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超機械文明に魔王が転生したならば!  作者: Per猫
番外編 「魔王、婚約者になる」
54/83

2.5-3



「……で、どうしてエリナもいるのかしら?」

「ふふん、まあ聞け。昨日、てれびを見ていたところ、合コンというものを知ってな! 男女の比率を合わせなければならんのだろう?」

「……あんた、俗っぽい事に興味ありすぎじゃない? 本当に一万年前の魔王?」

「魔王足るもの、常に最新を求めなければならんのだ」

「魔王様は相変わらずですね……」


 結構前のブームであるし、これは合コンではなくお見合いに近い。

 言葉を呑み込んで、アカネは嘆息する。

 すると、三人(イリスは部屋で寝ている)の前を歩いていた男が振り返って、彼女に笑顔を向けた。

 世界有数のブランドの服で身を固めた、壮年の男だ。


「すいません、今日はわざわざわたくしなどの為に」

「い、いえいえ! あたしの方こそ、お母様が急に決めてしまい御迷惑をおかけしました、ブランドンさん」

「迷惑だなんて事はありませんよ。今日はひとまず婚約の事は置いておいて、アカネさん達と親睦を深めようとお呼びした次第です」


 ブランドンの物腰からは、紳士という言葉が似合う落ち着いた雰囲気を感じる。

 アカネ達を出迎えた時も、自家用の航空艦船を飛ばしてきたとこから考えて、金もさぞかし持っている事だろう。

 地位や財産狙いといった風には見えないが、果たして。


(……なーんか怪しいのよねぇ)


 彼女達が歩いているこの場所は、アルテリアの中心からやや離れた高級観光街であり、その中核を担う大型娯楽施設だ。

 モールや水族館、果てにはカジノに至るまで各種店舗が詰め込まれている。

 大陸の中では発展が遅れている方であるアルテリアの中でも、かなり栄えているスポットだった。

 不都合があるとすれば、タグが無ければ足を踏み入れる事も出来ないところだろうか。


「……なんだかいい人そうですね、魔王様?」

「……馬鹿者、ああいう手合いは笑顔の裏で何か考えているのだ。四天王の中にも一人、そういう奴がいた」


 隣でひそひそと話している二人は───素性を隠すためのハットとサングラスを除けば───いつもの通りの格好だが、アカネは黒い制服を脱ぎ、肩を出した赤い服を着ている。

 やや大人びたデザインが彼女のお気に入りポイントだ。

 豊満なバストが童顔と対比されて背徳的な魅力を醸し出していた。

 歩く度に上下する双丘を見て、通り掛かった男達が思わず立ち止まる。

 中には、護衛に配備させた元防衛部隊隊員もいるように見えたが、気のせいだろうか。


(……まったくもう、これだからバカな男は)


 ぷんすかと不機嫌になりながらも、彼女はチラリと魔王の方を確認する。

 普段不規則的な言動を取るとはいえ、彼も男だ。

 少しは意識しているかもしれない、そう思ったのだが、


(全然意識してないっていうのも、それはそれでムカつくわね……!)


 アカネは少し考えた後、悪戯げに笑って彼の左腕に抱き付いた。

 アグレアスの腕が大きな肌色に埋まり、双丘が形をむにゅうと変える。

 それを見たギャラリーの男達が、おおお……! と声を上げ、拝み出す。

 いや、拝むな。


「何をする、歩きづらいではないか」


 アグレアスは少し困ったような顔で言う。

 初めて見る顔だ。

 彼もこういう事をされれば意識せざるを得ないという事か。


「いいじゃない、あんたはあたしの『だーりん』なんでしょう?」

「なんだそれは……」

「わ、私もやった方がいいんでしょうか! いいんでしょうか!?」 


 エリナまで加わりそうになったところで、ブランドン氏の咳払いで我に返る。

 そういえば、彼の存在を忘れていた。


「さて、ではどこから回りましょうか? 何かご希望はありますかな、ええと……」


 ブランドンが、少し眉をひそめながらアグレアスを見る。

 無理もない。

 アカネが結婚を考えている相手と聞いたのだから、さぞかし高名な政治家か財産を所有している富豪と思っていたのだろう。

 だが現実には、少女を連れてサングラスで顔を隠した金髪男だ。

 怪しいなんてレベルじゃない。


「俺はレオだ。訳あって、これを外す事は出来ん。勘弁してくれ」

「はあ、成程。こちらこそ失礼しました」


 件の放送で名前も彼の公表している為、比較的ありふれている方を言わせる。

 しかし、どうやっても胡散臭さは消えていなかった。


「さて、どこに行くかという話だったな。では、まず手前のあれから行ってみるのはどうか」

 

 煌びやかなネオンが夜天を照らす中、魔王が指さしたのはカジノだ。

 世界的に電子投影されたタイプが普及される中、珍しくもクラッシックな設備で有名である。

 その手のマニアの為と宣伝しているが、単に運営陣が好きなだけではなかろうか。


「いいですね。ギャンブルは私も好きですよ」

「あら、そうなんですか?」

「ええ。そこで一つ提案なのですが、アカネさんに結婚を申し込む権利を賭けて―――」


 ブランドンは笑みを零し、アグレアスの方を向く。

 そして、


「―――賭けの成功額で勝負というのは?」

「乗った」


 速攻でアグレアスが返事をした。

 二つ返事だ。

 意味が分かってるのかすら怪しい速度である。


「ちょっと待って下さい! さっき、今日はその話は置いておくと……」

「まあ待て、アカネ。折角この男が乗り気なのだ、断る理由はない」

「いやあんた、あそこがどんな場所だとか分かってるの!?」

「賭け事をするのだろう? なに、任せておけ」


 アグレアスは胸をどんと叩き、ドヤ顔でそう言った。

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