表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者不完全  作者: まきびし
11/22

勇者不完全②-3

一気にまとめて投稿するよりは小まめに投稿するほうが見てくれる人にとってはいいのでしょうか?とりあえず今回は短く切り上げて投降します。

 砦のおおよそ中央にある兵士たちの詰所は不自然なほどの静寂に包まれていた。外は完全に夜闇に包まれているとはいえまだ就寝には早い時間、当然ながら起きている兵士も多くいた、しかしどの兵士も極力静かに何かに備えるように過ごしていた。それは外から来るかもしれない何者かに注意を払っているようでも、総隊長室に招かれた二人組を警戒しているようでもあった。


「……確かにお前はレスト・コールフロントで間違いないようだ、そして正体不明の襲撃者から身を守るためにやむなく応戦したというのもおそらく真実なのだろう、喧嘩っ早い奴だと聞いてはいたがまさか俺の砦に来て早々にやらかすとはな」


レストとノーシアは軽い苦言を聞きながらもほっと胸を撫で下ろした。路地裏で武器を振り回す不審人物として連行され数刻、弁明に弁明を重ねた末の無実の証明、一時は任務の失敗も頭をよぎったのもあり安堵もひとしおだった。


「騒動は済まねえと思う……けどこっちも自分の命がかかってた以上ああするしかなかったことは分かってくれ、魔物の一派が街の中にまで入り込んでるとは予想出来ねえよ」


「気にするな、俺の砦に魔物とはにわかには信じがたい話だがその暗殺者が人間だったというのなら成程合点がいく、化けた魔物は見敗れても狂人は見敗れん、人の心の有り様など俺の手には余る」


 顎鬚に手をやりながら東方砦総隊長ドルチェイグが呟く。その言葉は砦の中が壊されたことより、魔物の側についた人間がいることを嘆いるかのようだった。


「大森林地帯の探索については問題なく許可しよう、ただお前達が探しているフォークランドは神出鬼没でどこにいるのか全く見当がつかん、まあ探す方法がないわけではないのだがな」


 ドルチェイグは机の上に置かれた木製の円盤のようなものを掴むとレストに向かって放り投げた。レストは疑問を感じながらもそれを掴みまじまじと眺めた。レストの掌に収まる大きさのそれは羅針盤のようにも見えた、しかし本来羅針盤にはあるだろう方位を現す記号も文字も一切なく、中央にはめ込まれたガラス質の板の向こうに先端が赤く塗られた尖った骨のようなものがあるだけだった。


 レストは掌に載せたまま何の気なしにそれを左右に動かした。その針は北側だろう方角を指し示すことは無かった、しかしどう動かそうとその針の先端はレスト自身を捉え決してそれることは無かった。その様子を見ていたノーシアも思わず首を傾げた。


「持っている人を指す?まさかね?」


「竜の羅針盤、竜種もしくはそれに類するものを指し示す羅針盤だ、少し古いものだが使ってくれ、きっと役に立つ」


「ありがてえ話だけどよ、さっきから俺しか指してねえ、竜人化してねえ俺に反応するんじゃ仮に近くにフォークランドが来ても反応しねえんじゃねえのか?」


 レストは疑問を率直に口にした、レストの内にある竜の因子にさえ反応する精度を頼もしいと思う反面、それが今回の探索では仇になるのではないかという懸念があった。ドルチェイグはいかつい顔をほころばせ、レストの不安をかき消すよう声を上げて笑った。


「なに心配はいらん、その羅針盤はより純度の高い側を優先して指し示す、存在が濃い方と言えば良いのか……とにかく大森林地帯に入ればお前が竜人化しない限りはフォークランドを指し続けるだろう」


「ああ、そういうことか、なら問題なく使えるな」


「ん?よくわからないけど、大丈夫なのね?」


 事情を飲込めてない様子のノーシアが頭の後ろに手をやり曖昧な笑みを浮かべる。追及しようという考えがないわけではなかったが、今は眠気が勝った。真夜中といってもいい時間に既になっていた、レストもドルチェイグも表面には出さなかったが、ノーシア同様眠気を感じつつあった。


「さて、長いこと拘束してしまったがお前たちの身元はわかった、後は宿で休むといい、明日には兵士に探索用の食糧や持ち運びできる寝床を用意させよう」


「何から何まで世話になりっぱなしだな、恩に着るぜ」


「なに、ようやく訪れた平和を守りたいだけだ、お前達の無事を祈っている」


 ドルチェイグは立ち上がりレストと握手を交わした、レストより頭一つ大きいドルチェイグの手は大きくごつごつと硬かったが温かだった。レストは任務の達成を胸中で誓いながら総隊長室を後にした。事情を知らない詰所の兵士は警戒した様子でまだレスト達を見つめていたが、ノーシアのあまりに大きなあくびを目撃してからは、一気に警戒を説き、そのまま困惑した様子で詰所から立ち去るレストたちの後姿を見送るだけだった。

 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ