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邪神生活に飽きたので舐めプ始めてみる  作者: らたな
第1章 学園生活も楽しそう
8/24

七話

観光メインです

ちょっと話が動き出す?かも?


短くてすいません

「うわ…すごい人の数だな…!」


烏兎は沙由里に書き置きを残した後、町に繰り出していた。


ここはライプニッツ通り。

学園都市ヴァナディースの中でも一、二を争う有名な観光名所でもある。

そこに訪れる人々の数は推して知るべし、身を以て体感する烏兎。


見渡す限り、人、人、人。

道の脇には出店が立ち並び客引きをしている。

見上げれば白いタンクトップを着た中年が両手と片足を上げて立っているような独特な看板が見える。

活気に満ち溢れ、人々の声が鳴り響く、正に人間の営みの縮図であった。


烏兎が物珍しさに辺りを見回していると前方より地味な服装をした男が走って来た。

だが烏兎は頭上の看板に気を取られて気付かない。


上を向いて歩いていたので男の進行方向にふらっと身を入れる。

男は目前で突然烏兎が入ってきたことで避けようとするも避けきれない。


「む、すまん」


案の定ぶつかり、烏兎は自分の不注意を謝った。

ぶつかった衝撃で尻餅をついていた男を起き上がらせようと手をやる。


「……」


男はその手を取らず無言で立ち上がる。

そして手で服をはたき埃を落とす。


(む、こいつ手に刺青をしているのか)


その時に男の右手の手の甲に三日月の様な形の刺青が見える。


「…次は殺すぞ、クソガキ」


男はそう言い、走り去っていった。


「…なんだあいつ。むかつくな」


不敬だぞ、とイライラする烏兎。

男の顔は覚えた、冴えない顔だったが今度会ったら冴えない顔を醜い歪んだ顔に変えてやろう、と決意した。


「お、あれ美味そう」


だがその不快な気分もすぐに吹き飛んだ。


鼻腔をつく食欲をそそられる香り。

烏兎の腹が朝飯を食べたにもかかわらずぎゅうっと鳴る。


視線の先にあったのは不可思議焼きと書かれた看板を掲げる出店。

店主は禿頭にハチマキを巻いた、黒光りする肌に煌く白い歯が眩しいボディービルダーのような男だった。

どうやら一人で切り盛りしているようだ。

店は盛況なようで長蛇の列。


(これは期待できそうだ)


その末尾に烏兎も並ぶ。


そして店主が不可思議焼きを作っているのを見て思う。

普通のたこ焼きじゃねーか、と。







「店主、不可思議焼き八個入りを二つくれ」


「あいよぉ!毎度あり!」


手際よくたこ焼きを作り始める店主。


「…あー気になったんだが何で不可思議焼きって言うんだ?我には…その…たこ焼きに見えるんだが…」


「お?ひょっとして兄ちゃん最近この都市に来たのかい?」


「あ、あぁ。つい一ヶ月ほど前だな」


そう言うとどこか納得したような顔で店主が笑った。


「わはは!なるほどな!ここに来て一ヶ月じゃあ知らねぇのも無理はねぇ!実はこの都市をお作りになった不可思議様は大のたこ焼き好きでなぁ!それでこの都市ではいつしかたこ焼きじゃなくて不可思議焼きって呼ばれるようになったのさ!」


「なるほど…そんな好きだったのかたこ焼き」


「わはは!不可思議様のお陰で俺らも商売繁盛だ!」


これおまけな!お代はいいからもっていきな!、と注文した数より一パック多く不可思議焼きをくれる店主。


「いいのか?」


「俺はこの都市に来て日が浅い奴にはサービスするって決めてんだ!この都市が好きになってもらいてえからな!」


「…ありがとう」


ニカッ、と白い歯を見せて笑う店主は烏兎の目にカッコ良く映った。



不可思議焼きの店を離れてから烏兎は不可思議焼きを立ち食いすることにした。

行儀は悪いが座れるほどの場所もない。

出来立ての不可思議焼きを冷めてから食べるのも嫌だった。


パクっと不可思議焼きを一つ口に入れる。


「〜〜〜〜〜っ!??」


口の中で不可思議焼きがとろけ、その旨味を爆発させる。

熱々の衣に、プリップリのタコ、そしてシャキッとした食感がわずかに残るキャベツ。ソースの芳醇な香り。紅ショウガの酸味があることによって味が引き締まり、全ての味がまとまって一つの料理を形成する。

もはやたこ焼きのレベルではなかった。


「店主、十分不可思議だぞ…たこ焼きというレベルではない美味さだ」


ついつい不可思議焼きの美味しさに頰が緩む。

沙由里へのお土産に買っておいてよかった、と思う烏兎。

実はお土産用にするだめに二パック買ったのだ。

冷めてはしまうもののこの美味さならば温め直しても十分美味しいだろう。

おまけでもらったものは那由多におすそわけでもしようと考える。


いい買い物をして機嫌がよくなる烏兎。

次の不可思議焼きを口に頬張りながら店を冷やかしながら見て回っていく。


何となく地面を見て歩く烏兎。

するとあることに気づいた。


「この紋章、さっきどこかで見たな?」


道の端の地面に彫られた奇妙な紋章。

それを烏兎が見つけたのは全くの偶然だった。

目を瞑った人の横顔と三日月が合体したかのようなデザイン。

だがそれは精巧に彫られており、一ミリの歪みもない。

奇妙なのはそれが彫られた痕跡が真新しいことである。

まるでつい最近彫られたような痕だった。


それが彫られていた地面は石のタイルで出来ており、とても古い物のようだ。

すくなくともこの紋章が彫られたのは石のタイルが作られた時ではないだろう。


「どこだったか…」


記憶を手繰り寄せようとする烏兎。

だが思い出せない。


「うーむ…」


ふと顔を上げる。

どこからか視線を感じたからだ。

それも普通の視線ではない、粘ついた質量を持った視線。


視線を感じる方向にちらっと目を向けると一人の男が踵を返すのを視界の端に捉えた。


「あの男は…」


記憶のピースが繋がり始める。

こちらを見ていた男は先程ぶつかり烏兎を罵った無礼な男だった。

烏兎が覚えた顔だったので間違いない。

そしてその男の手の甲に足元の紋章と似たような刺青があったことを思い出す。


その男がなぜこちらを見ているのか。

彼が先程進んでいった方向と全く逆方向のここになぜ戻ってきているのか。


「…ふふふ、俄然面白くなってきたぞ」


さらなる刺激の予兆を感じ笑みを深める烏兎。

あらゆる全てがこの男にとっては人生において退屈を紛らわす極上のスパイス。


「尾行してみるか」


そして烏兎はゆっくりと男がいた方向へ歩き出すのだった。





ライプニッツ通りは道頓堀みたいなイメージです。

ライプニッツは別に数学者の名前じゃないです。

微分?うっ頭が痛い

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