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見つかる俺

 ……臭い。スラムとほぼ変わらない臭いがする。

 この世の人達は鼻がおかしいんじゃなかろうか。


 壁を抜ける所に同じ様なおっさんがいて荷物をどかしてもらい城壁の中に入った。

 

 城壁内部にもあったスラムを抜けて大通りに出た。両際に店舗らしき看板が掛けられた建物があるが一部を除き閉まっている。往来も少ない。

 道端はあまり歩きたくない。ウンコが結構な感じでバラ撒かれている。


 ……奈良公園でも鹿の糞はこんなに落ちてないぞ。


 トイレなんて無いのだろうか。街もかなりの人口がある様子だが、下水を整備していないのだろうか。大通りは石畳になっていて見栄えがするのだが、勿体無い。


 ウンコ探訪していても仕方がない。

 目的の教会にでも行ってみるか。


 しかし、教会の場所を聞くと怪しまれそうだ。

 ただ、教会が権勢を持っているってことは良い場所にあるのだと思う。つまり、遠目に見える城らしき塔が立っている近くにあるんじゃなかろうか。



 塔目指して歩いて行くと人集りがある建物が目についた。

 豪奢な建物でザ・教会って感じの建物だ。


 ……何やら見覚えがある。俺の記憶ではない。元の身体の所有者の記憶か。


 俺はここに来たことがある。


 人集りを横目に見ながら城の入口に近づいていく。

 城の入口にも人集りがあった。衛兵が見張っているので入れない様子だが大声で領主に談判を求めている声が聞こえる。


 この門も潜った記憶がある。この身体の父親と一緒に城をでた。


 城から振り向き教会に目を向ける。


 そしてあの教会に入っていった。祝福を授かるために。



 教会に改めて近づく。小さな子供を抱きかかえた女性や爺が大声で何かを叫んでいる。

 教会に入る扉にも衛兵が立ち、一人ひとり建物に入っていく。


 俺は集団に近づかないようにその様子を眺めていた。臭いから近づきたくなかった訳ではない。日が陰ってきてた。夕方になってもその集団の量が少なくなるわけでは無いようだ。その様子を飽きずに見ていた。


 その様子を不審に思ったのか衛兵がこちらに近づいてきた。俺は刺激しないようにそっとその場を外れる。背中には衛兵の視線が刺さっているが、振り向きたいのを我慢する。

 そして住宅街に入っていく。


 土地勘が無いので迷う。主に下を見ながらウンコを除けながら歩いているので余計に迷っている。中世欧州の女性がハイヒールを履いた気持ちがよく分かる。

 たまに俺の眼前に何か物体が落ちてくる。


 ……気にしたら負けだ。


 こんなところで生活するんだったらぼっちでいいかと思ってしまう。


 大通りに出た。

 突然、目の前を馬が通りすぎた。足元を気にしすぎた。

 馬が驚いて棹立ちになる。


 馬に乗っていた騎士が落ち着かせてこちらを見る。

 目があってしまった。

 

 街道を歩いていた時に遭遇した教会の騎士達だ。軽騎兵隊隊長のマフムードって言ったっけ? あいつだ。


 マフムードが目を細めた。

「危ないではないか。お主。見覚えがあるな」

 俺はジジイ。俺はジジイ。変装しているからばれないモーマンタイ。

「申し訳ない。腹が痛くてのう」

 流行っていると言われている腹痛を演出してみた。

「ふん。症状が出ている奴の外出禁止令が出ているのを知らんのか」

「家に戻る最中じゃ。では失礼する」

 回れ右をしてスラムに向けて歩き出す。

 マフムードが俺の背中に声を掛ける。

「貴様の後ろ姿あの街道で見たな。……名は確かシンゴ。両親は見つかったのか? そんな格好をしているが」

 後ろで騎士達が素早く動く音が聞こえたので、振り返らずに走りだし、狭い道に飛び込む。


 騎士の一人が下馬して俺を追ってきた。ウンコを気にしている暇はない。構わず走る。……いやちょっと構う。フレッシュなものを踏むと滑る。


 同じ様な道をぐるぐる回ってしまう。たまに大通りに出てしまい、騎兵隊に見つかる。また、路地にと繰り返し、スラムに近づいていく。


 上手く物陰に隠れたが、巡回している兵隊がそこら辺じゅうにいる。城の兵の増援を呼んだのだろう。

 息を殺して深夜を待った。

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