『血液型』
「温和な性格で柔軟な発想を持っており、感受性が豊か。楽天家で自由人な面もあるが、統率力があり、人の上に立つことが多い…」
「なんなのよ園子。さっきから」
「B型の性格よ。人の上に立てるなんて……私将来、福沢諭吉になれるかもっ!」
「………そのためにはまず勉強しなきゃね」
やれやれと言った様子で、何故かいきなり園子の嫌いな言葉をだしてきた母親に思い切り舌を出す。
園子は今、血液型占いにハマっている。友達のSNSで流れた記事を読み、それから自分でネットで漁るようになった。飽き性の園子がいつまで持つかは分からないが。
「お母さんは何型だっけ?見てあげるよ」
操作していたスマートフォンから、料理をする母親に視線を向けた。じゅうじゅう。肉の焼けるいい匂いが立ちのぼってくる。
「あたし?O型だけど…あまり占いとかは信じてないわよ」
「いーのいーの。こーゆーのは見るのが楽しいんだから」
「はいはい」
適当な返事をものともせず、園子はネット漁りに向かう。
ソファでしばらくごろごろし、
「あったあった。ロマンチスト、自信家、明るい、芯が強い…何だ、結構良い事ばっかじゃん」
「ほら、あまり気にすることはないのよ」
「ちぇー。あ、お父さんもO型だよね?運命占いしてあげる!」
「…あなた、お父さんの血液型は知ってたのね」
「ん、まーね。昨日聞いたから」
料理の手を止めて聞く母親に、特に考えもせずに返事をする。それより今は相性占いだ。園子はあまり一つのことに思考を集中させないタイプだった。
そんな園子の態度に安堵した様子を見せ、母親は料理に戻った。
「うわっ、O型同士って相性いいんだ。ちょっと意外」
「…そうね」
O型×O型で検索していると、ふと気になるワードが出てきた。
『O型×O型 子供』―――つまり、私のことだ。B型という枠にとらわれない特徴でもあるのだろうか。興味本位でタッチしようとし、
「はい、ケータイはそこまでね。…ご飯出来たから」
「ん、おっけー」
ご飯が食べたあとは、血液型占いのことをすっかり忘れていたのであった。