デジリアルワールド
またまたこんばんは、誄歌です。
ほ、本編どうぞ( ゜д゜)ノ
時間が無さすぎて泣けてきた
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一時間後、僕らは家への帰路を歩いていた。約二キロある道をわずか三〇分で歩くと言うのは意外と疲れた。
「休むにしたって………今四時だから三~五時間程度か…………」
先程、大悟が言いかけていたことは簡潔に言うと今夜行われる入学イベント、つまるところの入学テストで協力しようと言うことだ。テストの内容は校内を全て使った数分毎に道が変わる大迷宮をデュエンデを倒しつつ脱出すると言うかなり大がかりな仕掛けを用いた命をかけた試験なのだ。残念ながら、戦闘に不向きな姉を僕一人で守りながらゴールを目指すのは実は自信がなかったため承諾して今ここに至る。
本来なら仮眠を取りたいところだが客人が来ているためそれは出来ない。
「なぁ~、ソファ借りて良いか?はぁ…………く、ねみぃ」
………人が心の中で考えていたことを否定するかのように大悟が言った。
「客人用の部屋がある……………。そこにベッドもあるから寝たいならそこで寝てくれ」
リビングの隣の部屋を指差す。そこにはもし、客人が泊まりに来たときのために一応用意してある部屋がある。二日に一度交代制で掃除をしているためかなり綺麗な状態だ。
………指先の延長線を目で追いドアを視界に納めると、大悟は礼を言って入っていった。
「…………はぁ、疲れた―。姉ちゃん、お風呂………」
「今沸かしてるから少し凜も寝なさい、ちゃんと起こしてあげるから」
その言葉に僕は自分の姉ながら良くできた人だなぁっと、思った。そして、
「ありがとう」。そう言って目を閉じた。
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初めての客人とあってか。
ようやく凜が寝ついた。
「別に………警戒しなくても良いのにね」
多分、私が非力だから凜はもし大悟が襲ってきたらってことを考えたのだろう。
「さて、そろそろ家事。やろうかしらね~」
凜が寝たとは言え試験は後四時間後だ。一時間後には起こさなきゃいけない。いや、大悟も起こすことを考えると、凜は後三〇~四〇分後には起こすべきか。
「んー、凜のお風呂に入る時間考えると―ってあれ?私………いつお風呂入るんだろう」
もはや、諦めるべきか。私自身の入浴のことを計算に入れ忘れていた。
「まぁ、凛と一緒に入れば良いのか」
今朝のうちに洗濯機に入れていた洗い物を取り出す。自分の分と凜の分が一緒のため低身長で非力な私には少し重い。
「はぁ、もー少し。身長があればなぁ……………………」
声に出したって身長が伸びるわけではないが何となくそう言ってしまう。
凜が寝ているソファを横切り、庭に面している窓を開ける。今日は晴れていたから洗い物を外に干したい気分なのだ。
「んー、さぁて。すぐに済ませて凜を起こさなきゃ」
渇を入れるつもりでわざとらしく声に出した。終えると同時に袖をまくり籠に手を入れる。最初に引っ張り出したのは凜の私服のシャツだ。着古した服だからそろそろ新しい服を買った方が良いかもしれない。
「凜ってあまりファッションに興味ないからなぁ…………ファッション雑誌も読んでるのに」
呟きながら一着、二着三着とお立ち台に立ちながら干していく。全ての洗い物を干し終える頃にはちょうど二〇分くらい過ぎていた。そのため、急ぎ中へ戻ろうとしたその瞬間。突然後ろに現れた背筋をゾクリとさせる寒気に私は反射的に左へ体を避ける形で逃げた。それは、殺気とも言うそれに近かった。
避けながら私の眼に写ったのは赤々とした槍の矛先。間違いない、凜や大悟と同じシリーズのドライブの持ち主だ。つまり──
「っ……えい!」
振り向き様、手に持っていた籠を彼へ投げる。平行して芝の上を転がり距離を取る。が、籠が貫き砕ける音と同時に何かが私の隣に複数突き刺さった音が聞こえたため止まる。
起き上がろうとしたが起き上がれない。目を向けると私の行くてを阻むかのように矢が刺さっており、そのうち1本は私の制服を巻き込む形で深々と突き刺さっていた。
「あぁ、やばいわ……」
逃げようにも逃げることが許されないこの状況。私は本当に困った。声に出してみるも、あまり良い方法は思い浮かばない。
「………シッ!」
勝機と見たのだろう。槍使いは槍を構え左手の中で滑らせながら突きを放ってくる。その一撃は私には止められない。いや、正確には止めるすべがない。
私は、目を閉じた。──心臓を貫くまで後一メートル。
何故、狙われているのかわからないが殺されることに対して私は特になにも感じなかった。―心臓を貫くまで後60センチ。
迫る死とはこんな感じなのかとさえ考えている自分が居た。──心臓を貫くまで後―
せめて、叫んで二次被害。凜たちを殺されるのを防ぐべきか。
そう考えつつももう、遅いと私は直感的に思い息を止めた。──だが。
ドス。
鈍い音が私の目の前から聞こえた。おまけに顔の所々が少し、熱くなった。
「けふ…………」
閉じていた目を開けるとそこには少し前に寝ついたはずの凜が居た。肝臓の辺りを深々と貫かれているが様子からするとそこまで致命傷になっていないようだ。
「凜……ありがとう」
「うん、姉ちゃんに当たってないなら良いや」
「そんな……照れるじゃない」
顔に両手を当て少し頬を赤く染めた。そんな私を見て凜は体を貫かれているにも関わらず微笑んでいる。他人の前でねーちゃん、姉ちゃん。そう呼ばない凜が珍しく呼んだこともあるかもしれない。
「あ、あのー姉貴と、凜?そんな場合じゃないっしょ?」
そう言われ、私は凜の後ろに居た大悟の存在に初めて気付いた。凜同様、寝起きのようだが大悟はコードを浮かび上がらせ赤い槍を左手一本で掴んでいる。
多分、私と凜との間に何かピンク色っぽいオーラを感じて会話に参加し始めたのだろう。
確かに、今この状況で出す雰囲気ではないかもしれない。それに、大悟が止めてくれていなければ―体を張って守ってくれた凜には申し訳ないが──槍は私にも届いていたであろうから、ここは大悟に従った方が良い。
「姉貴、コード何でしたっけ??」
このまま凜から槍を抜いて良いのか心配になったのか。大悟は本当に心配そうな顔で私を見つめる。
「大丈夫よ。ルーンだから」
「そうっすか!了解です」
簡潔に笑顔で言うと、大悟は今度は一転して声を明るくし槍使いが握っている状態にも関わらず凜から槍を引き抜いた。どうやら、人間1人がたとえ魔力を使っていたとしてもバーサーカーのコードの持ち主には関係ないようだ。
まぁ、単純な力の関係だけだとバーサーカーは規格外だから当然かもしれない。
「っ………」
槍使いから歯軋りの音が聞こえる。私からすると見えないが槍使いも槍使いで一応押し続けていたようだ。
「オラ、何、姉貴さんに手ぇ出そうとしてんだこら…………あ?」
その言葉に大地が軽く揺れた。バーサーカーとしての能力なのかはわからない。が、大悟の言葉一つ一つが地響きとなって耳に届く。それはある種の恐怖を抱かせるものだった。私に向けられていないと言うのに鳥肌が立つ。
しかし、槍使いは臆することなく。逆に腰を落とし更に押し返しす。すると、大悟の腕が僅かに押された。そこへ、また矢が何処からか放たれ、飛翔してくる。
「けほ、コマンド──閃、………」
咳き込み、口から垂れる血を手の甲で擦って凜はドライブを握って構え──
瞬間的にセイバーをロード。私と大悟へ飛翔してくる矢を全て斬り落とした。
「さんきゅ、凜」
「けほけほ、これで借りはなしだ。………助かった、ありがとう」
「おう、なんもだ」
どうやら、凜自身も一人では私を助けきれなかったことを自覚しているようだ。その辺は偉い。さすが弟だ。
「凜、こっちきて。傷、治すよ」
「うんー」
凜の反応が少しおかしい。そのため「どうしたの?」そう問いかけた。
「んー?いや、もうランサー帰っちゃったな思って」
「あ、確かに」
「矢に意識持ってかれすぎたかな~」
私の方へ歩いてくる凜の足取りは少し、重い。なんだかんだ言って傷を負った状態でのトップギアでの斬り落としは体への負荷が大きかったのだろう。
一時間後──
「ちょっと、凜。もうちょいそっちいってよ…………!せ、狭い……」
「浴槽ちっちゃくなったもんだね」
「そう言うことじゃないでしょ!?」
私と凜は風呂に入っていた。
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さらに五時間後─時刻は〇時を回る頃─
僕たちは試験の中に身を投じていた。
迷路の冷たい床に少し浸りぎみになりながら足を伸ばしていると感覚で自分の体の状態が体力面で全開したことがわかる。
「はぁ……そろそろ、行くぞ」
「えぇー、まだ傷むんだけど、俺」
「……一人で傷んでろ。僕は傷みも無くなったことだし、僕はもう行くぞ」
「……ちぇー、しゃーねぇなぁ、行くかぁ」
おっさんくさい台詞を吐きながら、ふらふらと立ち上がる大悟に手を差し出し握られると同時に引っぱり上げる。僕より─回り大きい手も今はなんだかとても頼りなかった。
─ランサーに負わされた傷は、魔力とセイバーによる治癒力の向上効果と姉のルーンのお陰で完治していたため、動きには問題がなかったが、それとはまた別の怪我を僕らは今さっき負ってしまった―当然、数分で治るわけはない―が、早く行きたい一心でぼやいた言葉に大悟は何かしらの反抗を示したようだ。まぁ、早く行けるのなら何でも良いが、弱体化している今の大悟にあまり強がられても困るのは事実、僕だけだ。何せ、その大悟を護るのは僕だけなのだから。まぁ、借りを作ったのは僕だから仕方のないと言えば仕方のないことだが。
心の中で謝りつつ、目を細める。
そして─
「迷路ってめんどいな」
「迷路って楽しいな!」
周りにすぐ襲ってこようとするような輩が居ないことを確認してから言った言葉に、大悟の言葉が被り柄にもなく少し、こける。狙ったわけではないだろうが、綺麗に僕の言葉を打ち消してくれたようだ。地味に腹が立つ。しかし、苛立ちの理由わけは大悟だけが理由ではなかった。実は僕自身、先程からピリピリしているのだから。
姉を守るため満身創痍、体を酷使するつもりだったのだが──はぐれてしまった。いや、正確には最初からバラバラにされてしまった、と言うべきか。最も、瞬間移動と言う名の姉からの強制召喚があれば、すぐにでも姉のもとへ行ける。だが、大悟が居る以上無理だ。それは姉も承知しているから今現在僕は大悟と居るわけだが─
「(本当は大悟なんて置いていきたい。誰よりも早く、姉の元へ行きたい。行きたい、行きたい、行きたい、行きたい、行きたい…………エンドレス)」
心の中で呪いのように言い続ける。しかし、弱体化した大悟を放ってはおけないのもまた事実であった。多分、関わった以上僕は借りなど無くても大悟を置いては行かなかったと思う。最も、そんなことを僕は口にもしないし、想像もしない。何故なら、今僕が大悟を護っているのは借りを返すため。ただ、それだけが事実だから。最も、当の本人は借りなんか作ったとは思っていないようだが。(知っていても、目を瞑ってくれ)
そのため、地道に進むしかないが─こうも毎分毎に道が変わってしまうとどう足掻いても、姉には近づけない。
「……困ったものだ」
もっと効率的に姉のもとへ行ける手段を考える必要がある。そう、考えながら目の前に現れたデュエンデに対して僕は剣を構えた。
試験が始まる一時間前─
『繰り返します。─一年の皆さん、体育館に集まってください。集会が始まります』
少々出遅れてしまったため時間ギリギリで学校へ着くとアナウンスが流れていた。それは、再度体育館へ集まるよう促しているもので、放送を聞いてみんな体育館に集まっているのか、周りには人っ子一人も居なかった。
「ふむ、間に合ったみたいだね」
遅れた原因を作った張本人である僕はあたかも自分は関係ないとばかりの虚勢を張りつつ言った。最も、怪我を治すため─皮膚などは一時間もかからなかったが肝臓は治すのにかなりの時間を消費した─に時間を削ったのだから文句を言われても困るが……。
「そうだなー、あぶなかったなー」
「……それうざいからやめろ、大悟」
僕の言葉にわざと棒読みで言ってくる大悟を睨む。しかし、大悟は悪びれた様子もなく頭の後ろで腕を交差させると─
「はっ、まぁ、早く行こうぜ。時間ねぇみたいだからよ」
一人、歩き出した。
「間に合ったのなら結果オーライ。よ、凜。さぁ、行くわよ」
勢いよく笑われ苛つきを覚えたが、姉に背中を(身長差で腰を)叩かれ、その苛つきを棚上げにし、僕も体育館に向けて歩き始めた。
体育館に入るとすでに大勢の生徒が集まっていた。今朝の人数を考えると多分僕らが最後だ。
『全員集まったようですので、集会を始めます。皆様、ドライブに送られるものを確認してください』
ドアを閉めると同時にアナウンスが流れた。何か、タイミング的に自分達のせいで待たせていたとしか思えなくて申し訳なくなるのは自分だけではないと思いたい─宣告通りドライブに何かが転送されてきた─が、遅れた原因が自分にあるため無理がありそうだった。
「ん?E―7?どこそこ、なにそれ」
多分、場所の指定であろう文が送られてくるが理解できない。突然、「E―7」とか言われてもわかるやつはいないと思う。
「俺は……C―5か。ど、どこだ?」
「私はF―7、多分凜の隣ね」
頭を捻っていると姉が、憶測だが隣であることを言う。そのため場所云々など、正直どうでもよくなった。しかし、あくまで憶測だ。あまり喜びすぎると隣りではなかった時のショックが大きくなるから喜ぶのは程ほどにしよう。そう考えていると、視界の端に動く何かが写った。
「左からA.B.C……Hと言うように並んでください!!」
動いた何かを追う形で振り向くと、ステージ上から多分、先輩であろう同じ制服を着た女子が叫んだ。姉の隣であることが判明すると同時に、こういう日に駆り出されると言うことは生徒会長か何かだろうか、と言う至極どうでもいい疑問が過る。
理由はわからない。いや、少し彼女に興味が湧いたからだ。彼女の本質に──一瞬。何か、僕に似たものを感じたからかもしれない。
「おい、そこのやつ並べ!」
頭の中で生徒会長っぽい人のことを考えている(主にクラス)と男子生徒に「そこのやつ」呼ばわりされる。
「ん?……って、おま──」
「ん?なんだ?俺がどうかしたか?」
僕には名前があるぞこのやろー。そう思いながら男子生徒を睨むとそこには、先程姉を突然襲い、挙げ句に僕の体を深々と刺しやがった、灰色髪の短髪で眼鏡をかけたランサーが居た。それを認識したのと同時に僕は動く。殴るためではない。隣で拳を固く握った大悟に、ここで問題を起こさせないためにだ。
「……てっめぇ!!」
大悟が拳を弓の弦を引くかのように後ろへ引っ張り腰を深く落とした。─予想通り大悟は攻撃へと移った。……気持ちはわかる。しかし、TPOは考えるべきだ。
突き出される拳を大悟よりも一瞬、早く動いたことで、掌で受け止める。
ゴォ…………!!!
体育館に重く鈍い音が響く。とても、素手で殴られたとは思えない鈍い音に嫌気がさしたが、周りから視線を感じる。その視線のほとんどは驚きに満ちた視線だが、なかには面白がっているような視線も混じっているため──あまり見られていて良い気持ちにはなれない。
「……………くっ」
足腰に力を込める。が、ダメだ。悔しいが耐えることは叶わず、後ろへ押された。と、言っても動かされたのは数十センチほどだけだ。……なんだろう、ものすごく悔しい気がしてならない。
しかし、コードのクラス的には自分の方がかなり上のため、防げると思ったのだ。が、バーサーカークラスの魔力なしの攻撃がここまで重いとは考えていなかった。
いや、予想よりも遥かに重い。大悟の一撃は僕の知っているバーサーカーの重さではなかった。
「落ち着け、大悟。せめて試験中にしてくれ……事件を起こすならな」
「あ……ちっ、すまねぇ。やられたお前がそうなら俺が行動することないよな」
「正確には姉の方だよ。先にやられかけたのは。………それに僕はやられていない」
大悟に言いつつ(最後はボソッと)姉を横目で見る。─と、その顔には特に怒りの顔はない。だから、大悟の言葉を借りるなら僕にだって彼を攻撃することはできない。
「それもそうか」
「あぁ……すまなかった。許してくれと言うのは何かおかしいかもしれないが許してほしい」
「ん?あぁ、別に構わないが先からなんの話だ??」
「……君には関係ないよ。君にはね」
「………は?」
踵を返し大悟の肩を叩く。同時に言った言葉に疑問を返す彼ランサーの言葉を僕は無視し、姉を促し列に着いた。
『……以上を持ちまして年間スケジュールの説明を終わらさしていただきます。続いて──』
名前のわからない教師がステージの袖の方でこの高校についての説明と年間スケジュールをあまり感情の入っていない声で読み終える─高校の説明と年間スケジュールに関しては特に変更があったわけではなかったためほとんど聞いていなかった─と壇上に僕たちと同じ柄の制服を着た小柄で、何より黒紅色の髪がなんとも目立つ女子が立った。
「私から今夜行う試験の説明をさせていただきます。私は、この学校の理事長であり校長でもあるものです。では──」
「まさか、あれで教師なのか!?」
「ちょ、嘘だろ?!」
「え、校長ちっさ!」
「てか、なんで制服??」
「あ、理事長かーわーいーいー♡」
気持ちはわかるが口々に言うとうるさい(最後の言葉に対してはもはやどう接して良いのかわからない)。そう思いながら耳を塞いだ。この状況を打破したいが、僕もどこから突っ込んで良いか、もはや自信がなかった。
「─名前を言わないとはね。なめられたものだわ」
どこかで、頭の片隅で僕が考えていたことを口にしてくれる。そう、そこだ。一番大事なのはそれだ。
「…………名前を言わないってことは、入学試験を合格しなきゃ、名前を言う価値もないってことだろ?…………だって、今夜行われる試験は命を賭けた試験なんだから………ね?」
瞬間的に脳をフル回転させ、みんなを黙らせるつもりで。静かにだが、はっきりと─体育館全体に聞こえるように──発した。みんなに、その事を思い出させるために。
「──ありがとう。橘凜くん。そうまだあなた方は入学したわけではないのよ、アナウンスで1年生何て言われてたからって騒がずによく聞きなさい」
「…………ん?」
予想はあっていたようだが別の疑問が生まれる。しかし、それはすぐに解消された。
「まず、実は今朝あるテストを行ったことを報告するわ。それには7人だけが反応できるテストよ。多分、心当たりがある人もいるんじゃない?当然です、それは7体の最低ランクでなおかつとある手法でほとんどのコード保持者の索敵に引っ掛からないだけの微弱な魔力しか放出しないのだから。その上人は普通に襲うのだからまぁ面倒なものよね」
そのテストを行った本人であろうにまるで他人事のように言う理事長の姿に先程の自分が重なる。が、1つだけ違う。それは―命の有無だ。
理事長の話を聞いて1つ思い出した。登校する際、相当弱い人面犬を、僕は少女を助ける形で倒していたことを。
多分、それだ。その結果で僕の名前を認知したのだろう。
「じゃ、今からその7名に立ち上がってもらいましょうか……と、言っても強制的にだけどね……?」
その言葉に僕は背筋に寒気を覚えた。何故かはわからない。けどこれだけは言える。
「やめろ──玲羅に、手を出すな!!」
目を見開き僕は静かに叫ぶ。そして、ロードを終えたセイバーを掴み周囲のことを考えずに構えた。その光景に誰もが驚きを隠せないことは言うまでもない。僕の行動に対して抑制するつもりなのか武器を構える教師や生徒も居た。しかし─それを読んでいたかのように理事長は微笑んだ。それは僕に言わせれば悪魔の微笑みにしか見えなかった。
「……天の鎖…………目標は凜くん」
いや、それは本当に──
視界に複数箇所、同時に世界の裂け目ノイズが写る。インデクスに頼らずとも視えたと言うのに、僕は動けなかった。動くことが許されなかった。動けば玲羅に当たる、鎖を斬ろうとすれば確実に死ぬ、そう脳裏によぎったために─僕は拘束されることを選んだ。
「……………」
首、両腕、両足……体にある関節全てに鎖が絡み付く。コードを浮かび上がらせ対抗したが、遅れていれば骨を数本折られただろう。
「(……苦しい………)」
「ちょ、凜!?」
「こんな風に、されたくなければささっと立ってくれることを願うわ!」
姉の驚きに満ちた声と理事長の愉快そうな声が同時に聞こえる。
「ぅ………」
あまりの苦しさに唸る。更に魔力を循環させ鎖を千切ろうと試みる。が、千切れる気配はない。かと言って理事長が緩めてくれる気配もない。
「……かはっ(………どうしたものかね)」
「あ、少し余談なのだけれどー今年の一年生はねー、すごいのよー?なんとね!セブンコードのメンバーがね、勢揃いしてるの~!それにセイバーコード保持者が六人も!まぁそのうち二人はセカンドコードがセイバーなだけなんだけど!」
何が楽しいのか。苦しさのあまりに咳き込んでいる僕を尻目に、拘束する鎖をさらにきつくしながら愉快そうに余談を始める。なんだろう、理事長の目が逝っている気がする。声に出すのは躊躇われるが(本心から思っているわけではない)確実に何かしらの快感を得ているようにしか見えなかった。そう、俗に言う『興奮』、してるようにしか見えない。
「おりゃぁぁぁああああああああ!!」
その状況に至極うんざりしていると大悟が、咆哮を放ちドライブにコードを承認させ世界にアクセスしノイズを撒き散らしながら、バーサーカーの武器。手甲を右腕だけロードし、そのままこちらへ突っ込んできた。
「待て大悟……怖いぞ、それ」
「ふん!」
高密度な魔力を放出しながら迫り来るその姿は鬼にしか見えなかった。本当に怖い。
当たれば確実に骨が折れる─そう考えたのも束の間。大悟は僕に当てることなく鎖だけを粉砕した。技量としてはすごい。が──
「ぁ―意識が──」
その言葉に僕は冷たい目で大悟を見た。
「………全然使い物にならないじゃん」
「少し力んじまったんだよ…………。フル・スレッド、使うんじゃなかったぜ」
限界突破か。
確か、全魔力を放出を強制的に引き出し最強で最大火力の攻撃。と、どんな技でも防ぐことができる最強の防御のどちらにもなる技だ。生で見たのは初めてだったため少し感動を覚えたが、その反動は続けて戦闘は不可能と言う形ですぐに現れる。と、文献で読んだことがあった気もしなくないことを思い出した。現に大悟がこうなっている所、多分事実なのだろう。
「そんなんで試験突破できんのかよ」
なぜ僕が冷や汗をかかなくてはいけないんだよ。と思いつつ理事長を睨む。追撃に備えて。今度は姉だけではなく大悟も守れるように。借りは返さないと気がすまないたちだからな。と、自分に言い聞かせて。
「あーぁー、よくも私の楽しみを壊してくれたな~?………ほふってやる」
目つきが変わった。その事を認識するのと同じくして周りに先程僕の体を締め付けた鎖の矛先がざっと一〇〇ほど出現する。
「チ………」
剣を構える。一つだけ言えることはこの状況での悪目立ちは本当は避けたいが、そんなことを考えてる暇はないと言うことと、反撃するにしても周りには理事長の味方はいえど自分の味方は居ないと言うことだ。(大悟は使えないし、姉は戦闘力皆無のため)
もちろん、僕はそこまで弱いわけではない。理事長にだって勝つ自信はあるが周りの教師陣と同時に相手にするとしたら勝機は薄い。何故なら、鎖に対して絶対の対抗を保持する剣を僕はロード可能だからだ。そう思いながら剣を床と水平にして構えると袖に控えていた先程の教師が動いた。そして―
「理事長………」
「コホン……では、改めて今年度のセブンコードのメンバーを発表したいと思ったのだけど………、ごめんなさいそう言えば試験に受からなければその子達が本校に所属するかわからないものね。発表は試験後にすることにするわ」
戦闘が起こることはなかった。
男子教諭が耳元で何か言うと理事長は一度咳払いをし何事もなかったかのように話始める。その時、理事長の頬が少し朱に染まっていたのは─体育館にいる全員が共有出来た記憶であろう。
「結構重大なこと忘れてたな理事長」
話を聞いて素直に思ったことを言う。と言うか、中学生の時に【セブンコード】と言う言葉はほとんどの生徒が習っているとは思うが良く理解してないものもいるのではないだろうか。そもそもセブンコードとは二〇年に一回突発的に現れる原初の七つコード(そこから転じてセブンコード)のことで、それを保有する人間のことの総称を指す。それに保有している本人たちでさえ何かをきっかけで覚醒しなければ気づけないものだ。そんなものを第三者である人間がどうこう言えるわけがない。何を根拠に、先程からセブンコードが勢揃いしているとかセブンコードの発表は試験後でなどと言っているのだろうか。そもそも、世界の救世主たるセブンコード保有者は誰かに選ばれるのではなく、運命によって定められている。
「あ、でも、セイバーの発表はするわ。力に自信ない人は彼らに付いていくことね、じゃあ―」
「ん?」
理事長の話を聞けば聞くほど疑問が湧く。確かにこの試験は命を懸けるとは聞いている。しかし、わざわざ命を懸けていると言うのに生存率を、それも自分の手ではなく相手に頼る形で上げさせると言うのはどういう了見なのだろうか。
「まず、そこにいる橘凜君。彼はかなり強いセイバーよ、それにセブンコードのリーダー」
「……………………はぁ!?ちょっと待ってくれ、僕はそんなの聞いてないし、知らないぞ!」
流石の僕も今回ばかりは声を荒らげた。何故なら、二〇年に一度生まれる世界の救世主のリーダーだと勝手に決められてしまったのだから。と、言うかこんなやつが?みたいな周りからの反響(視線)がすごい。
「凜君は強いから要マークね。そらから―」
僕を一別すると、理事長はさらに名前をあげていく。そんな中、一一人だけ、ずっと僕を見つめている奴等が居た。その少年、少女等の視線は様々であったが、僕は気づけなかった。
「ちょ、無視すんな!」
何故なら、理事長が言ったことに僕の意識の九割近くを持っていかれたために──
どうでしたか?
一応誤字やらは訂正しつつ投稿してはいます
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