する。

 振り返ると本陣あたりで火災が発生している。

 冬だから下草に火がついたかな?ここ数日乾燥してるからなかなか消えそうにないなぁ~


「火が付いたぞ。これで多少は有利になるかもしれん」


 俺は意気揚々と撤退していった。



 結果から言うと、合戦には負けた。

 やはり、士気の低い長曾我部隊や功名心で突っ込んだ仙谷、十河本隊はかなりの損害を出している。


「長曾我部信親殿討死!」


「殿、討死!」


 暫く撤退したときにそんな報が入る。

 でも、なぜだろう、預けていた擲弾兵の半数近くは撤退できている。まさか、優先的に逃がしてくれたのだろうか?


 幸いだったのは、本陣を砲撃して火災を発生させたことで島津軍に混乱が生じ、追撃の手が緩かったことだろう。


 しっかし、これからどうすっかなぁ~



 結局、讃岐十河家の庶子に転生してここまでやってきたけど、天下取りどころではなかった。讃岐の平定とその維持がせいぜい。どうせ俺は庶子だから讃岐を任されることもない。これまでも家老としてやってきたし、これから先なんかわかりやしないようなぁ~、いっそ、棒火矢衆とか名乗って独立しようかな?



十河さんちの庶子でお話作りたかったけど、讃岐の事情がよく分からんから匙投げた結果こうなってしまった・・・

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― 新着の感想 ―
[良い点] この作品、物凄く面白いですよ。続きを書くか、違う人を主人公にして、開発させるか、続きを書き下ろしましょう❤ [気になる点] 信親は戦死しちゃったか?残念です。 [一言] 第2話書き下ろしま…
[一言] 連載じゃなく、単発のなら今回見たく上手くまとめられるんじゃない? 追伸 うちのファーガソンライフル……M1ガーランド……超えてるよwww
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