デジリアルワールド
こんばんは、誄歌です
ラスト投稿(連続での)
一時まではあと十分近くあるので見回りしつつ誤字を直していきます(残ってたら)
では、どうぞ( ゜д゜)ノ
からだの不調がやばめ
「えー、自己紹介かぁー
………百合 ほのりです!
これだけで良いのかな?………えーと、後なに言うべき?」
自己紹介の先陣を切ることになった私は凜に意見を求める形で見つめた。同時に、周りに居る人たちからも「他になにか言う必要はあるのかと」言う意味のこもった視線を浴びた凜はため息を吐くと、だるそうにしながら、どこか感情のこもってない目を─開いた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
たしかに、一概に自己紹介と言っても何を言うべきなのか決められていなければ言いづらいかもしれないな。そう思い発した僕の言葉は、
「……何か伝えておきたいことあればそれを言うってことで良いんじゃないかな」
これだけだった。もちろん、他にも何か言う気はあったのだがあまり時間をかけたくもないなと言う思考が過った節もある。それに、このメンバーとはかなり付き合いが長くなるような気もしたからだ。多分、自己紹介をする機会は他にある。
「なら……コードは反逆者ルーインですっ!」
「それの方が大事だろ、百合」
樹里の発言によりなんの衝撃を得たのだろうか。ほのりは口元に手を当て、はっとしていた。
「………コードとなんか、言いたいことあれば言おう」
地味に疲れてきた僕は徐々に眠気を覚えた。と、言うか唐突に眠気に襲われた。体が揺らぎ─実際には感覚のみ─焦点が合わなくなり四肢に力が入らない。これは─
「玲羅!!」
唇を少しだけ噛み飛びかけた意識を留める。同時に玲羅の名前を叫び今起きていることを伝えた。
「ぅ………頭………痛い……ッ!」
「なにこれ……体………動か……ない!!」
「うぉ!?だ、だるいな………」
みんなが次々に倒れ込み各々悲鳴のような声をこぼす。どうやら、奇襲を受けたようだ。それが─人間かそれともデュエンデかは、現段階ではわからなかった。しかし─
「Y!凜、あと、任すわ!」
「っ、わかった……!!」
頭痛に悩まされながらも指先に魔力を込め、宙に描いたルーンを指で弾き僕の体へ飛ばすと玲羅は力尽き崩れるようにして倒れた。
ルーンが体に触れた瞬間、体の中に小さな結界が作られる。それは、ほんの一瞬だけ謎の攻撃の呪詛から僕を解き放つ。
「コマンド、シャイニング─」
己に課せられたルーンの効果を自身の魔力を流すことで更に強固に、だが、それでいて僕がこれから使う技の阻害をしないよう心がけた。
「ッ─!」
一度解除したセイバーを再度ロードする。姉以外の他の目があるが、仕方がない。この危機を乗り越えるのには本来のコードを使う必要があった。
いつも使っているセイバーのコードではないコードが一瞬、僕の体を巡った。そのため、模様を見たやつは誰もいないだろう。
刹那─瞬きをする隙がないほどの速度でセイバーの重みが腰から伝わる。瞬間的に鞘から抜き放つと刀身は既に白みを帯びた黄色に光輝いていた─そして。
自己紹介をするため作っていた輪の中心に立ちセイバーを構えると全員を囲めるだけの円をその場で回転することで床に─刻まれた線は白みを帯びた黄色で輝いていた─刻む。そして─
「アンサー!」
セイバーを裏手に持ち替え、床に突き刺す。突き刺した敷石は真っ二つに割れ黄色い閃光が円に向かって走った。円に触れると閃光は少しだけ形を変える─完成形は太陰大極図たいいんたいきょくずを想像してくれると分かりやすいかもしれない。
その瞬間、セイバーが作れる結界の中でも大きい方だと言える、自分が認識している者以外の第三者の攻撃─物理ではなく魔法による精神干渉─から一分だけ完全に無縁にすると言う結界がみんなを囲った。
「玲羅!!」
突き立てたセイバーから手を離し玲羅を起こす。しかし、完全に意識を失っているようで玲羅からの返答はない。
「………気を……失ってるだけのようね。大丈夫よ」
「……わかってるよ……はぁ」
後ろから覗き込むようにして玲羅の顔色を見た玲奈の一言はたしかに事実だ。だが、少し違う。ただたんに気を失っているわけではない。
一時的に魔力が全て吹っ飛んだことによる気絶。特殊体質な玲羅は魔力保有量は多いが、使えるのはその内のほんの一握りだ。多分、ここまで一人できたのだからそれなりに魔力─少なからずとも一度だけデュエンデに遭遇していたのはわかっている─を消費していたのだろう。
「あと一時間………」
試験が終わるまではここから出れないと仮定すると─
「………っ」
シャイニング・アンサーが解け、ガラス細工が崩れたような音が聞こえた。一分を超過したため結界が保てなくなったのだろう。同時に、先程の精神攻撃に───
「…………ん?」
襲われなかった。逆に心地よい音が僕たちを包んだ。
音の発生源を見るとそこには、アーチャーが居た。
「自己紹介……タイミングではないかもしれないが、露草 未夢─アーチャーだ」
ロードした弓の玄を撥弦楽器はつげんがっきのように─ただし、一度だけ─指先で弾き、作り出した音を魔力で増幅させ辺りを包みノイズから守ってくれているようだ。
音色はハープに似ている気がする。聞いていて気分が晴れていく気がした。
「私のこれも橘同様長くは効果を保たない、何をどうし、どういう策をとるのか決める必要がある」
坦々と続ける露草はどこか僕を直視するのを避けているようにも見えた。が、今はそんなことに気をとられている場合ではない。
「考えられることは二つ。一つは複数の生徒による攻撃、そして、もう一つは─デュエンデによる攻撃だ。だから、前者の場合は広範囲攻撃で僕が仕留める。後者だった場合は、そうだなその時考えよう」
突き刺したままのセイバーの柄えの部分を蹴り胸の高さまで来たところで柄つかを掴む。
「自慢じゃないけど僕は精神攻撃に対しての防御は高い。子供の攻撃なんかで倒れることはないから……まぁ、十中八九デュエンデだろうけどね」
自分自身、子供であることを棚上げにし呟きながら動作を続ける。セイバーを鞘へ戻す際に刀身を見ると反射した光に赤い目がちらついたのを─僕は逃さなかった。
「ッ─」
左足を引き力を込め、回転。遠心力を乗せ、鞘に入れかけたセイバーを引くと共に投擲。
投げたセイバーは弧を描くことなく真っ直ぐ狙った所へ刺さる。壁からかなり手前の空中でセイバーが突然止まったことにより周り─玲羅以外─から驚きを隠せないと言う反応がダイレクトに伝わった。が、透明な何かが居るとわかった以上。ずっと硬直の状態で居るメンバーではなかった。全員、構えを取り直ぐに戦闘モードに入った。
そんな中、数歩下がり玲羅の肩を抱え寄せる凜の姿があった。周りから驚きの反応は感じられないところ、この数分で凜のシスコンっぷりにも、慣れたようだ。
僕も戦闘に加わるつもりはあるが─なにより、玲羅のことの方が心配だ。
それに今日はいつもよりも魔力を使いすぎている。切れることは無いだろうが、一日にこれだけの魔力を使うと言うのは初めてだ。少し、未知数なところがある。
「大悟、ついでにねーちゃんを頼む」
構えているとは言え大悟は戦闘に参加できないだろう。大悟自身、その理由を自覚しているし、無理をしてまで自分の戦いたいと言う欲に飲まれるほどまだ、馬鹿ではなかった。
「おう、任せとけ。姉貴は何がなんでも守ってやるよ」
構えを解き、握った拳を突き出してくる大悟は何処か悲しい顔をしていた。何となく理由はわかるが、今はそれに気づいていないふりをしよう。そうでないと、話が拗れそうだ。
苦笑いをし、腰を落とす。そして、そこに居るだけで敷石を粉砕するだけの魔力を身体中に巡らせ、気を効かせたつもりか、それともただの嫌がらせか、玲奈の鎖によって何処かへ飛ばされたセイバーの名を叫んだ。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
玲奈によって弾かれ床に転がっていたセイバーを呼ぶと、何かにセイバーは弾かれるようにして飛んできて左手に収まる。
跳躍した状態で掴んだため、そのまま振り降ろすが何かに阻まれた。左手に伝わった感触はどこか違和感の塊でしかなかった。が、それを確かめる時間もなく追撃から逃れるために敷石に片足が着いた瞬間。魔力を流しコードからの直接的な引用で閃を発動させた。
「ッ………」
一〇メートルほど跳んだ辺りで方膝をつけ止まる。デュエンデを視る傍ら砕けた敷石を視界に入れると今の閃にいつもの倍近くの魔力を使ってしまったことに気づかされた。
「…………おかしい」
セイバーを敷石に立て体重をかけ立ち上がる。
「凜!大丈夫ー?」
ほのりの僕を心配している声が鼓膜を振動させる。出会って間もないと言うのにどこか安心できる良い声だと、正直思った。
しかし、僕の意識はそこには、留まらない。
「……引き出せる魔力量が上がってる?」
手を開き、うっすらとコードを浮かばせた。
「(………厳密にはそうじゃないのかも知れない)」
コードには特に変化はなかった。つまり、僕自身はなにも変わっていない。なら、一つ可能性があるとしたら─
そこまで考えてから眉間の前で拳を握る。そして、少し上がりかけていた自らの思考を魔力を込めた中指によるでこぴんで冷やす。
「ちょっと!?何馬鹿してるのよ!凜!!」
「あぁ、早く橘も攻撃を再開してくれ!」
鎖を幾重にもゲートから伸ばしデュエンデからの、攻撃を防いでくれている玲奈。そして、隙が出来ればすかさず矢を放つ未夢の声が続けて聞こえる。
「あぁ、もう大丈夫だから─」
閉じていた眼をゆっくり開ける。視界は鮮明度が上がり、もう普段見えている景色とは違うものが既に写っていた。こちらの世界に出てきていないデュエンデも、視えたがそれは無視だ。理由としてはデュエンデはこちらに出ていなければ人間に被害を加えることは出来ないためだ。それがわかっていなければ多分無視はできなかっただろう。
周りからえっ?と反応が返ってきたがそれでも攻撃の体制を解かないのはさすがと言えるかもしれない。
「ほのり、魔力でこの部屋を崩壊から守ってほしいんだ。頼めるかな?」
上を見上げたままの僕は周りに居るメンバーを誰一人として視界に入れることなく言葉を続けた。
「…………」
全てを視る目インデクスを開眼させている今、見なくてもみんなが何をしているのか僕にはわかっていた。
魔力を放出し纏う。その色は玲羅の許可なしで使うことはない纏うことも可能だったがそれはやめた。後々怒られるのが目に見えるからだ。
多分使える魔力量が増えている理由は玲羅の意識が自分から少しだけ逸れているからだ。普段は玲羅によって制御されている魔力が引き出せるようになったのだろう。
「Υがなければもしかしたら──」
髪をあげ少し圧をかける。
自覚はしているが魔力量が多くなれば少し自分が保てなくなる。セイバーなんてコードを持ってはいるが、この辺はバーサーカーなのでは無いだろうかと、思うことがある。
最も、幻想コードなどと言うコードを所持しているため正確なコードなど凜にはない気もするが─
手を離すと髪が下がってくる様子はなかった。
「出来なくはないけど、でも、失敗したらみんな……死んじゃう…………」
同時にほのりの臆病に震えている声が聞こえてくる。多分、過去に経験しているのだろう。
自分のせいで誰かが死んでしまったことが。もしくは─
「それでも良………いや、嫌なら良いんだ」
突き立てたままのセイバーに触れ引き抜く。刀身を眺めつつ溢れる魔力をセイバーに収束。その瞬間、視覚で捉えるよりも先に金属が割れた音が鼓膜を刺激した。
「………やめるべきかな」
眉を細めそれを見る。軽く刀身に罅が走っていた。多分、今のままではセイバーが耐えられない。
「……そうじゃない、やらなきゃだめなんだ」
上体を反らし三人の防御から逃れた─樹里は近距離で攻撃中─デュエンデの手刀を軽くセイバーで触れ手首をしならし、受け流した。次の行動に入るため、受け流した時とは異なり手首をしならすことなく引き上げその際デュエンデの指を斬り落とす。
「■■■■■■■■■■!!!!」
聞くに耐えない咆哮が部屋を揺らした。大悟の時とは違い、これは気味が悪い。
「うっさいなぁ………黙れよ」
セイバーについた血糊を─もちろん付いてない─落とすつもりで振り下げると僕はデュエンデを睨んだ。そして、呟く。
「凜………?」
「橘………………?」
周囲のメンバーから不安の色を帯びた声をかけられる。だが、この時僕は既に半分程「魔力により暴走状態」に、なっていたためそれが心配している声だと気づけなかった。
「……あは」
初めて前を向きデュエンデの全体を視界に入れた。ここまで大きいと何処か、鬱陶しい。
右足を前に出し、軽く床を蹴る。それだけで、デュエンデの目の前まで僕は移動した。
セイバーを上段に構え縦に振る。が、やはり何かに阻まれる。構わず、縦横無尽に斬りつけるが─高密度な魔力により、硬く、それでいて細く洗礼された斬撃が通用しているようには見えない。
─なんなら効くのかな……。
斬撃が効かないことに苛立ちを覚えた僕はセイバーを左手に持ち替え右拳を握り魔力を込めたただの殴りをデュエンデを守る何かにぶつけた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
魔力を込めただけの一撃は今まで、全ての攻撃を阻んでいた何かを貫通した。それはドライブが武器化したものすべてを弾く障壁だったのだが、この時そんなものがあるとは知らなかった。同時に、これが高校の入学試験であることも魔力の狂気に侵されていた僕は忘れていたのであった。
「………セイバー……」
左手に握っているドライブの名前を呼ぶ。それだけでセイバーは一瞬にして何かを貫通している右手の中に飛んだ。
「良く言うよね、外がだめなら中からだって」
裏手に持ち変え大量の魔力をセイバーに込める。そして、手を離そうとした。それだけで、この何かは壊れると脳内で何かが囁いた──が、次の瞬間僕はセイバーから手を離すことなく敷石を蹴った。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
私の意識が目覚めたのは何かが破壊された音が脳に刺激を与えられたからだった。
「ぐっ………目に見えねぇと防ぎきれねぇ!!」
頭上から降ってくる声の主の顔を見ようと目を開くが視界はぼやけていてよく見えない。しかし、私が凜ではなく大悟に守られていると言うことは声と視界に入ってくる色で─最も凜の位置は意識が覚醒した瞬間に知覚していた─理解した。白髪で右腕だけにドライブが武器化した赤い手甲をはめ、左腕だけで私を抱え込むようにして守っているのは他ならぬ大悟しかいなかった。目に見えない何かとガーゴイル─まだどこからか湧いてくる─を倒しながら私を守る姿はどこかかっこよく思えた。
「──ッ───」
声を発しようとしたがうまく声がでない。原因が、一時的にとは言え意識を失っていたためなのか、それとも大悟の腕が喉を締め付けているためなのかは判断がしかねた。
「うぉりゃぁぁあ!!」
私が既に起きていると気付かずに真剣に守ってくれている大悟に申し訳ない思いで満たされそうになりながらも5秒ほど悩み左腕に右手を添えると二度、軽く叩く。その時、大悟の動作の邪魔にならないように配慮出来るだけの余裕が私には─
「なっ!?」
無かった。
左腕を叩いたことにより驚きが隠せなかった大悟は反射的に右へ上体を倒した。その時がら空きになった首に後ろからガーゴイルが噛み付く。
「ぐぁっ!!」
首を絞められ呼吸が妨げられた大悟は左手を首を噛み砕こうとするガーゴイルの腕を掴むべく私から離した。
「──きゃっ………!!?」
支えを失った私は地球の重力に引っ張られ落ちる。たった数十センチ程しか浮いていないはずだが能力が低下していた私にとっては着地が不可能な距離であった。
靴底が敷石に当たると同時に膝が折れるようにしてかくんっとなる。
「くっ、やっべ!!姉貴……ッ!」
自分のミスで落としてしまったと、思っている大悟はガーゴイルの、腕をへし折ると自らの膝を付き私を押し倒し覆う形で上へ被さった。
「だ……い……ご…く……ん……??」
彼の行動が理解できない私は、なぜと言う疑問をぎこちないながらも声に出した。しかし、大悟の声が聞こえるよりも先に周りの状況を把握した。
「制服とか俺の血で汚れたら、すません!!」
そう、彼は見えないながらも─実は私の眼には鮮明に視える─野生の勘で見えない何かが迫ってきていること。自分が一度に防げる度合いを越えた数でガーゴイルが襲ってきたことを理解した彼は自分のことよりも私を守ることを優先したのだ。
黒い影が視界を染めた瞬間私は目を瞑った。
直後、ドゴォっと言う音とバシュっと言う音が鼓膜を刺激した。それが、大悟から鳴ったものだと直ぐに理解した私は迷わず手をかざし、暴走している凜に向けて叫んだ。
「来なさい、凜!!!」
声に反応した何かが大量の魔力を迸らせ蒼い閃光となり私たちの前に現れると見えない何かを断ち斬りガーゴイルたちを吹き飛ばした。
「………ただいま」
「おかえり、凜………でも後で説教ね」
「いやだなぁー」
苦笑しつつ言った言葉に弟は楽しそうに笑顔で否定した。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「………ただいま」
体から溢れる魔力をセイバーに吸わせて暴走することを回避していた─実際は回避できてなかった─僕は少し疲れを感じていた。なんと言うか、体が重く、流れる血は水銀であるかのように熱かった。多分先程の暴走状態で体が熱したのだろう。
「おかえり、凜………でも後で説教ね」
苦笑いを浮かべている玲羅の声を聞くのはとても懐かしく思えた。たった三〇分程度気を失って倒れていただけだが、それでも久しく聞く気がしてならなかった。
「いやだなぁー」
微笑を浮かべて僕は言った。
「大丈夫よ、今回は私の不注意だから説教は軽めにしてあげるから……ね?」
「わかったよ……あ、それより玲羅、大丈夫なの?」
今更ながら玲羅が三〇分程度で復帰はできないことを思いだし大悟を突き飛ばして─怪我しているのはお構い無しだ─玲羅の肩を揺らした。
「えぇ、大丈夫よ。この戦いには参加できないだろうけど……それでも私はこの通り、元気よ」
肩に置いた手に軽く手を添えると玲羅はにっこりと笑った。その顔は少し、不器用な作り笑顔だった。
「玲羅が戦闘に加わる必要はないよ、それにそうじゃなくて─」
玲羅との会話中に水を差す形で攻撃を仕掛けてくるガーゴイルをただの魔力による強化がある回し蹴りで一蹴し、今まで放置されていた大悟に手をかざす。
「随分と怪我負ったね」
「……お前と約束したからな」
「そこまでするとは思ってなかったよ……」
会話をしつつ、徐々に魔力を流す。
始めに傷を治すための魔力を。
次に戦闘に加わることができるだけの魔力を。
「………それに出会ったばかりの人にそこまで出来るのかが僕には理解できないね」
「……理解しろよ。って、お前もお人好しだけどな!」
そう言うとネックスプリング─またの名を跳ね起き─を決めて大悟は起き上がり、僕の魔力が馴染んだことに驚きが隠せないのだようで手を開いては握る。それを数回繰り返し考えても仕方がないと割りきったのだろう。笑顔になりすれ違い様に僕の肩を軽く叩いた。
「ありがとうよ………相棒!」
そして、何処か嬉しそうにそんな言葉を投げ掛けドライブに魔力を循環させ走っていった。
玲羅と落ち着いて話すためには大悟に周りのデュエンデを一掃させるしかなさそうだと言う考えの結果だったのだが、本人はそれに気づくはずもなくさっそくガーゴイルを二体吹き飛ばす。
「ふん、調子乗んな………ただ借りを返しただけだよ」
顔だけを反らし走っていく背中を軽く見た。
その時の顔は後々玲羅に言われたが、玲羅曰く微笑を浮かべていたらしい。
「凜も行って大丈夫よ、行ってらっしゃい」
そんな言葉に僕は目をほんの一瞬だけ見開いてしまった。何故なら、玲羅のまだ本調子とは言えないからだ。片膝をつき玲羅の手をとった。きちんと触れて初めてわかったがやはり、体は冷たい。
「でも、さっきも言いかけたけど本当はまだ倒れて──」
「……それ以上は禁句…………よっ!」
「って!」
不意にでこをぴんされ痛くないが痛いと反射的に言ってしまった。
「凜?今は貴方が居ないとあれは倒せないわ」
「………………」
玲羅が真剣に言っていることが、理解出来ない僕ではなかった。しかし、僕は素直に首を縦に振ることが出来なかった。
理由は特にない。
ただ玲羅から離れたくない。
これが素直な気持ちだった。
今、玲羅から離れるとまた倒れるのではないかと。
そう頭に過った。
しかし─
「だから───行ってきなさい」
優先すべきは僕の意思じゃない。玲羅の気持ちだ。
「………わかった、行ってくる」
玲羅に、背を向け右手を前に伸ばした。
「……セイバー」
そして、何処からか飛んでくるセイバーを強く握り腰を落とし構えを取ると─
「……行ってきます」
体に魔力を循環させ彗星とかした。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
後ろに玲羅を置いて戦闘に戻った僕はもう一度先程の開けた穴を目指すべく行く手を阻むガーゴイルを斬り伏せ見えない何かを避けながら─インデクスにはうっすらと写るため─突き進んでいた。
「……きりがないな……」
もう何度目になるかわからない攻防に無意識の内に溢した言葉はどこか焦りの色が滲み出ていた。それを認識したと同時に膝から力が抜ける感覚がし、身の危険を感じた僕は飛び退いた。数メートルほど飛んで着地したと同時にセイバーを突き立て片膝をつく。どうやら─中学の3年間はここまで魔力を1日に消費するようなことはなかったため─身体にガタがきたようだった。
凜自身が驚いたがこの時凜は肩で息をしていた。それほど体力が削られていたのだ。
「ぐ…っ……」
右肩が軋むような鈍痛が走り左手で抑える。右腕を上げようとするが震えが止まらず力が入らない。ゆっくりと腕を上げると手の甲まで血が垂れていることに気がつく。別段、どこかに切り傷を負った記憶はない。ましてや、まだたいした攻撃は食らっていないのだ。
「───ッ」
「な、橘!避けろ!!」
理解ができず思考が停止していると露草の叫び声が耳に届く。その声で視えない何かが迫ってきていることに気づかされる。─が右手が思うように動かず防ぐことはかなわなかった。そして、微かに視えるそれに頭を殴られた。
「ぐっ………!!!」
声が漏れるだけ強く歯を噛みしめた。気を抜けば直ぐにでも気絶してしまう自信があったからだ。宙を舞いながら目を凝らし何かに護られながら佇んでいるデュエンデを睨んだ。
─もう一度、あの赤い目さえ見えれば──
インデクスの視野を最大限に絞り一点のみを視る。透明なデュエンデの唯一見えた部分を相手が見せるのを待つのではなく視るために。
すると、ぼんやりとだか浮いている球体を捉えた。
「───ッ、がぁ!!!」
しかし、完全に視るよりも先に視えない何かにさらに殴られ壁にめり込まされた。
頭を強打し反動で目を閉じていられなくなり軽く開いてしまう。同時に焦点が合わなくなる。そしてほんの一瞬─実際は一〇秒ほど─意識が飛んでしまった。その瞬間、インデクスが解けた…………。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「凜が………頑張ってるんだから、私だってやらなきゃいけないのに……」
拳を握り、目を強く瞑る。無傷だと言うのに私だけ観ている立場と言うのはとても歯がゆく悔しいものだった。
反逆者ルーインコード、名前の通り裏切り者のコードだ。そのため意味はどうとでも捉えることができ、ほのりがもし本当に世界を救うはずのセブンコードに座を置いている場合、仲間を裏切りデュエンデたちと共に世界を破壊し尽くすことも、そのまま世界を救うことも可能な存在であった。しかし、根本的には「破壊」と「破滅」を歌うコードのためルーインはとても恐れられていた。ここ数年の殺害された者の多くはルーインのコード保有者であったことがそれを裏付ける。皆怖いのだ。保有者を含め周りの人間も。ルーインは暴走すれば崩壊現象を呼び起こし世界を終わらすことが可能なためだけに─
「応えてよ………ルーイン」
右手首に付けているドライブを左手で握りしめる。しかし、一切の反応は無かった。
私が小学五年生になった時には既にこれは付けていた。理由としてはこれがなくては服を着ることも、鉛筆を握ることも出来なかったからだ。当初、コードが目覚め始めたばかりの私は制御ができず政府からこれが支給された。紅い、綺麗なドライブが。既に、読書モデルとしての仕事をしていただけに最初は嫌だったが徐々に慣れた。
しかし、魔力は制御できず体から溢れてばかりで収拾がつかなかった。さらに溢れる魔力は日に日に量を増すばかり…………だから、遂に親に捨てられた。その時のことが脳裏を掠める。
「なんでなの………?」
目から涙が溢れた。今、私だけがみんなの足を引っ張っている状況がもどかしい。凜には部屋を守ってくれと言われた。もしかしたら、凜には策があるのかもしれない。部屋を壊すだけの威力を込めた技があるのかもしれない。けど─
「な、橘!避けろ!!」
未夢の声が部屋に響き渡った。それは凜へ対してのものだったがなにもついていない右腕を見つめていた凜が反応を起こしたときには遅かった。
凜が宙を舞う。
そして、さらに何かに弾かれ壁にめり込む。
「──ッ、がぁ!!!」
初めて聞く凜の苦痛の声は胸をチクリとさせた。鼓動が異様に高鳴る。凜は強い。誰よりも。しかしその凜が苦痛の声を漏らしたのだ。焦りが出る。焦点がぼやける。呼吸もうまくできない。
「はっ、はっ、はっ───あぁ──」
それにより私の意識が飛んだ。
その瞬間──ドライブが輝いた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
『──ドライブ、起動。ルーイン保有者ホルダー確認───魔力承認』
一〇秒ほど意識を失っていた僕は目が覚めた時に起こっていたことが理解できなかった。
理由はほのりがドライブを起動させコマンドを詠唱したことにある。先程まで魔力を溢れ返し震えていた様子とは一転、一切の魔力を溢れさすことなく無機質な表情をしている。さらには片目だけ黒ずんだ緋色に変わっていた。つまり、無意識による覚醒─魔力をコントロール出来ていない証だ。
「やばい、ほのりは──」
壁にめり込んだ体を無理矢理引き剥がす。しかし、両足を敷石につけたとたん膝から折れた。
「──ッ!?」
ガッと鈍い音が骨を伝い脳に伝わる。立ち上がろうと腕に力を込めるが痺れる感覚が走り動く気配はなかった。どうやら先程ので許容出来るダメージを越えてしまったらしい。体が言うことをきかない。
「ぐ………だ……大悟!!!ほのりを止めろ!」
体は動かないが頭だけは何とか動かせたため辺りを見渡すと大悟が一番近かったため僕らしくはないが叫ぶ。
「えぁ!?なん………でじゃなくてまじやべぇ!!!?」
そのため、僕が叫ぶと言うことを予想すらしていなかった大悟はおかしな声をあげワンテンポ遅れながらも右腕を引き先程目の前で見た構えを取った。
「コマンド、フル・──」
詠唱を終えるよりも先に敷石を蹴り、地面スレスレを滑走。その動きは僕でさえ追うのがやっとの速さだったためほのりとの間合いは三秒で縮まった。ほのりの一メートルほど手前で踏み込むと勢いを乗せた右拳を強く握りしめた音が聞こえた。
「スレッ───」
しかし、無意識下にあるほのりは避ける動作は勿論反撃をする様子もなかった。大悟の存在にさえ気づいていないようにも見えた。
大悟の拳がほのりの顔面を目掛けて─ルーインの魔力で守られているためほのりに直接は当てることができない─突き出す……が
「コマンド………珠鞠シュマリ」
「───ッ!!」
ほのりが言った詠唱の言葉に大悟は目を見開き、当たる五センチ前ほどで止めた。急に行動をキャンセルしたため大悟の腕は震えていた。同時に肩が息をしている。ブフォンっと音を響かせ割れた風はほのりの髪と着ているもの等が細かな波を打った。
「珠鞠……?」
ゆっくりと体を起こしつつ片膝をつく。珠鞠はルーインの防御技の一つだ。防御だけに特化している珠鞠は使用者の意思によって効果を変える。簡単に言えば外側からの攻撃を防ぐか中からの攻撃を防ぐかだ。多分、この場合は後者だろう。
「あっぶねぇ、最後までコマンド言うとこだったぜ………」
戦闘中だと言うのにへなへなっと腰をおろし、力なく倒れてくるほのりを受け止めると、さらに肩を上下に揺らした。その様子からするとかなりの緊張を持ったのだろう。
「薊!休んでんじゃねぇ!!」
叫びつつ前線から離脱し、大悟を守る形で腰を深く落とし槍を突き上げる樹里の顔には怒りが見られた。
「おめぇが居なくなったから残ってたガーゴイルに背中引っ掻かれたわ!!!」
「逆ギレとはガキかよ!仕方ねぇだろうが!命の危機には変えられねーだろ!!」
逆ギレに逆ギレを重ねギャーギャーわめく二人はとてもうるさかった。気絶しているほのりが聞いていたなら多分説教が飛んでくるだろう。
「………うるさいぞ、二人。せめて終わってからにしろ………」
小さなことで争いつつも僕の方に歩いてきた2人は僕の前で静止するとピタリと喧嘩(?)はやめた。
「満身創痍だな、凜」
「体力切れだ………ふぅ」
大きめなため息を吐き、セイバーの腹をなぞる。
「なんだそれ?」
「さっきセイバーに集めておいた魔力……」
樹里の質問にさらっとした答えを返すとセイバーから魔力を引き出した。その行動に二人から驚きの反応があったが気にはしなかった。当然ながら普通のドライブにはそう言う機能はない。魔力を蓄える機能はあるかもしれないが蓄えた魔力を逆に引き出すことは普通は不可能だ。
「これで後一撃分はあるか……ほのりの珠鞠が働いてる内にやらなきゃ……」
気合いを入れ魔力を体から溢れさせた。
「な、おま……」
樹里の言いたいことはわかる。先程僕が暴走状態になっているとき一番近くでこの魔力の波動を受けている筈だ。直感的に危険だと言うことを学習しているだろう。
「………理由は後で言うから今はなにも言わずに道をつくってほしい」
しかし、今は暴走することはできない。玲羅が僕を制御してくれる。危なければ強制的に魔力を奪われるだけだ。まぁ同時に僕は死ぬかもしれないが、そんなことは知らない。今はとりあえず─
「…あれを、壊す!!」
セイバーを構え深く腰を落とす。記憶の片隅にあれを破壊できる技を僕は見つけていた。しかし、それのコマンドやモーションが思い出せずにいたのだ。それでは──技は発動できない。
樹里と大悟が同意したかはわからない──が、多分、大丈夫だ。
集中するために目を瞑る。インデクスが使えればそんなことをする必要もなかったのだがどうやら脳をぶつけたショックで一時的にインデクスが開眼できなくなったらしい。
「あー、やっぱこの学校来て正解だったかもしんねぇなぁ」
「………」
大悟の真意はわからないが僕は声に出さず苦笑した。何気に、この数時間でそう言う気持ちは僕にもあった。試験に合格しているかどうかはわからないがこの学校に入学できればなと思う節はある。
「あ、つか俺また出番なくね?」
目を瞑っていたため良くわからないが、音から察するに玲奈と未夢が樹里から伝えられた通り道を作ってくれたようだ。
大悟の言葉を無視して敷石を蹴った。
閃を発動させたため間合い入れるのは一瞬だ。
「ぐっ……」
閃の反動に体が悲鳴をあげる。魔力で無理矢理動かしてる手前、魔力が減ればまた体は動かなくなる。
「……知ったことか──ッ」
痛みに耐えながらも弦を引くようにして引ききった腕を突き出す。これがラストだ。
刀身がみたことのない黄金の輝きを散らし空間からも魔力を吸い上げているのがわかった。
その技は─かの王が勝利を歌う絶技。希望を力に変える技。それの劣化版だと言うことをこの時は知るよしもなかった。
「ッ───!」
ガッ!!
硬い何かを貫いたセイバーから手を離す。直感だが爆破する気がしたからだ。しかし、限界がきているため脚が震え跳べそうにない。
「ぐ………はぁ……だるいな………」
目を瞑り残っている魔力を本来のコードへ全て流した。出来る限りの防御力は上げたい。玲羅のルーンが正常に働いている辺り多分ダメージはほとんど受けないかもしれない。だが─その自信は今の体では無かった。
刺さっているものが一際白く煌めいた。
同時にセイバーの罅に光が走る。
その光は目を閉じているにも関わらず眼球が焼けるのではないかと思うほど熱かった。
覚悟を決め眉間にシワを寄せる。もう、腕をあげることすら出来なかった。
「なーに、終った─みたいな顔してんだよ。凜」
突然、魔力を放出し鬼に勝る圧を放つ大悟が真横に現れた。どうやら、フル・スレッドを発動させているらしく、瞬間的に真横に現れたのはそれによる限界を越えた運動能力の賜物だろう。
「フル・スレッド、防御限定!!!」
声が耳に届いたその瞬間、爆破音が目の前から聞こえた。しかし、熱風が僕を襲うことは無かった。
「へへ、間に合った………うっーー」
目を開いた瞬間大悟の背中が僕の視界を支配した。そう、倒れてきやがったのだ。
「お、重たい………」
「避けるから待っててくれ~」
「おいおい、大丈夫かよ。凜」
「大丈夫?凜ー?」
「大丈夫か?橘」
大悟に押し潰されていると樹里、玲奈、未夢が心配そうな声をかけてくれた上に大悟をどこかへ飛ばしてくれた。
「……終ったよね?」
上から除いてくる三人に確認を確認をとると無言の頷きがそれぞれから返ってきた。
長いため息を吐き、ゆっくりと立ち上がる。セイバーを回収しようかと思ったが目の前に転がっておらず何故か遠くの壁に突き刺さっていたのを見て先に玲羅の元へ行くことを心に誓った。
樹里が肩を貸そうとしてきたがそれは断った。
ゆっくりと一人で歩みを進め玲羅の前へ立つことに意味がある気がしたからだ。
「終ったよ、ねーちゃん」
「見てたわ、お疲れさま………凜」
その言葉を聞いてふっと力が抜けた。両膝をつけ玲羅を抱きしめた。少しだけ涙が出そうになる。が─、背後から伝わってきた殺意とも言える何かに振り向き、玲羅を庇う形で両手を広げた。
直後、銃撃音が部屋に響く。唐突のことで動けなかった大悟たちは完全に硬直していたが、そんなことはどうでも良かった。
「ぐっ………」
普通の銃弾では傷つくことのない体を、鉛ではない何かが深く貫く。それは、貫通することなく心臓のど真ん中で留まった。
「………君のその力は邪悪で、歪んでいる………だから私が管理しよう」
その言葉が脳内に浸透すると同時に僕は、意識を失った。
バタリと倒れ力なく横たわった僕を尻目に彼女は宣言する。
「ようこそ、我わが【デジタル仮想高校】へ!諸君の入学を心から我われは嬉しく思うぞ!!」
そして、薄暗く、冷たい迷路に魔女の声が響き渡った。
どうでしたか?
個人的には最後の最後で撃たれるのが好きです。
一応誤字やらは訂正しつつ投稿してはいます。
できてなかったらコメントなりTwitterダレなりくれると助かりますm(_ _)m
それではまたの投稿でm(_ _)m




