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邪神生活に飽きたので舐めプ始めてみる  作者: らたな
第1章 学園生活も楽しそう
9/24

八話

ブクマありがとうございます!!!


嬉しさの余り叫びました

烏兎は男に気づかれないようゆっくりと移動し、男を中心として半径五メートル以内の位置をキープした。


「あの男…やはり観光しにきたわけではなさそうだ」


烏兎がそう言うには訳がある。

男が歩いて行く道には決まってあの紋章がどこかにあったからだ。

そして時折男は紋章の位置を確認する素振りを見せる。


ふらふらと当てもなく歩いているように見せかけているものの、時折何かを値踏みするような視線を周囲に送る男。

注意深く観察すればするほど男の怪しさが増す。


「そこのお兄さん、焼きイカはいかが?美味しいよ!」


そんな男に客引きが声をかける。

見た所まだ十代の若い可愛らしい女だ。


「……いや、いらないな」


男が返事をする。

だが烏兎は見逃さなかった。


男の目が獲物を見定めた猛獣のような光を宿したことに。


「…!!」


それは瞬時に起こった。


男が音も立てずにハンカチのようなもので客引きの女の口を塞ぐ。

そして一歩動く。


まるで)()()()()()()ように。


男の右手の刺青が僅かに青く発光する。


遠い隣人ネイバームーン


それは力ある文言。


「…っなっ?!」


烏兎が動こうとするよりも速く男と客引きの女の姿は跡形もなく消えた。


烏兎は男が先程までいた場所に駆けつける。

そして地面を見て。


「なるほどな…」


そこには紋章が刻まれていた。


「転移か」







転移。

それはギフトの中でも多種多様。

例えば自身を素粒子まで分解して移動し、また自身を再構成するというギフトも転移に分類されるし、次元を歪めて行きたい場所へと通じる扉を生み出すギフトも転移能力と呼ばれる。

一度移動してしまえばその場に移動の痕跡は残らず、犯罪に利用されれば厄介なことこの上ないだろう。


だが。


それは烏兎には通じなかった。


「転移能力は確かに厄介だが…見失った時のために保険を掛けておいてよかった」


まさかいきなり転移して人攫いをするとは思わなかったが、とひとりごちる烏兎。


「極小の三角錐を奴の服に付けた。奴の転移能力が自分の認知したものしか移動を許さないタイプだと打つ手はなかったが…どうやら成功のようだな」


烏兎は自らの能力で生み出した三角錐の位置が分かる。

故にその三角錐ごと転移した男の位置も把握していた。


「我の三角錐は探知しているぞっ!」


脚に力を込めて跳躍。

建物の壁を蹴って屋根の上まで駆け上がる。


突然建物を登り出した烏兎を見て周囲がざわつくが知ったことではない。


「ははは!鬼ごっこの開始だ!」


烏兎は男がいると思わしき場所に向かって走り出した。



***



ーーーピチョン。



水滴が地面に落ちて撥ねる音がする。


「…ん、う…」


攫われた客引きの女が目を覚ます。

どうやら口に当てられたハンカチに薬品が染み込まされており、眠らされていたようだ。


「こ、こは….?」


辺りを見回す女。

そこは暗い倉庫のような部屋。

そして女は金属製の檻の中に入れられていた。

檻の中には女と同世代くらいの女性達も一緒に入れられており、その誰もが暗い顔をしていた。


女性達の啜り泣く声が聞こえる。


「…目が覚めたか」


女の背後から声が聞こえる。


「!」


女が振り返るとそこには女はを攫った男が椅子に座っていた。

男は首尾よく事を進められたことに気を良くしているのか、口が軽くなっているようだった。



「何で自分が攫われたのかとか思ってるかもしれねぇが…とくに理由はない。運が悪かったと思って諦めろ。…うちのボスが生きている人間を所望していてな、何でも実験台が欲しいんだとさ」


まあまず生きては帰ってこれないぜ、とうすく口の端を歪めて呟く男。


「ボスって誰だ?」


能天気な声が男にかかる。

余りにもその声はよく響いた。


「あぁ…ッ!?何者だ!」


男が振り返った先には。


「お前を倒す者だ!!」


誰よりもトラブルを愛する男、烏兎がいた。


「ふん!」


先手必勝。

槍状にした三角錐を投げる烏兎。

軌道は完璧、男の腹にむけて一直線。


「…ッ!」


飛来する槍を避けられないと、一歩後ずさる男。

男は慌てて足を滑らせよろめく。

だがそれは演技。

後退した先の床には紋章。

瞬時に男の姿が搔き消える。


転移。


「死ねェッ!!」


烏兎の背後から男がいつの間にか持っていた無骨なナイフを振り下ろす。


だが烏兎も負けてはいない。

即座に三角錐を盾にして防御する。


ナイフを防がれた男は即座に距離を取る。

そして烏兎の顔を見て悪態をついた。


「ちっ…てめぇ、あの時のぶつかったクソガキか。次は殺すって言ったよな?」


「はっ。やれるもんならやってみろ」


「なめるな、ガキがッ!!」


右へ一歩。そこには紋章。

この部屋は男にとってはまさにホーム。

獲物を狩るための蜘蛛の巣。


「背後とるばっかじゃ芸がないぞ!」


背後に男が転移するや否や直刀型の三角錐で斬りかかる烏兎。


だが男は更に転移。


すぐさま背後を振り向く烏兎。

しかし男の姿は無い。


「ーーー上!」


見上げた先には男の姿。

だがさらに男は天井を蹴る。


「惜しい、下だ」


烏兎の懐で声がする。

いつの間にか盾の三角錐を抜けられている。

男のナイフが迫る。


「捕えたぞ」


「何ッ!?」


男が驚きの声を上げる。

ナイフがそれを持つ腕ごと動かなくなったからだ。


既に極小の三角錐は展開済み。

烏兎の奥の手、男の動きが止まる。


「うらぁ!!」


回転回し蹴りが男の側頭部に炸裂し、男を吹き飛ばす。

だが手応えが無い。

どうやら蹴りが当たる前に後ろに飛んだようだ。


静かに体勢を整え警戒する烏兎。

空気が変わったのを感じたのだ。


「…まさか、ガキにここまでいいようにやられるとはな。舐めていた…というよりかはお前がそこそこ強いんだろうな」


ゆらりと起き上がる男。

蹴り飛ばされたダメージはやはり無いようだ。


「お前、危険だ。殺す」


先程とは比べ物にならない速度で動き出す男。

紋章を踏み烏兎の背後へ転移。

烏兎は背中を三角錐で守ろうとするも男は紋章を踏み更に転移して三角錐の内側へ。


「ぐっ」


軽く斬られる烏兎。


男はさらに紋章を踏んで烏兎の右へ転移。

斬りつける。


またさらに左へ転移。

斬りつける。


転移。

斬りつける。


転移。斬りつける。

転移。斬りつける。

転移。斬りつける。

転移、転移転移転移転移転移転移転移転移転移転移転移転移転移転移転移転移転移転移転移転移転移転移転移転移転移転移転移転移転移転移転移転移転移転移転移転移転移転移転移転移転移転移。


「全く、忙しない奴だ。狙いがつけられないぞ。」


全身を斬られ血塗れになりながらとそう言って不敵に笑う烏兎。

飛び散る血に女達が悲鳴を上げる。

どうやら血は流しているものの致命傷は避けているようだ。


「だが」


声とともに現れる百を超える三角錐。

烏兎の目が爛々と輝いた。


「捉えられないなら全部潰すまでだ」


その全てが紋章に突き刺さった。


「ーーーッ!」


烏兎の目の前に転移し斬りつけたが、既に紋章は破壊され転移はもう出来ない。

烏兎の想像以上の実力への驚愕を胸にしながらも斬りかかる男。


転移するための紋章を失っても男の戦意はまだ萎えていなかった。

盾型の三角錐で防ぐ烏兎。


だがそれは男の望むところだった。


右手を浮遊する三角錐の盾に叩きつける男。

その手の刺青が青く光る。


三角錐の内側と外側に紋章が刻まれる。


「なっ!」


「くたばれガキ!」


男のナイフを持った左手だけが転移して烏兎を斬りつけようとする。


だが冷静に対処。


「はぁッ!!」


左手を直刀で斬りとばす。

切り飛ばされた左手が檻の中に入り込み女達が怯えた声を上げる。


「ぐぅっ…っ…クソガキめ…」


腕を飛ばされた男は服を噛んで呻き声を上げる。


「まだ諦めないのか?何なら見逃してやるから逃げてもいいぞ?」


ニヤニヤ笑う烏兎。

男は舌打ちをする。


「クソが…俺が転移したらさっきみたいに追って来るんだろうがよ…大体逃げ切れてもボスに殺されるんだよ」


「そのボスの情報を吐いたら命だけは助けてやるぞ?」


血塗れながらもまだまだ余裕な烏兎とは対照的に荒い息を吐く男。


「クク…悪いが生まれつき諦めが悪いんでね。俺がタダで片手をやると思ってんのか…?道連れにはなってもらうぞ」


男がそう言った瞬間。


烏兎の左手がゴトリと地面に落ちた。







遠い隣人ネイバームーンて対人には割と強いですけどエネミーにはあんまり強くないんですよね…やりようはいくらかあるけど。

その辺の対エネミーのギフトの格付けとかもおいおい那由多ちゃんに説明してもらう予定です

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