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使えない祝福とぼっちな俺  作者: woki
フロンティアな俺
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商談する俺

本日3話目

 ガルに連れられ番屋まで来る。


「お前はここで少し待っていろ」


 ガルはそう言うと連れの見張りを残し立ち去った。

 ガルの歩いて行く方向には竹や細い丸太で組んだような塀が立っており、恐らくその向こう側が村なのであろう。小さな子が遊んでいるような声が微かに聞こえてきた。


 暫く待っていると、無数の視線を感じた。

 塀の向こう側に人の気配が感じられる。


 俺は見張りの男に声を掛けた。


「いったい何やってるんだ?」


 男は無言でこちらを警戒している。


 やがてガルとかなりの歳をとった男がやってきた。

 背中が少し丸くなり身長が俺の胸あたりまでしかない。

 その歳をとった男が俺を足から頭まで舐め回すように見ると問うてきた。


「旅人よ。そちは何しにこられた」


「……俺はシンゴ。この辺の様子は良くわからないが、何か道具や食料を交換なら嬉しい。」


「私はこの村の長でハサンと申す。そなたはどちらの町から来られた?」


「東から。

 一人、森で生活していたので町から来たのではない。

 あの廃村はなんなんだ?

 ハサンさん達とも交流があったのではないのか?」


「……我らはあまり余所者と交わることはようせん。

 食料だったら少量なら交換できるやもしれん。

 それが終わったならこの村を見なかったことにして帰られよ」


 ハサンがそう言うとガルに二三声を掛け、村に戻っていった。


(……なんか愛想悪い奴らだな)




 ガルがこちらを向き直って問いかけてきた。


「お前は何を持ってきた?」


 まあ、多少の物々交換できれば御の字と考えるべきか。


「皮革とじゃが芋や少量の塩、砂糖だな」


「……塩だと?

 やはり貴様、ラタールの手の者か!」


「だからラタールってなんだよ。

 一人で暮らしてたから世情を良く知らないんだよ!」


「ハッ!馬鹿なことを。

 この国に住んでてよくヌケヌケと言えたもんだな!」


「で、なんで塩を持ってるとラタールになるんだ?」


「お前本当に知らんのか?

 塩は教会の専売品じゃろうが!」


「…本当によく分からないんだよ!

 さてはお前腹減ってるな?

 人間腹減ってるとイライラするからな。

 取り敢えず飯でも食うか?

 そこの見張りの人も一緒にどうだ?」


 俺はそう言うとドナドナに摘んである食料と調理道具一式を出し料理を始めた。




 俺はガルと見張りの男に飯をご馳走してやった。

 ポテトチップスと鹿肉のポトフ。

 最初は警戒して食わなかったが俺が口をつけるのを見ると欠食児童のような勢いでガツガツ食い始めた。


 食後のドクダミ茶を飲み、一息ついたところでガルが喋りはじめた。


「旨かった。初めて食べたがこのパリパリした食べ物は何なんじゃ?」


「これはポテトチップスといってじゃが芋を油で揚げて塩を振ったものだ」


「……油で……あげる?

 良くわからんが……

 そのポテトチップスといい鹿肉といいそんなに塩を贅沢に使って勿体無いの」


「先ほど言っていた塩は教会の専売品って何なんだ?」


「本当に知らないのか?

 ラタール教は国教じゃぞ?

 この国に産まれし者は全てラタール教の神父に祝福を授かるのじゃぞ。

 お前のあの変な人形もお前の祝福なんじゃろう?」


「……俺はある日突然目が覚めてそれより前のことは覚えていないんだ。

 目が覚めてからずっと一人で生きてきたんで周りのことはよく知らない。

 知っているのは生活の知恵ぐらいだな」


 ガルは考え始めたが、やがて口を開き、


「まあ、難しいことを考えていても始まらん。

 お前の持っているものを見せてもらおうか」




 結局、今回俺が持ってきたものが全てはけた。

 ガルがブツブツ言いながら目利きをしていった


「こんな分量の塩を持ってるなんて今迄よく奴らに目を付けられなかったの」

「この塩漬けの鹿肉旨いの」

「砂糖か。これほどの量を町で買ったら如何程になるのかの」

「鹿の皮も良い鞣し具合だ。臭いもあまりしないし非常に柔らかいな」


 このガルのジジイは商売が上手くないことは理解できた。

 それと平場で会ったら仲良くなれそうな感じもした。


 一通り見た後、ガルは全てを指し、


「これは全て売ってもらえるだろうか」


「構わんが対価は?」


「長と相談してくるが何が欲しいのだ?」


「食料の種や鉄器。畑を耕したりするものが欲しいな。」


「待ってろ。相談してくる」



 ガルは一度村に戻り、若い女と共に色々抱えて戻ってきた。

 女は10代後半だろうか肩まで伸ばした髪。そして麻っぽい服を着て腰は布を巻きつけたようなスカートをはいている。

 首飾りをしている以外は飾りっけのない格好だが、久しぶりに見る女体の肉感に思わず視線が釘づけになる。


 俺が若い女に見惚れているとガルが隙かさず、


「俺の孫に手を出そうもんなら、

 明日からお日様を拝めなくしてやるからな!」


 と、脅してくる。


 持ってきたものを見てみると、

 柄の長い木製のシャベルで先端のみが鉄製のもの。

 鉄の鍬が一本。


「鉄器はうちの村も数が少ないんじゃ」 

 

 ガルが並べながら話す。

 頭陀袋に入っているものを見ると種が数種入っている。


「南瓜と蕪、麻の実、瓜、小麦じゃな

 あとはランブータンをやろう」


 ガルはそう言うと俺の頭をちらっと見てニヤッと口角を上げる。

 ランブータンは長い毛に覆われた赤い実で、つまりこれを俺の頭に見立てて嘲笑ってるってことだな。


「村が出せるのはこんなもんじゃ。この村も貧しいからの」


 価値観が分からないのだが、渡したものと貰ったものとの分量が今ひとつ納得出来ない。


「ちょっと少ないんじゃないか?

 この量だったら砂糖と塩は渡せない」


「馬鹿者。鉄器はすごく高いんじゃ。

 シャベルと鍬だけでも金貨2枚はするのじゃぞ!」


「分かった。では砂糖は無しな」


そこへ、今迄黙っていた若い女が口を出してきた。


「砂糖は置いていけ。

 代わりにこれをやろう」


 女が首飾りを取り俺に渡してくる。

 渡されるときにふんわり女の香り鼓動が速くなる。


 ガルが「おい。それは…」と小声で制してくるが

 若い女が「いいの」と取り合わない。


 俺は手渡された首飾りを弄び眺めながる。


「わかった。それでいい。

 後は俺にもう少しこの辺のことを教えてくれ」


 商談は成立した。

ランブータン (Rambutan, Nephelium lappaceum L.) は東南アジア原産のムクロジ科の中型から大型の熱帯の果樹である。マレー語でrambutは「毛」「髪」を意味し、それに接尾辞-an(~もの)が付いて「毛の(生えた)もの」という語義を持つ。

 Wikipediaより引用

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