一話
改行がよくわからない…
あとテンプレ…のつもりです
西暦2XXX年、世界は未曾有の危機に陥った。
異次元より来たり、人類を滅ぼさんとする異形達の手によって。
その姿はまさに怪物、人とカエルをたして二で割ったような外見をするようなものもいれば、イソギンチャクの触手に口が生えたようなものもいた。
人々はその存在を敵意をもってエネミーと呼んだ。
はじめは誰もが人類の勝利を信じて疑わなかった。
近代科学が生み出した兵器が、あのような異形と言えども生物に負けるはずがないだろうと。
しかしあらゆる兵器はエネミーには大した有効打にはならず、人類は次第に圧され、その数を減らしていった。
だが、そこに1人の女性が立ち上がる。
後に人類の救世主と呼ばれることになる女性、その名は天木 不可思議といった。
彼女はおとぎ話に出てくるかなような不思議な力が使えた。
そしてその力はエネミーの天敵たり得る力を秘めたものであった。
天木がエネミーと戦っていると、次第に不思議な力を持つ人間が増えていった。
エネミーとの戦争は熾烈を極めた。
多くの犠牲を払ったが、やがて人類はエネミーとの戦線を押し返すことに成功した。
人々はその不思議な力を神からの救いとして、ギフトと呼んだ。
***
「ふっ…ふっ…」
人気がない大通りを1人の少女が走っていた。
美しい真紅の長髪が風に靡く。
少女の服装は学生の制服のような、それでいて呪術的な印象の見受けられるものだった。
美しい少女だったが、彼女の右手に一振りの長剣が握られているのが異様な雰囲気を醸し出していた。
「あーもう!なんで私しかいないのよ!学園は何してんの!?A級エネミーよ!?ふざけんな!?」
愚痴を垂れながらも少女が向かう先には、無残にも崩れ落ちた建築物の残骸と、十メートルはあるかという大きさの、異形。
その姿は巨大な狼の頭を持ち、瞳はカメレオン、上半身は糞鳶の翼と脚を、下半身はナマズにも似た魚の姿をしていた。
A級エネミー、型式・獣。
エネミーの姿は生物が最低でも二種以上混じった形をしている。
そして基本的に混じっているものの数が多ければ多いほど強い。
二種混じりをC級、三種をB級、四種をA級、そして五種以上混じっているものをS級としている。
四種混じりとなれば二種混じりとの力の差は比べるまでもなく協力、その力は単体で一都市を陥落させることも可能である。
「住民を避難させるとか言って防衛騎士はどっかいっちゃうし!避難させるのはいいけどアイツほっといたら意味ないでしょーがぁぁぁぁ!」
咆哮と同時に大きく踏み込む。目にも留まらぬ速さへと加速。少女はエネミーへと斬りかかる。
斬撃。
だが少女の長剣はエネミーの外皮に傷一つつけてはいなかった。
「まだまだぁ!」
休む間も無く剣戟を浴びせかける。
この場にはギフトを持った人間は彼女1人だけ。
都市を護る防衛騎士もここにはいない。
ここで諦めれば多くの人がこの化物に命を奪われることになるだろう。
「GRRRRRRRRRRRUUUAAAAAA!!!」
エネミーの顎門が少女に食らいつこうと迫る。
それを舞うようにして避けた彼女は長剣にギフトを持つものだけが持つ力を込めた。
それは即ちギフトの現れ。
「極炎鳥…ッッ!!」
彼女は手に持つ長剣を振り上げた。
その瞬間、長剣から爆炎か吹き上げる。
そして、その炎は大きな鳥のような形をしてエネミーのもとへと飛んでいった。
衝撃。
炎の鳥はエネミーとぶつかり、その熱エネルギーを余すところなく放った。
「GRRRRRRRRRRRUUUAAAAAA!!!」
エネミーが咆哮を放つ。
その身には僅かに焦げ目が入っていたものの、至って戦意は衰えていなかった。
「嘘でしょ!?硬い硬いとは思ってたけど戦術級の威力の私の極炎鳥でも焦げ目しかつかないなんてどんな装甲よ!!?」
渾身の一撃をものともされなかったことに少女は驚く。
「仕方ない!もう一度ーーーッ!!!」
再び手に持つ剣に炎が宿る。
極彩色の炎、それに秘められた熱量は容易く鉄をとかすほど。
だがそれはエネミーの注意を引くだけだった。
「GRRRRRRRRRRRUUUAAAAAA!!!」
エネミーのカメレオンにも似た長い舌が神速で伸びる。
少女は余りの速さに避けられない。
「…くっ!!」
巨体から放たれた一撃に秘められた運動エネルギーは絶大。
少女は受け身を取る暇もなく吹き飛ばされ、瓦礫に身を擦らせてもその勢いは止まず、未だ無事であったコンビニの窓をぶち破って商品を盛大に撒き散らしながらようやく止まった。
「…っがっはッ…!」
吐血。内臓を痛めたようだ。
全身が痛む。目が霞む。
「GRRRRRRRRRRRRRRRRR!!」
遠くにエネミーの咆哮が聞こえる。
だがどうやら自分で吹き飛ばしておいて少女が何処に行ったかわかっていないようだった。
「うぅ……ぅぁ…」
(……時間…稼げたかな…)
戦意はとうに失われていた。あるのは死への恐怖とエネミーへの恐怖。
だが運命は残酷、少女は鳥が羽ばたくような音を聞いた。
「GRRRRRRRRRRRRRRRRR!!!!!!!」
エネミーがその翼をはためかせ、周囲の建物を壊しながら空へ飛び立とうとしていた。
そしてその身が空中へと浮かぶ。
「あれで…飛ぶ、とか…反則でしょ…」
エネミーは標的を変えようとしているのだ、と少女は悟った。
未だ避難が完了していない地区の方にこの化物がいけば、いかに防衛騎士が迅速に駆けつけようとも多くの命が失われてしまうだろう。
少女の目に戦意が灯る。
負けるわけにはいかない。
脳裏によぎったのはいつもの穏やかな日々。
これ以上大切なものを奪われたくない。
「が、ああああぁぁぁぁ!!」
激痛を訴える身体に鞭打ち、倒壊したコンビニを抜け出す。
倒すべきエネミーを睨みつけようと上空を見上げる。
「GRRRRRRRRRRRRRRRRR!!!!!」
そこには。
少女の方を向いた、どこか嗜虐的な表情をしたエネミーの顔。
エネミーの喉に見える部分が膨らむ。
少女は自分が誘い出されたことに気付いた。
「これは…やっ…ばっ…」
エネミーの喉が膨らむとき、その周りが異様に膨らみ、扇状に開いた。
まるでエリマキトカゲのように。
それは即ち、五種目。
「S…級…!!」
エネミーの口から少女が放った以上の炎がはなたれる。
まさに極炎。
まさに終焉。
少女は自分の最期を悟り、思わず目を瞑り、身を硬くした。
だが。
「……………?」
いつまでたってもその炎は届いてこない。
少女が恐る恐る目を開けた、その先には1人の少年の背中。
少年の体からは赤い燐光が立ち昇っていた。
そして三角形の紅く透き通った障壁のようなものが少年の前に浮いている。
「嘘…あの攻撃を防いだっていうの?」
その言葉に少年が振り返らずに言う。
「はぁ、観光しようと思った矢先にこれか」
「はっ?え、どういうこと?」
その言葉を待たずして少年は赤い燐光を振りまきながらエネミーの方へ駆け出す。
「あっ!ちょっと!待ちなさいよおおおおお!っ痛!」
無視される少女。
そして少年は再び手に紅い三角錐のようなものを生み出す。
「はるか偉大なる三角錐」
その三角錐は次第にその大きさを増し、やがて細長い槍のような形状をとる。
そして少年は、
「どっせいあああぁぁぁぁ!」
それを振りかぶって投げた。
人が投げたとは思えない速度で飛んでいった三角錐はエネミーのちょうど人間で言えば土手っ腹に当たり、そしてエネミーを貫通した。
「GRRRRRRRRRRRRRRRRR!??!?」
エネミーは腹を貫かれた衝撃からか、飛行体勢を維持できずに地面へと落ち始める。
「えええええええ!?ぁ痛っ」
驚愕に声をあげる少女。
上から降ってくる異形を地上から見上げていた少年は、いつの間にか右手に持っていた片刃の直刀に似た三角錐を無造作に振るった。
瞬間。
少女の攻撃を物ともしなかったエネミーの巨体は真っ二つに割かれた。
そしてエネミーの身体は地面に落ちる前に赤い光の粒子に変わっていく。
それはエネミーの死を意味する現象。
「えー……嘘でしょ……」
私あんなに苦労したのに、と少女が呟いた言葉は、光の粒子の中に消えていった。
***
「で、どういうことか説明してくれるわよね?」
腰に手を当てて仁王立ちする少女の前には正座する少年。
「あー……何を説明すればいいのだ?」
少年は首を傾げる。
そんな仕草にイラっときた少女は早口で質問をまくし立てた。
「とりあえずアンタ何者よ!?S級を瞬殺するって何よ!?私の苦労返せ!」
「むむっ。通りすがりの一般市民だが?」
汗をダラダラかきながら明後日の方向を向いて話す少年。
「んなわけあるかーー!!?って痛っっ!」
「怪我をしているようなので、救急車を呼んでおいた。暫くしたらくると思うからそこで安静にしておいてくれ!」
少女の隙に、少年は今だとばかりに言葉をまくし立てる。
言うや否や、少年は全力で走り出す。
「あっちょっと待ちなさいよ!っ痛!」
身体の痛みに呻いた隙にあっという間に小さくなっていく少年の姿。
怪我人を置いていくその所業、外道と言われても仕方はあるまい。
なんて酷い奴なのよ、と少女は呟く。
「…今度会ったら、とっちめてやるんだから」
少女はそう言い、長い溜め息を吐いた。
_:(´ཀ`」 ∠):