交渉する俺
さすがにド深夜のジャングルを行進させることはしないか。
家に戻ってしばらく用心のために壁に穿たれた銃眼から覗いていたが変化がなく、見張り役の人形にも索敵に出してる人形からも報告は来なかった。
まあそうだろうな。
しかし、練度が高いような気がした。それに装備も今迄より良かったのでけっこう厳しいことになるのかも。
DQN風に伝えると、スゲェ強そうでヤバイし装備もヤバイからまじヤバぇ。……う~ん。全く分からん。
全く変わらない景色を見張ってると先ほどまでの興奮が落ち着いてきて瞼が落ちてくる。
何度か船を漕いでいたが、人形に見張りを任せると明日に備えるためにベッドに身を横たえた。
定点にいる索敵人形からの報告が来た。
動き出したようだ。
外にでると朝焼けの中で鳥の目覚めの鳴き声が響き渡っている。所謂、払暁ってやつだね。
色々な準備をしたが2000人もの相手が来ることを想定していない。ここまで来たらいくらか嫌がらせをして逃げ出すだけの隙を作れれば良しとしよう。
陽の光も高くなった時に、豪奢な鎧を着た一団がやってきた。10名しかいない。その他の兵士達は確認できないので少し遠くで待機してるのかな?
塀の中から銃眼から覗き息を潜めていると、一団が警戒線の手前で止まり騎乗したまま大声で呼びかけてきた。
「シンゴ殿! 居られるか?」
いきなり名前を呼びかけらるとビックリするわ。そんなに俺って有名だっけ?
「我は教皇近衛第2旅団ジャッバールと申す。教皇からのお言葉を申し伝えたい。開門されよ」
……判断に困るね。このこの出て行って今見えている10人だけでもいきなり攻めて来られたら手に余る。1対1でも軽く捻られるてお終いだ。かと言って話し合いで解決するんだったらそれに越したことはないし。
とりあえず扉越しに話をするか。
人形達に攻撃しないように指示をし、ジャッバールに呼びかける。
「ジャッバール殿お一人で門扉まで来られよ」
ジャッバールの周囲の人達がついてこようとしたのを制止した後に、門扉の外側で下馬したのを確認し声を掛ける。
「扉越しに失礼します。今回の用向きはなんでございましょう」
覗き窓から見るとジャッバールは羽飾りがついた兜を脇に抱え、直立している。年の頃は30歳後半だろうか。精悍な顔立ちをしていてる。立派な体躯で腕周りは俺の倍はありそうだ。俺もサバイバル環境に順応して筋肉はそれなりにあるつもりだったが、ジャッバールを見ると俺なんてモヤシにすぎない。
「まず突然の訪問を謝罪する。本来は訪いをいれるべきだったが、昨夜、我の部下が何者かに殺害されてな。急遽伺わせて貰った」
……何者かにって俺じゃないよね?
「それは大変でしたね。それで私に何用でしょうか」
「率直に言うと教皇がお呼びだ。前回は使者をたてたのだが誤った命令が伝わってしまったようでシンゴ殿を害してしまった。そこで我に指令が下った。誤解を解くと同時にご同行願いたい」
なんか微妙に上から目線だね。常に命令することに慣れている感じ。
「……お断りします。まず私の安全への担保がありません。誤解だから一緒に来いと言われても信用出来ないことはお分かりになるはずです」
「ふむ。我が強引に連行することは容易だと考えていただけるだろうか。それをしないのは教皇が礼を尽せとの仰せだからだ」
これは礼を尽くしているのか。それとも俺の日本人的感性がこの世界では間違っているのか。その疑問はさておき根本的な疑問を解消するために質問する。
「その……教皇は何故私のことをご存知なのでしょうか。そして何故お呼びなんでしょうか」
「我はシンゴ殿をお呼びせよとの下知があったにすぎない。ただし、最近この周辺の村や街の住人が死滅している。それもひとつふたつでは無い。その数は増えている。教皇はそのことで心を痛めたれておる」
それは俺のせいじゃない。ちょっと下痢ピーを流行らせたぐらいだ。そもそも村は教兵が攻めてただろ。俺に責任転嫁するな。俺が行ったことがあるところは2箇所だけだし。
「あと、教皇はやっと見つかったと仰っておった。察するにそれがシンゴ殿のことだと思われる」
見つかったってなによ。今まで絶賛ぼっち生活満喫中で殆ど人との接触はなかったぞ。
「それから安全の担保とか言ったか。それは我が約束しよう。我が手をだすなと命ずれば手出しするものはおらん」
「……失礼ながらそれはジャッバール殿のさじ加減ひとつですよね」
思わず口からポロッと出てしまった。
ジャッバールの顔色がサッと変わる。
「よろしい。交渉は決裂した。これからは力で決しよう。では」
ジャッバールは兜を冠り、ひらりと馬に跨ると門扉から遠ざかっていった。
突然PVやポイントが増えてるんですが何が起こったのでしょうか(ガクブル




