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被召喚系芸人、異世界に立つ!  作者: 楽描ばぁど
第1章 ヘータロー、異世界に立つ
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7話 忌招門(アンプランドゲート)

「本当に申し訳ない」


 俺を拘留した女騎士・ナーガは深々と頭を下げた。


「いや、ほんと気にしてませんから」

「この非礼の詫びは、いずれ必ず」


 盗人と間違えられた俺は、誤解はその場で解けたけど一応ということで事情聴取を受けた。

 ナーガは俺を捕らえた際に剣を向けたことを真摯に謝罪してくれた。

 あ、あと服くれたよ。これ超重要。

 兵士の支給品の普段着なら数に余裕があるとのことで譲ってもらえた。これだけで御の字だ。


「それではアルナ殿。忌招門いじょうもんの件。何卒よろしく頼みます」

「うん、まかせてなの」


 改めて頭を下げるナーガの頼みに、緩い笑顔で手を振って答えるアルナ。


「何か頼まれ事?」

「お仕事の話。あたし元々、忌招門の解決の為に来たの」

「いじょうもん?」

「そ、ほっとくとそこから魔獣とかが溢れ出してくるから、召喚術士とかが壊すの」

「へぇ~」

「詳しい話は宿でするの」

「あぁ」


 忌招門とやらについて俺にも説明してくれるらしい。

 今日のうちに忌招門の処理に向かうらしいけど、とりあえずは宿に向かっている。

 宿は木造建てのこぢんまりとした質素なものだった。

 受付を済ませて部屋に入ると、お茶を嗜むゴスロリ衣装の少女がいた。


「おまえっ!?」

「遅かったわね。どこで道草をくっていたのかしら」


 アリアはこちらに何するわけでもなく、澄ました顔で紅茶を口に運ぶ。まぁ澄ました顔といってもアイマスクで隠れているので表情はわからないけど。よく見るとアイマスクのデザインが変わっている。

 最初に合った時は名前に13のつく睨みの効いた殺し屋の目だったが、今は一昔前の少女漫画のようなキラキラな瞳になっている。


「おまえ、なんでここにいるんだよ!」

「なんでって、私はその子の保護者なのだから、監視するのは当然でしょう」

「ドラゴンのねーちゃんはどうしたんだよ。やりあってたんじゃないのかよ」

「ミルとはとっくに別れたわ」

「えと………どっちが勝ったんだ?」


 そこは今は重要ではないことかもだけど、気になったので聞いてみた。


「勝ち負けなんてないわ。ただの戯れよ。私とミルが本気で戦っていたら今頃この国は地図から消えているわ」


 淡々と恐ろしい事を口にするアリアだが、俺はミルのブレスを見ている。というか身をもって体験している。確かにあんなのが暴れたら山のひとつやふたつは無くなってもおかしくない。よくよく考えるとアリアとミルってめちゃくちゃ強いんじゃないか?もしかしてアルナもすげー強かったりするのか?

 そう思ってアルナに目をやる。


「その子は弱いわよ」

「いきなりなんなの。あたし弱くないの」


 俺の心を呼んだかのようにアリアは答えた。唐突に弱者宣言されたアルナは頬を膨らませている。


「まだミルが近くにいるはずなのだけれど、もう一度挑んでくる?」

「いや、それはちょっと…勘弁かな~って」

「それで、まだ忌招門の処理は済んでいないのでしょう?」

「うん、これからなの。街の騎士さんに話を聞いたんですけど、やっぱりゴブリンの穴みたいなの。楽勝なの。これから向かって今日中に終わらせちゃうの」

「そう。それであなた、それも連れていくの?」


 そう言って俺の方に目をやる。


「もちろんなの。あたしの召喚獣なんだから」

「そのことについては色々と言いたいことはあるのだけれど、今は保留にしておくわ、好きにしなさい。ただし、ちゃんとあなたが管理するのよ」

「はいっ」

「それじゃあ私は行くわ。うまくやりなさい」

「はいっ、任せてなの」


 椅子から降りたアリアは俺の前まで来て、品定めでもするかのように俺のことをまじまじと観察する。


「アルナの事をよろしくね」

「お、おう。わかった」

「………私、貴方嫌いだわ」

「は?」


 よくわからない事を言われた次の瞬間、アリアは目の前から姿を消していた。


「なんだったんだ?」


 突然それをカミングアウトされてどうしろというところだけど、まぁ別に好かれてるとは思ってないし、そもそも好き嫌いがでるほど接してないし、人をからかうのが好きみたいだからその類の発言かもしれない。

 あまり気にしないでおこう。


「さて、それじゃあ忌招門について教えてもらってもいいか?」

「うん」


 アルナがベッドに腰掛けたので、俺は机の椅子に座った。


「忌招門ってのはね。アンプランドゲートとも呼ばれてて、ダンジョン以外に現れた、魔界と繋がってるゲートなの。それがね、ダンジョン以外に現れると危ないから、消しに行くの」


 説明の冒頭だけで色々と聞き返したい事が出てきたが、細かいことは追々にしておいて柔軟な気持ちと俺のオタク脳による補完でなるべく受け入れるようにしよう。


 アニメにも負けず、ネットにも負けず、テンプレばかりのタイトルの長いラノベにも負けず、一般人からは敬遠され、ガチ勢にはついていけず、いつかバラエティ番組で『僕たちは、アニメ大好き芸人です』ってのでひな壇を飾る、そういうものに私はなりたかった……。


 地球か……何もかも懐かしい。


 思いにふけててもしょうがないな。わかんないこと考えてもしょうがないし、アルナの話のニュアンスだけ感じ取れる部分はそんな偏った知識でご都合主義に解釈しておこう。

 で、アルナの発言をまとめると


・ダンジョンがある

・魔界がある

・『忌招門』『アンプランドゲート』と呼ばれる魔界に繋がるゲートをなんとかしにいく


 ということだな、おk把握。


「それで、そのゲートからはゴブリンが出て来るって事だな」

「うん、色々あるんだけど今回のはそうみたいなの。ゲートを通ってきたゴブリンを退治して、ゲートを閉じたらお仕事かんりょ~!」

「なるほど、なんとなくわかった。それで、俺もついていくってことでいいんだよな」

「もちろん」

「で、俺はなにかやることはあるのか?」

「う~ん…ないかなぁ。あ、ゴブリン退治!」

「ゴブリンって俺がこの世界に来て最初に倒したあれだろ。わかった、任せろ」


 戦闘の経験なんてこの世界にきてからの1回しかないけど、ゴブリンなら余裕で倒せたし、なによりドラゴンのブレスにだって耐えた無敵の体なら大丈夫だろう。

 口ぶりからして元々アルナひとりでも問題ない内容のようだし、難易度の低いクエストなんだろう。

 やっぱり冒険は順序を追って進んでいかないと、チュートリアルがないと世界のルールが把握できない。

 そもそもいきなりドラゴンなんかと遭遇したのがなにかの手違いだったんだ。まさか2連続で想定外なイベントに遭遇することなんて流石にないだろう、はっはっはっはっは――――は?


 一瞬、光に包まれたかと思うと、ゴブリンに囲まれていた。

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