勇者不完全②-12
大分間が空いてしまいましたが載せます。見てる人はまだいらっしゃるでしょうか。
「……首ごとすっ飛ばすぐらいで投げたんだけどな、どうなってやがる?」
「今のは本当に危なかったなあ、この僕相手に本当にすごいよお兄さん、でもさ、やられっぱなしじゃ面白くないなあ!」
獣じみた憤怒の表情を浮かべたまま、サーガは地面ぎりぎりを飛びレストに迫った。一瞬で最高飛行速度に達したサーガにレストの反応が遅れた。ハンマーの一振りを紙一重で避けた背後で、民家と思わしき建物の半分ほどが爆ぜ上空に巻き上げられた。
サーガの攻撃は単調な大振りと激突と顧みない突進ばかりだったが、その全てが掠っただけでも致命打に成り得るほどの威力だった。レストは攻撃を受けず回避に専念した。避けること自体は可能だったが、サーガの攻撃の度地面は大きく抉られ、建物は崩壊し、レストとサーガの周囲は瞬く間に廃墟の町のような様相になった。
「はああああっ!」
何度目かになるサーガの力任せの横薙ぎはレストに命中しなかったが、そばにあった石造りの教会の建物の下部を大きく抉り飛ばした。基礎を失った建物はぐらつき、レスト達を押しつぶすように倒れ出した。
サーガが崩落の範囲から逃れるべく翼を広げ、教会の影から飛び去った。並外れた打たれ強さを誇るサーガでさえ回避を決断しほどた教会の質量は圧倒的であり、レストもいち早く逃れる必要があった。しかしレストは自ら斜めになっている教会に向かって走り出した。自棄ではない、瞳に挑戦の意志の灯る決断的な疾走だった。
「はっ、逃げるなら方向が逆なんじゃ……違う、狙いは僕か!」
レストは半ば砕けた教会の壁面に飛び乗り、それを足場に上空のサーガに向かって走り出した。竜人化によって得られた人間離れした脚力によりレストの速度は一歩駆けるごとに飛躍的に高まっていった。レストの耳に入る風の音が一際高いものになったとき時、レストは教会の屋根部分を蹴り、最高速度でサーガまで飛んだ。決して近くはない二人の距離が一瞬で縮まった。
サーガは咄嗟にハンマーを左手に持ち替えると右腕を大きく後ろに引き絞り、レストを迎撃するべく構えた。高速で一直線に迫るレストを確実に撃ち落とすための拳、ハンマーに比べれば威力の劣るただの拳でさえ音速で迫るレストを迎撃できることをサーガはもちろんレストでさえ疑っていなかった。ほとんど正面衝突するように両者は宙でぶつかり合った。どちらのものともしれない血が眼下の砦に滴った。




