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セキハの店

最近、PVが増えてるみたいで嬉しいです。ありがとうございます。

ブックマークとかもしてもらえるともっと嬉しいです♪

「ま、迷っちゃった」


「……はあ」


 鍛冶屋さんに行く予定でしたが、見事、迷子になりました。

 お、おかしいなー。間違ってないはずなんだけどなー。


「このあたりだと思ったんだけど……あれ~?」


 人通りがそれなりにある道の真ん中でハージェシカさんと二人並んで立ち尽くす。

 私たちの両脇をひっきりなしに人々が通り過ぎていく。


 一人で行かせるのは心配だからってついてきてくれたハージェシカさんの目がとても冷たいです。

 どうしてこうなった……。


「わかった。お酒を飲んだからだ! お酒って怖いよねー」


「一杯しか許可していないはずだが」


 一言で切り捨てられました。


「ほ、ほら、世の中にはお酒に弱い人がいるって言うじゃない。きっと私はそういう人だったんだよ。だから仕方ないよねー。あははー」


 なんだかますますハージェシカさんの目つきが鋭くなった気がします。


「店の名は」


「えーと、セキハの店だったかな?」


 ケントール先生おすすめのお店で、学院の武具もメンテナンスをしてもらっているんだって。


「わかった。しばらくここで待っていろ。

 いいか、絶対に動くな。この場にいるんだ。そこから足を動かすな」


 ハージェシカさんはわざわざ私の足元を線で囲む。


「いいな。何があっても動くんじゃないぞ」


 そう言い残して人ごみに紛れて行ってしまった。

 そんなに念を押さなくても動かないのに。

 私って信用がないのかなぁ。


「お嬢さん、ごめんよ。そこを通してもらえるかい」


「あ、はい」


 荷物を背負ったおじさんに道を譲る。


「……あっ」


 しまった。動いちゃった。


「で、でも今のは不可抗力だから。道の真ん中に立っていたら邪魔になっちゃうしね。仕方ないよね」


 そんな言い訳をしながら元の場所に戻る。


「悪いけど通してもらえるかね」


「あ、ごめんなさい」


 今度はおばあさんに道を譲る。


 そうやって何度か位置を譲る、戻るを繰り返しているとハージェシカさんが戻ってきた。


「……何をしているんだ」


「だ、だって道の真ん中に立ってるとみんなの邪魔になっちゃって……」


 ハージェシカさんはこめかみに指をあててもみほぐしている。


「まあいい。店の場所がわかったからついてこい」


 目的の鍛冶屋さんは通りを一本奥に入った場所にあった。

 こんなわかりにくいところにあったら見つからないのも当然だよねって思っていたら、ハージェシカさんに睨まれた。ごめんなさい。


「すみませーん。先日、王立学院から私の剣が修理に出されたと思うんですけどー」


「はーい、少々お待ちください」


 たくさんの武具が並べられたお店の奥まった場所から声がする。

 やがて汚れたエプロンで手を拭きながら小さな子がやってきた。

 声変わりもしてないみたいだし、お弟子さんなのかな?


「どんな剣でしょうか?」


「これぐらいの短めのやつで、黒い刀身をしているんですけど……」


「ああ、あの! ちょっとお待ちください。実は聞きたいことがいくつかあったんです」


 言いながら奥に引っ込んでしまう。


「聞きたいことってなんだろう?」


「どうやったらあんなボロボロにできるのかは気になるかもしれないな」


 それはトゥシスのガード能力が思っていた以上に高かったからで、私のせいじゃないと思うんだけどなぁ。


 店員さんが戻ってくるまでお店の中を見学させてもらう。

 壁にはいろいろな武具が並べられていた。

 どれも鈍い輝きを放っていて、しかもよく手入れされている。

 ここは修理だけじゃなくて武具の製作もしているんだね。中には学院でも見たことがない形の武具もある。


「ふむ……どうやら鍛冶師としての腕は悪くなさそうだ」


 片刃の剣を手に取ったハージェシカさんが呟く。


「そういうのって使わないでもわかるの?」


「どれもそれなりであって敢えて欲しいとは思わないがな。もっとも、ここにあるのは展示用で見栄え優先なのだろうが」


「売り物じゃないってこと?」


「いや、売っているだろう。相応の者にな。だがそれが主な客層ではないという話だ。

 聞いたところによると、この店は使い手に合わせた武具をしつらえることで有名のようだからな」


「へー。それって珍しくない?」


 だってユースなら属性の武具は基本的に扱えるんだし。


「道具の合う合わないは間違いなくある。ユースかそうでないかに関係なく、少しでも使い勝手のいいものを望む気持ちはわからなくはない。

 それもあってか、この店は値は張るがいい仕事をすると評判らしいぞ」


「そっか。ユース以外の人だとそういうのがあるんだね」


 ジンバルク先生が最初に言っていたことを思い出した。


 武具以外の道具にもユースのような適正があり、適した道具を使って成した仕事は出来栄えがよくなるっていう。


「いや、そうではなくユースでも同じことだと私は言っているのだが。というか、これまで何を学んできたんだ」


「……そうなの?」


 呆れたと言いたそうにため息をついたハージェシカさんが口を開く。


「同じスラストでも弓を得意とするハヤードと槍が得意なレフターナのように得手とする武具は異なる。ユースであろうがなかろうがそれは同じこと。あんたの愛用の剣なんてその典型だろう。

 頼むからこんな基礎の基礎を説明させないでくれ」


 はうぅ……おバカでごめんなさい。


「お待たせしました。こちらの剣でお間違いないでしょうか?」


 店員さんが見せてくれたのは間違いなく私の剣だ。

 鞘から抜いて確認してみたけど、まだ刃こぼれは直っていない。


「これで間違いないです」


「そうですか。ではこの剣をこんなにしたのはお客様というわけですね?」


 あ、あれ?

 なんだか店員さんの雰囲気が心なしか変わったような?


「こんな素晴らしい剣を乱暴に扱って、この子に対して何か恨みでもあるんですかっ。ひどいですよ!」


 涙を目の端に浮かべた店員さんが私を睨んでいる。


「えっと、乱暴に扱う気なんてこれっぽちもなくて、結果的にいつもこうなっちゃうというかですね……」


「それを扱いが悪いって言ってるんですっ。乱暴な使い方をしていたら武具がかわいそうじゃないですか! こんなに短くなっちゃって。ここまで持ち主に献身的な武具なんて滅多にないんですよ!

 武具にも心があるんです。使い手の気持ちに応えてくれる武具はあるんです。ちゃんと武具の声を聞いてあげてください!」


「ごめんなさい……」


 反省します。反省するのでそんな怖い顔をしないでください。


「待て。その気持ちは私にもよくわかるが、こちらの質問に答えてもらいたい。

 ズバリ聞く。修理にあとどれぐらいの時間が必要になる。受け取り日時を確定させたい」


「それなんですが……」


 困ったと言いたげに店員さんが頭をかいている。


「この剣には特別な効果があるかもしれないとのことで、その調査をジュリウス先生がしている間は修理を待って欲しいと言われているんです」


 ジュリウス先生が? どうして?


「先生は毎日のようにうちへ通っていらっしゃいます。どうやらこの刀身になんらかの意味があるようなんです。ご覧の通り全体的に黒いですよね。まるでお客様の美しい髪のように」


「え? あ、ありがとうございます……」


 髪の色を褒められるのってなんか照れるよね。

 そんなにきれいかな?

 あ、でもイーサのがきれいだと思うよ。

 私のは、なんていうか黒いし。

 王都に来て知ったんだけど黒い髪って珍しいんだよね。

 クラスに同じ色の髪をした子は一人もいないし、王都でも見かけないし。


「それで?」


 私が照れている間にもハージェシカさんが話を進めてくれる。


「先生の鑑定方術をもってしても意味や効果がどんなものかわからなくてですね。ですから文献を当たるなどの地道な調査で時間がかかっていまして……」


「つまり、なにもわかってないってことですか」


「はい、申し訳ありません。ところで使っていて他の剣に比べて切れ味がいいとか、動きやすいとかありませんでしたか?」


「ありますあります。そもそも私はその剣じゃないと戦えないというかですね――」


 簡単に私の事情を説明する。


「そうでしたか。でもそういうユースが全くいないわけではありませんよ。特定の武具がすごく得意という人は過去にもいましたから。お客様の場合はそれが顕著なだけでしょう」


 それならよかった。

 でも他の武具もある程度使えた方が本当はいいんだけどね。


「剣の調査はいいとして、修理はいつ終わる。明日明後日には手元に欲しいのだが」


 三日後が代表選考戦で一週間後に対抗戦がある。

 なんとか間に合って欲しい。


「それはギリギリですね……なんとかしてみますが三日後の午前中になってしまうかもしれません。先生から許可をいただければすぐにでも取り掛かります。

 ああ、申し遅れました。僕はカージェンスと言います。この店の店長です。以後、お見知りおきください」


「あ、こちらこそ。このたびはお手数をおかけして申し訳ありません。この剣の持ち主でサダーシュといいます。

 こっちはクラスメイトのハージェシカさんです。ちょっと顔つきは怖いですけど、本当は優しい女の子なんですよ」


「余計なことは言わなくていい」


 ハージェシカさんに睨まれる。


「申し訳ないのですが、ここまで刃が欠けていると形が少し変わってしまうのですが……」


「それは構いません。よろしくお願いします」


 これからは今まで以上に大事に扱うようにしますから。


「まずは先生の許可をもらってくる必要があるな」


 ケントール先生じゃなくてジュリウス先生の許可だっけ。

 この剣にどんな秘密があるのか気になるけど、それは対抗戦が終わってからでもいいよね。


「サダーシュさん。ちょっとお時間をいただいてもいいですか。

 たいしたことじゃありません。剣の扱い方についてお話したいだけですから。うふふ……」


 同じ笑顔なのにずいぶんと雰囲気が違うような……こ、怖いですよ?


「それはよろしく頼む。みっちり教えてやって欲しい。

 私がジュリウス先生のところへ行って話をしてくる。あんたは武具の扱い方を教えてもらうがいい」


 そ、そんな、私を一人で置いていかないでよぉ~。


ブックマーク等、よろしくお願いします。

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