追う俺
取り敢えず逃げた奴らを追って見ることにした。
死体は片付ける?目処がついたので当面放置。
必要な物を持ち、目立たないように迷彩服っぽく着色した服を着て、顔には木の実を潰してできた汁を塗り、頭には草を挿す。
歩きながら考える。
死体が動いたのは恐らく死体を人形と認識したためだと思う。当然ながら頭があり、手足があり、それを動かす関節もある。なので俺の祝福である|傀儡師【パペットマスター】が発動したんだろう。
街道近くまで来ると木々が倒され広場のようになっていた。こんなになってたとは気付かなかった俺も間抜けだな。
見つからないように忍び寄るが警戒している兵の数は少ない。中央部分に天幕が張られ、周囲には怪我をした兵達が治療したり寝ていたりしている。水煙も立っているので、夕食の準備もしているのだろう。
恐らく天幕の中に指揮官がいると思われる。が、いくら警戒レベルが低くても、物陰に隠れながら天幕には近づけない。ダンボールがあればまた違うのかもしれないが……
改造した猿飛サスケ人形に指示をだす。今回の改造は忍び寄り人の声を拾い、書き起こすことが出来るようにしてた。
夜の帳が降りる。
天幕から人が何度も出入りし、馬を飛ばして街の方向に走って行く姿を見かけた。
数カ所で焚火をしていて天幕の周囲は明るく隠れるにくくなったので、人形達を引き返させて報告書を受け取り、暗い中で目を凝らす。
(……りょう……応援を呼ぶ……儂の手駒がやられたのだぞ。それも二度も。一度目は熊にやられ………………アジーズ様にどう申し開き……)
熊にやられたのは俺のせいじゃないような気もするが。
(……城に戻り立て直し…………だ教皇様の命令書ではシンゴとやら……尽くしてお越し願う…………捕縛せよとは……)
教皇様って……だいぶ大事になってる?
(……かましい。アジーズ様は捕らえよと。抵抗するなら……と。)
聴覚の精度が悪いな。何言ってるかよく分からん。ただ色々温度差があるようだ。いい方向に進むとも思えない。
……腹減った。今日は碌なものを食べてない。最近は食に時間を注げないので貧しい食生活になっている。それもこれもアイツのせいだ。
段々腹立ってきた。
……ちょっと脅してやるか。
猿飛人形に小麦粉の袋を持たし天幕の上に登らせる。
天幕に切れ込みを入れさせ、出来た穴から小麦粉をはたく。
なんじゃ〜 ゴホッゴホッ
天幕の中から怒鳴り声と咳き込む声が聞こえ、警戒中の兵が天幕の中に入っていく。
俺は猿飛人形を引き返させ、火矢を準備し天幕に打ち込む。
ドゥン!
天幕が爆発する。覆っている幕が天高く舞い上がり、骨組みが四方に弾け飛ぶ。中にいた人達は爆風にあおられ転がり火に包まれる。
……おかしい。こんな威力になるなんて。
小麦粉の粉塵爆発を模してみたんだが噴霧していないので脅かすぐらいになるはずだったのに。……粉塵爆発恐るべし。
暫く呆然としていた兵士達が消火活動を始め、一隊が火矢を飛ばした俺の方向に向かってきたので、慌てて逃げ出した。




