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超機械文明に魔王が転生したならば!  作者: Per猫
第二話「魔力黎明」
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2-3 事前準備2

「まあ、そうした問題について心配する必要は無い。俺が何とかして見せよう。……さて、こんなところで話は終わりだ、早急にアルテリアに向かうとするか」


 席を立ち、服というよりボロ布と形容した方が正しいそれを身に纏う。

 品性の欠片も無い出で立ちではあったが、一切の迷いを見せない眼差しは覇者としての気風に満ちていた。


「あの、魔王様。アルテリアまでは大分遠いですよ? それに、途中の検門はこの格好だと、怪しまれて通してもらえません」


 聞けば、オルムに住む貧民達を規制する為に、機械的なゲートと兵士達が設置されているらしい。

 力ずくでの突破も可能だが、アルテリア内部まで警戒された場合、なかなかに厄介な事態となるだろう。


「なんだエリナ。そんなもの、お前も昨夜味わったアレを使えば無視出来るだろう」

「アレって……」


 言われて思い出したらしいエリナの顔は、何故かみるみる青ざめていく。


「……い、いえ、出来ればアレは遠慮したいと言いますか……」

「却下だ、行くぞ」

「魔王様ぁー!」


 悲痛な声を背に受け、アグレアスはトレーラーハウスの扉を抜けて外に出た。

 途端、海沿いにも関わらず荒涼とした大地が姿を見せる。

 風は塩気を含んでいるものの、乾燥しており、実に不快だ。

 動植物は姿を見せず、自然を征服する事に成功した都市が遠方に君臨するばかり。

 魔王が死してからというもの、どういった変遷を辿ったというのだろうか。

 生き物が暮らすには、あまりに過酷な世界。

 ここが、レオがいた場所。


(言葉は、確かに繋がれた。だが、世界を手に入れるのは未だ先の事か)


 その野望の為に犠牲にした命の数は千か、万か、それとも億か。

 そんな、途方も無い命知らず(ゆうしゃ)の問いかけが、投げ掛けられたのはいつの事だったか。

 返事がどうであったにせよ、魔王アグレアスは今も征服を続ける。

 ……否、


「これからは……魔王レオ=アグレアス、だ」


 魔王の辞書に、「無駄」という言葉は無い。





「降ろして下さあああああいっ!」

「ハハハ、無駄だぞエリナ! そんな抗議に耳を貸す魔王ではない!」


 現在、二人は地上数百メートルを高速で移動していた。

 中級飛翔魔法。

 アグレアスが生きていた時代ではよく知られたものであったが、現代を生きるエリナにとって未装備身一つの空中飛行は未知の体験であり、普通に恐怖だった。


「まったく、不思議な奴だな。風や抵抗は魔法で緩和されているだろうに、何を怖がる?」

「ええ、怖くないですよー? ただ、下を見たら絶景過ぎて気が遠くなりそうで……ていうか、死にませんよねっ!? 私、死にませんよねっ!?」

「うん? 魔力切れで落ちたら普通に死ぬぞ?」

「怖い事言うの禁止――!」


 とはいえ、一晩寝た事により内的魔力はだいぶ回復してあるので、そうそう落ちる心配は無い。

 しかしエリナにそんな事は分かるはずも無く、アグレウスの首に腕を回して必死にしがみつく彼女は少し涙ぐんでいた。

 これが所謂、カルチャーショック。

 要らぬ知識を魔王が増やしたところで、気付く。


「ふむ、……やはりか」

「な、なにがです?」

くだんの魔力吸収は、あくまでも大気や自然に含まれるものに働くらしい。俺の身体から持っていかれる気配が無いからな。平たく言うと、賭けに勝ったのだ」

「それって、もし負けてたら……」

「うん? まあ、落ちて死んでたな」

「おーろーしーてー!!」


 エリナはかなり錯乱している。


 そうこうしている内に、設置された検門の遥か頭上を通過したようだ。

 下を見ると、小さな建物と金網、金属製の重々しいゲート。

 そしてそれらを守る、銃火器で武装した人間達。

 更に、ゲートの前には、幾つかの車輪が付いた鉄の箱……車というらしい機械が列を形成していた。


 エリナに尋ねると、暮らしに困窮している者か、賄賂片手に奴隷を売りに行く人間かが並んでいるらしい。

 前者は当然門前払いとなり、後者も最近は締め出しを喰らっているらしい。多くの者は武力を持たない為、簡単な武装と手薄い警戒でも容易に弾圧が可能だ。

 そしてこうした光景もまた、魔王が生きた時代以前から見られた光景だった。

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