拡大する俺
畑が相当広くなってきた。だいたい5ha。つまり50,000㎡。これ以上広げると人の目に触れる可能性があるかもしれない。
植えている作物は、小麦、燕麦、じゃが芋、南瓜、蕪、瓜、麻、アブラナ。他にランブータンや他の果物を植えている。アブラナやランブータンに蜂が大量に集っているので、養蜂にもチャレンジしてみたい。
この前は小麦でパンを作った。細かい分量なんて分からないので、適当に全粒粉と酵母、塩をぶち込んで手にくっつかない程度の水分量に調整する。それを窯で焼く。
発酵が足りないのか、分量がいい加減なのか、材料が悪いのか分からないが少し固く、ちょっと酸っぱい感じのパンだったが、久しぶりの文明の香りを感じて嬉しかった。
醤油ラーメンも作ってみた。
小麦粉から麺を捏ねたが、小麦の糠が綺麗に取れなく、不純物が多かったのと水分量が上手く行かずにボソボソに。
スープは鹿や牛の骨から取ってみたが臭くてイマイチ。
味噌に混ぜてみたが、記憶にあるラーメンには似ても似つかなかった。
村から貰った麻も撒いてみた。雑草かと見間違うぐらいどんどん増えていく。畑が良いのかもしれないが、3〜4ヶ月で俺の背丈の倍ぐらいまで成長する。麻の実だけをより分けてるが、そこからの繊維の採取方法が分からない。
繊維はセルロース。セルロースを分解できないような微生物がいればいいんじゃね? と、安易な気持ちで真言を唱えると、あれよあれよと腐っていく。
もともと、菌が麻にはついているようでそれほど大変ではない。ただし、ある程度のところで止めないと、セルロースまで腐っていく。
繊維は茎の周りの皮に多いようで、芯は必要ないっぽい。これを剥ぐのが大変だ。更に剥いだ後、一本一本繊維を撚りながら長い糸にしていく。竹で作った糸車で更に撚りながら纏めると麻糸ができる。
細かい作業をするとイライラしてくるので人形を作ってこれを全面的に任せた。ただし、俺にはこの糸を使って服を作ったりなどという高尚なことは一切できない。小学校の時の家庭科はずっと2だった。料理は得意だったが、裁縫の課題は幼馴染にやってもらってた。当然バレて点数をつけてもらえなかった。
何を隠そう、針の先端がちょっと怖い。軽い先端恐怖症なのだ。チクチクやってると、発狂したくなってくる。箸や楊枝、ナイフなんかは平気なのに、針だけがダメだ。何故だか俺にもよくわからん。
麻糸は全て撚って丈夫なロープを作るためのものだ。ロープは幾らあってもいい。
そして、麻の実。栄養豊富でしかも絞ると油が取れる。使い勝手がいい。アブラナから取った菜種油より品質がよく、石鹸の材料にしても匂いに癖がないのでその辺に生えている雑草を混ぜて作るといい匂いの石鹸になる。ランブータンの実からも油が取れるがまだ植えたばかりなので量が取れない。
全体的には生活水準が急激に向上してきた。
そして、製鉄がそこそこ上手く行ってできた、石ノミ。
これで石を削り、細工が必要なところは鋳鉄で作ったハイブリッドゴーレムが完成した。
名づけて鉄人21号。……21体も作っていないがいいだろう。本当は28にしてみたかったが、色々なところから文句が出てきそうなのでやめた。鼻もとんがらせてみたんだが。
耐久性は抜群なのでエバの代わりになるかと思い、ジャングルの中を連れ回してみた。
……結果は残念に終わった。
ドロにハマった。
ただの泥にハマったのではない。泥沼にはまった。
21号が一步踏み入れたと思ったら前転し頭から突っ込み、そのままズブズブと沈み込んでいった……
ロープを引っ掛けて引っ張りだそうと健闘したが、重すぎて俺まで沈みそうになった。
俺が沈む! と思った時に21号を踏み台にして生還したが、21号はそのままお亡くなりになった……
鉄人シリーズには出歩かせてはいけない!! という教訓を得たので、現在は門番として活躍中だ。門の脇に二体配置し、侵入者を排除する役割を負わせることにした。
俺の家周辺には怪しい人影は未だに現れないが用心はすべきだ。
村へ行く時に使う予定の仮橋もだいぶ出来てきた。
長いドングリの木は発見できなかったが、信頼できるに値する鉄の輪も出来た。木の束を鉄の輪にギチギチに詰め込み長い橋桁にする。それを麻で作ったロープで引っ張り橋を架けた。
手摺も麻のロープだけで作ってある。
架橋ポイントからその先は道は作らないことにした。
村が敵対した時には危ないからね。
先行していた測量人形も村を発見して行き方の目処もついた。
これからは村を調べ俺の生活圏の拡大を目指していこう。




