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親睦会

今日はおまけがあります。

おまけは18時ごろに更新する予定です。


 イーサの予約したお店はそこまで高級って感じのお店じゃなかったのでほっとした。

 ほら、王都っていったらなんかよさげなお店なのかなって思うじゃない。

 でも連れていかれたところは町の酒場をちょっとおしゃれにした感じで、奥に個室がいくつかあるようなところだった。

 そんな一室を借りきって丸テーブルを8人で囲んでいる。


「今日はお忙しいところ時間をとっていただいてありがとう。この場に皆さんが集まって親睦会ができることを嬉しく思います」


 主宰であるイーサの口上を黙って聞く。

 今日のイーサはフリルやレースがいっぱいついた純白のドレスを着ている。

 制服を着ない時はいつだってフリルやレースがついた服なんだけどね。普段より五割増しぐらい華美なので、とても華やいだ雰囲気だった。


「わたくしのお友達を紹介しますね。

 トゥシスの隣から順番に、ケインズ=サウスマウンズ。

 ゲンザール=スプラウェル。

 シンハース=ロンストア。

 レフターナ=フィルパディ。

 ヘイステイシア=ウィスホールよ」


 イーサに名前を呼ばれると、みんな私に向けて軽くお辞儀をしてくれた。


「よろしくお願いします。サダーシュ=シュラインベースです」


 私もみんなに頭を下げる。


 直接話したことがあるのはケインズ君だけだ。落ち着いていて真面目な人っていう印象がある。

 他に覚えがあるのはブレイドの授業でシンハース君がニシキーン先生に褒められてたことぐらいかな。

 ヘイステイシアさんが女の子で、あとはみんな男性だった。


「ケインズはもうご存知よね」


「うん。マジックユースでいろんなことに詳しい人だよね」


 私の右隣はいつものようにイーサがいて反対側にはトゥシスがいる。


「今日はやけに大人しいじゃないか。いつも通りにしていればいいんだぞ。

 身内ばかりだから、今さらお前がどんな恥ずかしいことをしても気にするような奴はいない。せいぜい可哀想な女と思うぐらいだ」


「私がいつ恥ずかしいことをしたって言うのよっ。いい加減なこと言わないで!

 そりゃ辺境に住んでたからこんな立派なお店に入るのは初めてだし、おしゃれに着飾るのも初めてだからすっごく緊張してるけどねっ」


 私はいつだって大人しいわよ。ええ、もちろんよ。

 冒険者のお姉さまから「もう大人しくしていたら男の子にモテると思うんだけどねえ」って言われたことだってあるんだからねっ。


 実のところ、今は動きたくても動けないんだけどさ。

 だってイーサが用意してくれた服の胸元と背中がこれでもかってぐらいに開いてて落ち着かないんだもん。

 この服、いきなりストンって落ちたりしないよね?

 さすがにそんなところを見られたら恥ずかしいし……ほら、私ってスマートだから前にも後ろにも抵抗が少ないから――ってなにを言わせるのよ!


「お洒落? ああ……」


「なんで可哀想な子を見るような目で私を見てるわけ?

 この服はイーサが私に着せてくれたんだからね! せめて馬子にも衣装ぐらい言ってみなさいよっ」


 トゥシスの視線がイーサに向かう。


「そうよ。とても素敵でしょう?」


「……馬子にも衣装に達していない奴を初めて見た」


 なななななによそれ!

 私に似合ってないとでも言いたいわけ! 言いたいのよね! っていうか、そう言ったわよね!


「ぷっ、あははは」


 ヘイステイシアさんが大きな口を開けて笑い出した。


「あー、おかしい。トゥシスさんがそうやって他人をからかうなんて珍しいよね。なになに、その子のこと、そんなにお気に入りなの?」


 私よりも少しだけ小柄なヘイステイシアさんはとてもかわいい。おまけに笑い声もかわいい。さらには笑顔だってかわいい。

 今日は淡い青色で丈の短いドレスを着ているんだけど、顔立ちや雰囲気とも相まって、まるでどこかのお姫様みたいだった。

 とてもかわいい。全部かわいい。

 ズルいことにおっぱいもある。かわいズルい。


「はぁ? なんで俺がこんな奴を気に入るなんて誤解をしているんだ?

 これは珍獣とそう変わりがない存在だろ。檻に手を突っ込むと噛みつくところなんてそっくりだ」


「これってなによ、これって! それに誰が珍獣ですって!?」


 あんたの手なんて噛みつきたくないわよ!


「言わないとわからないのか?」


 トゥシスと正面から睨み合う。

 徐々に顔が近づいていって、今やおでこが触れ合う寸前だ。


「まあまあ、双方押さえておさえて。せっかくの料理が冷めちゃうよ。それにまだ乾杯だってしてないんだから」


 言い足りないことはいっぱいあるけど、ヘイステイシアさんが場を取り持ってくれたんだから顔に泥を塗るのはよくないよね。


 テーブルに置いてあるグラスを手に取ってイーサを見る。


「いいですわね? このよき出会いに、乾杯」


「「「乾杯」」」


 軽くグラスを掲げてから口をつける。

 む、なんだか甘くておいしいかも。


 それからは次々に食事が運ばれてきて、よく言えばにぎやかな雰囲気で親睦会は進行していった。


 料理は学院のものに比べると濃い味付けだけどおいしい。

 そういえば王都に来てから食べたものはなんでもおいしかった。門のところの屋台で売ってた料理も食べてみればよかったかなぁ。


 グラスを傾けてちょっとだけ口に含む。

 お酒が入ってるからあまりペースは上げないようにしてるんだよね。

 冒険者の人から「サダーシュは酒にだけは気をつけろ。お前は間違いなく酒乱だから」って言われたことがあってさ。


「よう、さっきから酒がすすんでないじゃないか。今日はお嬢のおごりだ、遠慮なくいっておけって!」


 隣の席にどっかりと腰を下ろしたレフターナ君が陶器製のジョッキを傾け、喉を鳴らして中身を飲み干した。


「くっはー!

 店員、おかわり頼む! あと、こっちの子にもおかわりな!」


「いえ、私は……」


「いいっていいって。ただ酒なんだから遠慮なんてしないでさ」


 ブハーって吐き出すレフターナ君の息はものすごくお酒臭い。

 ああ、これが酒乱ってヤツなんだ。女の子がこうなっちゃダメだよね。


「どいてよ、レフィ。邪魔だからっ」


 椅子の後ろからにゅっと伸びてきた長い脚がレフターナ君の側頭部を打ち抜いた。


「あだ――!?」


 当然、レフターナ君は椅子から転げ落ちる。


「よいしょっと。やっとゆっくり話せるね」


 椅子を強引に奪い取ったのはヘイステイシアさんだった。


「……いいんですか?」


 転がっているレフターナ君を指差す。


「いいのいいの。こんなの道場ではしょっちゅうのことなんだし」


 ヘイステイシアさんは小柄でかわいい顔をしてるのに随分と乱暴だ。でもかわいいから許せる。

 そういえば心なしか顔が赤くなってるような? もしかして酔っぱらってるのかも。


「どう、学院は。楽しい?」


「そうですね。ヘイステイシアさんはどうですか?」


「ヘイズって呼んで」


 あ、このパターンは知ってるやつだ。


「ヘイズはどうなの?」


 にやっとヘイズが笑う。


「お嬢のところでの生活とそんなに変わらないかな」


 イーサのお家ってどこかの領主様のところで剣術指南役をしているんだっけ。


「みんな、イーサのところでいっしょに生活してたの?」


「トゥシスさんとゲンさんはお嬢と同郷だから通いだったけど、あたしたちはお嬢のところに居候をしてたのよ。だから家族みたいなものかな」


 ああ、それでイーサとトゥシスって仲がいいんだ。

 それにしても家族か。

 いいなぁ。こんなにたくさんの家族だと、とっても賑やかそうだよね。


「友達がみんなユースなんてすごいね」


「逆だよ。ユースだからお嬢のところに集まったの。シェールグッド領周辺のユースはロウマインド流を習いに行くし。

 学院以外で5つの属性の稽古をつけてくれるところって央国でもいくつもないしね」


「それなら、わざわざ学院に来なくてもよかったんじゃないの?」


 結構、遠いんでしょ。シェールグッドって。


「そうだけど、やっぱり学院のレベルは見ておきたいじゃない。だから一番下のあたしが入学可能な年齢になったのを機に試しに来たってわけ」


 学院に入学するには最低年齢だけが決められていて、それ以上なら何歳でも入学できる。

 ここにいるメンバーだとケインズ君とゲンザール君は私よりもかなり年上だったりする。

 ヘイズは私と同じ16歳で、トゥシスが二つ、イーサが三つ上だ。


「サダーシュってお嬢と同部屋なんでしょ? 大丈夫?」


「うん。イーサは優しいしね。今は方術も教えてもらってるの」


 同い年なのがわかってヘイズとの距離が近くなった気がする。


「ああ、なんかわかる。お嬢って面倒見いいからね。それにリーダーシップもあるしさ。だからあたしたちもお嬢と一緒にいようって思ってるし、力になりたいし」


 それわかる気がするなぁ。


「なにこそこそ話してるんだよ。俺も混ぜろよー」


 床にひっくりかえっていたレフターナ君が起き上がってヘイズに絡み始める。


「レフィは酒臭い!」


 スパンといい音をさせてレフターナ君がまた吹っ飛ばされた。


「ったく、懲りないんだから。すぐ体触ってくるんだよね」


「あー、私はケントール先生がちょっと……」


「わかる。やたらお尻とか触ってくるよね」


「そーそー」


 共感してくれる人がいた!


 イーサのおかげで友達が一度にたくさんできた、とても楽しいひと時だった



        ※        ※        ※



「うぅ、頭痛い……」


 これが二日酔い……お酒は控えてたのになぁ。

 机に突っ伏して先生が来るのを待つ。

 ああ、机がひんやりしてて気持ちいい……。


「だらしのない奴だ。レフィを見ろ。あれだけ飲んでピンピンしてるぞ」


 最後は樽で注文して飲み干してた人と同列に扱わないで欲しい。


 教室に入ってきたジュンバルク先生が教壇に立つ。


「さて、皆さんも学院での生活にも慣れてきた頃だと思います。そろそろお互いの性格や個性も見えてきたんじゃないでしょうか。

 そこで今日は皆さんに、ちょっと5人一組のチームを作ってもらいます」


 チームを作ってなにをするんだろう?


「間もなく対抗戦が行われます。その出場チームを決める時期が来たんです!」


 両手を上げて先生が声を張り上げた。

 大きな声は頭に響くのでやめてください……。


おまけ 若者たち……2017/07/22 18:00ごろ更新予定


ブックマーク等、よろしくお願いします。


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