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燃える家を見る俺

 俺は今、小麦粉を目一杯挽いている。

 まあ、ド深夜にやることでは無いけど。


 大軍には兵糧攻めって相場が決まってるからね。ちょっとこれからちょっかいを出しに行こうかね。


 ただ、あちこちに兵士が警戒しているので、外に出た途端捕捉されてしまいそうだ。

 的確な行動ができるか分からんが、ここにいる十体の人形達に託したいと思う。

 人形は光が無くても行動に支障がないようなので灯りは必要ないが強盗提灯(がんどうちょうちん)を持たせることにする。人形に火を起こさせると上手くいかずに火達磨になってしまうことが多い。つまり、火種が無いと思う結果が出せないからだ。


 何をするかって?


 その昔、孔明が教えてくれた。横山光輝三国志に描いてあった。

 大軍には火計で攻めるべしと。

 兵糧を燃やしてしまえと。


 まずは菱の実を幕舎の出入口周辺にばら撒いておく。ちなみに菱の実を踏むと痛い。池に腐るほど生っているのでカラカラに乾かして非常食用に取っておいた。忍者はこれを撒菱(まきびし)に使っていたらしい。鉄で作るのは地味に大変だからね。

 そして兵糧置き場をバイオエタノールで燃やす。

 兵士達が騒ぎ始めて幕舎から飛び出てくると撒菱に足を取られる。そこに忍び寄り幕舎内に小麦粉をまき散らし粉塵爆発を引き起こす。

 最後に馬や家畜の囲いや馬留めを壊して追い回す。パニックになったところで撤収の流れだ。


 全て上手くいくことはないだろう。それでも何かしらのプレッシャーが与えられれば御の字だろうね。


 さて、後は見張りを任せて、明日に向けて体を休めるか。




 体を揺り動かされて目が醒める。まだそれほど寝た感じがしない。

 人形が俺に用があるようだ。敵の全軍が動き出しこちらに向かっているらしい。

 家から出るがまだ真っ暗だ。

 何時の間にか嫌がらせに出ていた人形達が戻ってきている。4体しか戻っていないが。焼け焦げて部位が欠損している。


 成功したのかな?


 残念ながらこの人形達には報告する機能はつけていない。失敗したね。


 靴の紐を締め。革の防具をつけていると塀の外から大声が聞こえてきた。

 銃眼から覗いても相手の松明も揺らいで暗くてよく見えない。


「貴様!……しくさって……やる!」


 声からするとジャッバールだと思うが、興奮しすぎててちょっと何言ってるか良く分からん。


「やれっ!」


 ジャッバールが一声掛けると兵士達が盾を構え一塊になっていく。


 ……兵士達を展開しなくていいのかな? 攻める面積を小さくすると大軍のメリットを消してしまうと思うんだが。


 いらぬ心配をしていると、地面が揺れだした。


 地震か?


 震度5強ぐらいで塀に積まれている煉瓦が少し崩れる。


 今まで大きな地震を感じたことが無かったが随分タイミングが悪いな。


 地震が落ち着いてくると火の玉があちこちで弾け飛んできた。辺り一面が明るくなる。ただ、物理的重量がなさそうで壁を崩すには至らないようだ。

 火の玉が間断なく降り注ぐと塀の内部のあちこちが燃えてきた。


 また、足元が揺れる。

 先程より揺れが強い。

 煉瓦が崩れ落ち芯材の木の板がむき出しになっていく。

 そこに火の玉が着弾すると塀が燃え崩れ落ちていく。


「……たか……きさまなぞ……」


 ジャッバールの声と高笑いが聞こえる。

 この地震と火の玉はジャッバールが引き起こしたものだろう。

 まあ、それしか考えられないが。


 魔法か? ファンタジーな魔法なのか? ファイアーボールなのか?

 スゲェ。

 拝啓 父さん。僕の人生はファンタジーの世界にきたわけで……

 

 塀が崩れ落ちると、ジャッバールとその仲間たちの姿が見えてくる。当然向こうからも俺の姿が丸見えになっている。

 ジャッバールが手を振り下ろすと兵士達が鬨の声を上げながら走ってくる。

 塀の上にいた人形達も崩れ落ち燃えているので役に立たない。防備が丸裸同然だ。


 すぐに家の中に入る。

 家も火がつき燃えている。家も屋根が落ちるのも時間の問題だ。


 俺一人になにムキになってるんだ。本気出しすぎだろ。

 もう少し耐えられると思ったけど、呆気なかったな。


 瓦の重さに耐え切れずにすぐに家はペシャンコになった。

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