表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/44

魔法使いからの誘い

今日はおまけがあります。

おまけは20時ごろに更新する予定です。


「魔法とはどういうものなのか。そこから説明をしないといけませんね。

 大前提として方術と魔法は違うものです。方術があらかじめ決めておいた結果をこの世界の理に働きかけて具現化させる体系に対し、魔法は異なる世界から力を借りて奇跡を起こす力だからです」


 なるほど、よくわからない。


「魔法はどうしても覚えないといけないんですか? まず方術からかなって思うんですけど……」


「並行してやって行きましょう」


 ご無体なことをあっさりと。

 できる人って、できない人の気持ちがわからないよね。


 方術は私が身に着けたいと思っているからいい。

 そもそも一人前のユースになるために学院に入学したわけだし、卒業後に騎士になるには方術を使えた方が有利だから勉強だってします。

 でも魔法はいらなくないですか?


「私は方術の勉強がしたいです。騎士になるには方術が使えた方が有利なんですよね?」


「うーん、そうですね。炎や雷で直接相手を攻撃したり、敏捷性、筋力、防御力といった身体能力を向上させることができる分、剣の腕が互角なら方術を使えた方が強くなれますからね」


 やっぱりそうですよね。


「実際、この学院でそれぞれの属性の武具の扱い方を教えてくださる先生方は皆さん方術師としても優秀ですよ」


「……ケントール先生もですか?」


「もちろんです。ケントール先生は大柄な体格に似合わない繊細な方術を使う方です」


 2メートルぐらいの見上げるような体格で、いつも体をクネクネさせながら女の人みたいにしゃべるあのケントール先生だよ?

 ヘイズとも意気投合したんだけど、あの先生ってキモいんだよ! 男女関係なくすぐにお尻触るし!

 あんな人でも方術が使えるんだ……世の中って不公平だなぁ。


 落ち着いて整理しよう。

 騎士になるにはユースとしての実力はもとより方術の腕もあった方が有利になる。

 ということは、私が騎士になるには方術が使えた方がいい。

 うん、今までと状況は変わらないね。


「今年の一年生もニシキーン先生と一対一で立ち会ったと聞いていますが、イーサさんは戦ってみてどう思いました? 先生は強かったですか?」


「それはもう。あんなに強い人に会ったのは初めてです」


 森に来ていた冒険者にも強い人は何人もいたけど、ニシキーン先生はその中でも群を抜いて強いと思う。

 ミラージュパイソンを倒す時にいっしょに戦ったソウジュも相当なものだったけど、底知れなさという意味ではニシキーン先生のがすごいかもしれない。


「あの人が戦いで方術を組み合わせると本当にとんでもないですからね。

 目にも止まらない速度で動くわ、大岩を砕くわ、炎で牽制するわ、相手を凍らせて動きを鈍らせるわ、目くらましやらステータス異常をぶつけてくるわ……ほんと央国五剣は伊達ではないですから」


 えっと、途中から剣と関係なくなってないですか?


 でもさすがはニシキーン先生とも言えた。

 ただそれって、やっぱり方術はすごい、使えた方がいいってことにならない?


「そういうお話を聞くと私も方術を使えるようになりたいって余計に思います」


「ですが魔法もいいものですよ?」


 いや、そんな目を潤ませて訴えられましても。


「そもそも魔法って空想上の存在なんじゃないんですか?」


「そんなことはありませんよ。そうでなければ魔法書なんてものが残っているはずはありませんからねっ」


 言いながら、先生は懐から取り出した本を大事そうに撫でた。

 恍惚な表情をしていて、ちょっとうわぁって思う。


「そもそも魔法は妖人族の技術とも言われているんです。妖人族が実在する以上、魔法はあると信じます」


「はぁ……」


「君が騎士を目指すのであれば魔法が使えるのは決して損ではないと思いますよ。

 もちろん方術が使えればそれだけ有利ですが、マジックユース以外が戦闘中に扱うのは難しいみたいですし」


「ニシキーン先生はできるんですよね?」


「そうですけど、ニシキーン先生と同じことが普通の人にできると思いますか?」


「難しそうですね」


 だって剣だけでもあんなにすごいんだし。


「これは君のためでもあるんです。方術が先天的に使えない人もいるわけですし……だから、ね、ねっ。ボクが責任をもって教えますから! 魔法使いの弟子になってみませんか?」


「じゃあ、時間がある時だけでもいいですか? 今は対抗戦の準備に忙しいですし……」


 チームのみんなには迷惑かけられないもんね。


「もちろんです! いつだって先生は君のために時間を空けますからねっ。

 ついにボクにも魔法を学ぶ弟子ができたのか……感無量だ」


 盛り上がっているところ申し訳ないんですけど、別に弟子になったつもりはありませんからね?





 思ってたより先生との話に時間を取られちゃった。

 急いでイーサたちのところへ向かう。


 これからケインズ君たちと練習試合があるんだよね。

 チームとしてのまとまりはあっちのが上だけど、私たちだって戦績だけならなかなかのもの。

 今のところ判定以外で負けなしなんだよね。


 その理由を種明かしすれば簡単で、私たちのチームにはトゥシスがいるから。

 トゥシスが護衛してる限り、王であるイーサがやられることはない。本当に一度としてイーサにまで攻撃が届いたことってないんだよね。

 だからある意味、私たちのチームの戦績はトゥシス様様だったりする。


 各チームの私見はこんな感じ。


 ケインズ君たちのチームは連携がすごい。まさに変幻自在でいろいろな攻撃パターンを持っているのが強み。

 時にはガードのゲンザール君まで攻撃参加することもあって、本当になにをやってくるか読めないんだよね。

 しかも個々の戦闘力も高いから侮れないチームであるのは間違いない。


 ヨシリアム君のチームはどっちかというと防御型。チーム全員で王であるヨシリアム君をガッチリ守る戦い方をする。


 最後にツグース君のチームは攻撃型。しかも相手を絞って数的有利を作りながら戦いを進めていくから、ある意味で堅実な戦い方って言えるのかも。


 今のところ成績面でいけば私たちのチームが一歩リード、その次がケインズ君のチーム。

 順当ならこのどちらかのチームが代表になるんじゃないかなって感じ。


「ごめーん、遅くなっちゃった。すぐに準備するから待っててね」


 訓練場の雰囲気がどことなくいつもと違っている。

 なんていうか、とても重くて暗い。


「……どうかしたの?」


 近くにいたイーサに声をかけたのに反応がない。聞こえなかったわけじゃないと思うんだけど。


「イーサ?」


 顔を覗き込んでみると血の気を失っている。

 なにがあったんだろう?


 訓練場にケインズ君たちがうずくまっている。

 しかも怪我してるじゃない!?


「なにがあったの? 教えてよ!」


 だけど誰も私の声に応えてくれなかった。





 夕刻。町の外灯には明かりが灯り始めていた。

 外灯は発光の方術具が使われていて、素養がある人なら誰でもつけられるものなんだって。やっぱり方術って便利だよね。


「ここにしよう」


「あ、はい」


 私はハージェシカさんと二人で町まで食事をしに来た。

 このお店は前にイーサたちと来たところだ。ここのご飯って美味しいよね。


 私が遅れて訓練場へついた後のことだ。

 イーサは今日の練習試合は中止になったと告げてトゥシスとケインズ君を連れてどこかへ行ってしまった。


 残っていたヘイズたちは軽い怪我をしていたこともあって医務室へ向かい、ハヤード君も一人で訓練してくると言い残して行ってしまった。

 なんの説明もなく取り残された私にハージェシカさんが声をかけてくれたのでこうして町へ出てきたんだけど。


「軽い食事を頼む。あと酒も」


「え、ハージェシカさんってご飯の時にお酒飲むの?」


「悪いか?」


「別に悪くはないけど……」


 大人だなぁって思っただけで。

 実は同い年なんだけどね。


「酒は二つ頼む。寮までは私が責任をもって連れ帰るから安心しろ」


 親睦会の時は失敗しちゃったから気をつけないと。


 店員さんがテーブルに置いたグラスには赤くて半透明な液体が入っている。


「んくんく……甘くておいしいね。これ好きかも」


 いくらでも飲めそうだった。


「女性にも飲みやすく果汁を絞って入れているからな。さて」


 お酒を一口だけ口に含んだハージェシカさんが背筋を伸ばす。


「先ほど何があったかを話しておこうと思ってな」


 それこそまさに私が聞きたいことだった。


「サダーシュを待っている間に訓練場へ上級生がやって来た。そしてせっかくだから練習試合をしないかと持ち掛けられた」


「じゃあ、ケインズ君たちがやったんだ。みんなが怪我してたのってまさか……」


「圧倒的だった。ケインズたちは決して弱くはない。だが成すすべもなかった。むしろあの程度ですんだのは手加減してくれたからだろう。

 もしあの場にサダーシュがいて私たちのチームが戦ったとしても結果は同じだったはず。上級生は強い。私たちが思っている以上にだ」


「で、でも私たちにはトゥシスがいるじゃない。トゥシスがいれば王のイーサを守れるから判定まで持ち込んで……」


 ハージェシカさんは黙って首を横に振る。


「無理だ。トゥシスでもあの攻撃をしのぎ切ることはできない」


 そんな……私たちの勝ちパターンはトゥシスがイーサを守り続け、その間に攻撃陣が相手の王を落とすというものだ。

 トゥシスがイーサを守るっていう前提が崩れたら私たちに勝ち筋はない。


「ど、どうしよう……どうしたらいいの?」


「強くなるしかない。今のままでは確実に負ける」


「でもそんな簡単に強くなれるわけないし……」


「一つある。あんたの剣だ。あれはいつ戻ってくる?」


「ケントール先生からは聞いてないけど……」


「あんたが戦力になれば勝てるかもしれない。修理の作業を早めてくれるよう交渉してもらいたい」


「う、うん」


 なんか意外かも。

 ハージェシカさんってどことなく飄々としてて、成績とか気にしてないタイプなのかなって思ってたから。


「じゃあ、ご飯を食べ終わったら相談してくるね」


 幸いなことに先生から紹介してもらった鍛冶屋さんはこの近くにあるはずだった。


おまけ 密会4……2017/07/26 20:00ごろ更新


ブックマーク等、よろしくお願いします。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ