ex教師陣3
アッー!
「話は終わりましたか?」
「ええ。もう二度とこんなことはしませんと言わせましたし、この件についてはもう大丈夫じゃないかしら」
王立学院のトップにいるカーモリア学院長に対してもケントールの言動は変わらない。
そもそも二人の付き合いは長いので、いちいち話し方にケチをつけるようなことはしない。
苦笑の一つも浮かべながら先ほどのセリフを反芻する。
「言わせました」とはどういうことなのか。
「どういったお話をしたのか伺っても?」
肘を机に付け、両手でアゴを支えたままカーモリアが尋ねる。
「普通のお話ですよ。なんの変哲もありません。ただし、ちょっぴりボディタッチが多めだったかしら。うふふ」
だらしなくケントールの目尻が下がり、大きな口からはよだれが溢れ出ていた。
なんとなく予想はつく。なにしろ長い付き合いだ。だからこれは聞かない方がいいのではないだろうかとカーモリアは思う。
しかし教育者としての義務もある。聞いておくべきなのだろう。生徒たちを誤った道に進ませないためにも。
「だってお尻のお肉をがっちり捕まえたら全身が硬直するんですもの。そうしたら穴に指を突っ込んでもいいのかしら?って思うじゃないですか。ええ、もちろんズボンははいたままですよ。だって他にもたくさんの人たちがいる場所でのことですから。でもあたしぐらいになるとズボンや下着の一枚や二枚は障害にならないの。狙いを定めたらズドンと一発、貫通させる自信はあるわけ。実際、貫いたんですけどね。その瞬間、それまでとはまた違う硬直でサイコーなの。頭からつま先まで一本の鉄棒でも差し込まれたみたいになってね。いやだわ、差し込んだのはあたしの指だけど。さすがに指はそんなに硬くないわよ」
聞くべきではなかった。
あたら若い操を散らせてしまうとは――。
これ以上突っ込んで痛い目を見る必要はない。
知恵のある生物というものは事前に危機を察知したらそれを回避することができるのだ。
これは回避しても許される類の案件である。間違いない。
「自分以外は女の子で揃えるのは悪くないと思うのよ。だって誰でもハーレムは望むものでしょう? でも他者の足を引っ張るなんて言語道断。神が許してもあたしが許さない。もっとも女の子たちは仲がよかったんですけど男の子との関係がよくなかったみたいですけどね。打算も一つの関係性と言えばそうなんですけど、愛の伝道師としてはそれを許せないっていうか。あ、今の愛の伝道師っていうのは最近のマイブームなの。なんていうか、テーマってやつ? なんかもっと愛を広めていきたいなっていうか」
過去には『校舎裏の出会い茶屋』だの『放課後の恋人』だの『愛欲の布教者』だのいかがわしいテーマを掲げてきた。
そのたびに他の教師陣はそろって頭を抱えていたのだが、学院長であるカーモリアの心痛を理解できた者が一人でもいただろうか。
少なくとも目の前のコレはこれっぽっちも慮っていないわけだが。
「とにかく無事に本人の手元に戻ったわけですし、よしとしておきましょう」
なにより対抗戦へ出場する一年生のチームも決まった。
学院としてはこれ以上、何かをする必要はないだろう。
「ところでケントール先生はどこまでやれると思いますか?」
「妊娠ぐらいならなんとか」
「……いえ、そういう話ではなく」
「愛があれば女同士でも妊娠できると思っているんですけど方術でなんとかなったりしないんですかね? ジンバルクに言えばやってくれないかしら」
「……話を進めてもいいですか?」
「もちろんよ。対抗戦の話よね」
ばちこんとウィンク一つを決める。
直撃したカーモリアはかなりきつい精神的ダメージを受けた。
「今年は一年生が優勝するわ」
「おや、断言ですか。そこまでの生徒たちなのですか?」
一年生の代表になったチームにはマルチユースが三人いる。
そういう意味では楽しみではあるが、必ずしもマルチユースが強いとは限らない。様々な武具が扱えるが故に器用貧乏になり決定力に欠ける傾向もあるためだ。
「サダーシュの攻撃力は別格ですもの。あれを耐えるのはあたしでもム・リ」
ガードを担当しているケントールをしてその発言というのは学院長として看過することはできなかった。
「そうですか。それは楽しみですね」
「あの子、もしかしたらそうかもしれないわよ」
「……いよいよ、ですか」
カーモリアから表情が消える。
「長かったですね。そうですか、ようやく……」
「もっとも、間違いかもしれないわ。あたしたち、同じミスを何度も繰り返しながらここまで来ているんだし、今回も間違っているかもしれない。だからそんなに入れ込まない方がいいわよ。これは友人としての忠告
「そうですね、素直に受け取っておくことにします」
「一応、鈴はつけてあるそうだから。早ければ今晩にでも」
「わかりました。今日は眠れそうにありませんね」
「眠ったら? お肌はとっくに曲がり角を通り過ぎているんだし」
ほほほほと笑う二人だった。
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