審判が下る俺
本日1/2
「シンゴ!外に出ろ」
部屋から出れたのは10日も過ぎた頃だった。
しかも呼び出しに来たのはサーリムだ。
――俺の祝福を無効にする意味があるのか? それとも偶々か?
何故か俺の腕を後ろ手に組まれロープで緊縛され腰引縄で引っ張られる。
「おいサーリム。これはいったい何の真似だ?」
「……教皇がお待ちだ」
「だったらこの扱いは無いんじゃないか!?」
「……」
サーリムは口を開かずに他の警護の兵士と共に何処かに連れて行かれる。
言いなりに歩いて行くとだだっ広い礼拝堂に出た。大勢の群衆が集まっていて俺の方を見てくる。
心なしか見る目がきつい。
ルクサーナは礼拝堂の中心部にある祭壇の上に立って群衆に向かって話しかけていた。
「……複数の街を滅ぼし司教枢機卿はもとより国王や王族、隣国の王までも暗殺した下手人を捕らえ、今日ここに神の名のもとに判決を下す!」
朗々たるルクサーナの声が礼拝堂に反響する。
俺は祭壇の上に追い立てられて首を前に出した格好で正座させられる。
――えっ? なにこれ? 俺が犯人で断首される流れになってない? しかもアルマも?
祭壇の中心にルクサーナが立って恍惚とした状態で喋り、両側に俺と同じようにアルマも押さえつけられ座らされている。
「こ、これは何の真似だ?」
緊張で口の中がカラカラになり上手く喋れない。
ルクサーナは俺だけに聞こえるように喋りかけてきた。
「信吾。ありがとう。これだけが私が生き残るルートなの。貴方の犠牲は忘れないわ」
「犠牲ってなんだ! 生き残るルートって?」
「言ったでしょ。私の祝福のこと。将来が見えるの。貴方を巻き込みたくなかったけどこれしか私が生き残ることが出来なかったのよ」
ルクサーナは暗く笑う。
「貴方が一緒に暮らそうって言ってくれて嬉しかったのよ。……残念ね。二度も若くして死ぬのは嫌なのよ。人がいつかは死ぬのはわかるけどせめてもう少し生きたいのよ」
「やめろ! 今からでも一緒に!」
「貴方はこの混乱を引き起こした張本人として処断されるわ。アルマも手引した罪で同罪。 ……さよなら。信吾。今度は貴方があの世で待ってて」
ルクサーナは剣を持ったサーリムに目配せし、群衆に向かって語り始めた。
「さあ神の審判は下された。混乱を招き入れた者を処断し預言者たる私ルクサーナの元で新しい世界を!」
サーリムが剣を振り上げた。
天井のステンドグラスからの光が剣に反射して幻想的な雰囲気を一瞬感じた。
次の瞬間天井から人形が落ちてきてサーリムの首元に針が突き刺さった。




