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その後 その1

「うーん、こりゃ時間かかるな」


 俺達(・・)は家に戻ってきた。山頂付近に建てた家では無く、元々あった家の場所に。

 だが、教会の奴らに襲われて酷い状態になっている。

 当然だが家は全焼して屋根が落ちている。畑は全て掘り返されている。恐らく残っていた作物も野生動物達に食われているようだ。付帯設備の竈やなんもかんも破壊尽くされている。


「シンゴ様。どうしましょうか……」


 アルマは万事に控えめだ。そしてあんなことやこんなことをを致しても様付けをやめようとしない。


「当分は山の上に住むようだな。あそこに大部分の道具もあるし、種なんかも保存してるからな」


 また、この世界にとばされた当初に習い、地道に生活の幅を増やしていくことにした。

 いや、前回とは大きく違う。道具も色々あるし、人形などの祝福の使い方も習熟している。なによりもアルマがいる。

 一人の時の雨や風の強い日に鬱屈とした、心寂しい日々は遠い存在となったんだ。


 そして一年が経つ。

 畑は大きく広がり、家もなんと2LDKの大きな建物になり、それを取り囲む鉄芯入りレンガ作りの塀。そして、大幅にグレードアップした護衛の人形達を配している。

 特に警備、防備には力を入れた。偶に近くの街に必要な物を買い出しに行く時に感じる不穏な空気を感じたからだ。人口は減り、作物の収穫も悪い様子だし、何よりこの国のトップが短期間のうちに消失したので乱世の様相を呈しているようだ。


 俺の家はまさに俺にとっての国。楽園を現出するつもりで作っている。何分国民は、国王の俺とアルマの二人きりだが。

 違うところは三人目の国民が出来そうだって言うところだ。


 アルマの腹が張ってきている。恐らくお腹の中には子供がいるはずだ。偶に動いている。

 嬉しいく、そして困ってしまう。

 こんな時にどうしたら良いのか。何時頃生まれるのかもよく分からない。十月十日と俗に言われるがその第一日目がよく分からない。

 Hした日なのか?

 違うという説を聞いたこともあるが正確にはしらん。アルマも両親を早くなくしてしまったせいでその辺は教わっていないそうだし、何より教会の制度のせいで男性が徴用されていて出生率がグンと下がって周りでも出産を目にしたことがないそうだ。


 よく分からないなりには、出産の準備を整えることにした。


「助けて下さい!」


 俺の目の前には女4人が膝を付き、祈るような格好で俺を見つめていた。


「ここを追い出されたら死ぬだけです」


 女4人は侵入者ではある。良くこの場所を見つけたと思うね。恐らく森の中に迷い込んだところを警戒中の人形達に拘束されたようだ。

 4人の中の一人は中年女性で3人の母親のだそうだ。三人とも目鼻立ちがスッキリしているが、美人というか日本人的な可愛さがある。

 全員10代だろうか?

 長女はアルマよりちょっと上ぐらいで10代後半、次女は10代中盤、末女は10才ちょっとてところか。


 母親は必死に取りすがってくる。

 アルマは大きなお腹をさすりながらやり取りを見つめている。念の為に警護の人形は配しているけど。


 俺は、面倒そうなことは御免被りたいが。


「どうしたんだ? 助けるって言っても……」

「私たちは戦争から逃げてきたんです。着の身着のままで……」


 母親は涙を見せつつ必死さをアピールしてる。

 俺は対人コミュニケーション能力が低下しているからかうがった見方をしてしまう。

 まあ、こちらの同情を引こうとしているんだろうなとか思ってしまう。

 母親は俺の手に取りすがってくる。


「お願いです。ここに、ここの片隅でも構いません。住まわせていただけないでしょうか。お願いです」

「そうは言ってもだな」


――うーん。国王たる俺は断固として追い出すしかないか。着の身着のままって言ったら俺の持ち出しばっかりになっちゃうしな。それにこの親子達の背後で手引している人間がいるかもしれない


「あんた達をここに住まわせたとして俺に特はないだろ? 俺達も生きるのに精一杯なんだが」

「そ、そんな! ……私達も働きます。 子供たちだけでも助けていただけないでしょうか。一人は成人しておりますので、なんでもお役にたてるとおもいます。どうか!」


――お役ってどんなお役だ? ゲスいことを考えちゃうだろ


「いや、手は足りてるし、余っている場所はない。出てってく……」


 肩に手を置かれた。アルマが何か話したいことがあるみたいだ。

 俺の手を引っ張り部屋の端まで連れて行くと小声で喋り出した。


「あの、シンゴ様。差し出がましいことを申すようですが……」

「どうした」

「あの方達をここに住まわせていただけないでしょうか。シンゴ様のお力になると思うのですが」


 アルマがあの親子達の肩を持ちだしたぞ?


「なんでだ? あの親子の後ろに誰かがいるかもしれない。いなかったとしても、今後も来るかもしれない難民達を全て受け入れていくわけにはいかないんだぞ?」

「……わかってます。ただ、あの方達を見捨てられなくて。それに……」


 アルマは俯きながらお腹をさすっている。


 ――そう言うことか


 アルマは子供が出来ることで、子供を守る母親の憐憫の情が湧き上がるのを抑えきれないのか。それと、出産のときの助けになるかもと思っているのかもな。


「ふぅ。分かった。受け入れるよ。ただ、仕置については俺やりたいようにやるからな」

「ありがとうございます」


 アルマは俺の手を包み込みニコッと笑った。

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