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超機械文明に魔王が転生したならば!  作者: Per猫
第一話「魔王転生」
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1-4 蹂躙、あるいは文化的接触

 魔王の拳から放たれた火炎は、踊るようにして荒れ狂う。

 断末魔の声が次々と上がる中、仲間を犠牲にする事で難を逃れた者が、先ほど目にした鉄の筒をアグレアスに向けた。


「エリナ。何だ、あれは?」

「銃です、隠れなきゃ死んじゃいますよ!」


 エリナの言葉を待たず、引き金は引かれる。

 相次ぐ弾丸の射出と薬莢の排出。

 三十回ほど繰り返されたそれは、自動小銃によるフルオート射撃だ。

 暴漢如きの腕とはいえ、文明の利器である。ましてや十数メートルという戦闘距離ならば、少なくない命中弾を加えられただろう。


 もっとも、相手が魔王でさえなければ、の話だが。


「なるほど、鉄の塊を飛ばす装置か。面白い玩具だ」


 防御魔法〈レイ・シールド〉。

 魔力で作られた円板状の光は、飛来した銃弾の全てを弾いていた。

 返すようにしてアグレアスは炎弾を叩き込み、今度こそ暴漢を一掃する。

 と、思われたが、彼らの奥で沈黙していた鉄の巨像の眼に光が宿り、排気と共に立ち上がった。


 それは、全長七メートル程の鋼鉄の巨人。

 両の手が握る機関銃の威力は、対人用にしては大き過ぎる口径から考えて、人間を殺害するには十分なものだろう。


土人形ゴーレムの類か。全身が鋼鉄製とは、随分とコストが掛かりそうだが」

「あれは……!」

「知っているのか?」

「……ええ、その、少し」


 少女は何故か、目を逸らして言葉を濁らせる。

 何か事情でもあるのだろうか?

 アグレアスが疑問していると、彼女は気を取り直し、口を開いた。


「あれは、第一世代型ブレイド(B-Raid)『グラム』です。骨董品ですが、まさかあんなものまで……」


 エリナ曰く、グラムと呼称されるらしいその機械は、先ほどの防御魔法を警戒してなのか機関銃を使わずに突撃を敢行して来た。


 外見のずんぐりとした印象とは裏腹に、素早い速度で距離を詰めてくる。

 背部に取り付けられた、炎を発する装置を推進力としているのだろう。


「おお、面白いっ! 前も、ああいったゴーレムがあればなぁ!」


 アグレアスは喜色満面の表情を見せるが、傍らのエリナは慌てふためいている。


『貴様らァ! よくも俺の仲間を殺しやがって!』


 グラムの外部に取り付けられた響音装置から、中にいるのであろう男の声が響いた。

 相当頭に来ているようだ。


 そのまま激突するのは流石に骨なので、アグレアスは相変わらず手足を拘束されたままのエリナを小脇に抱え、空中へと飛翔する。

 彼の思わぬ行動に驚いたのか、大きな軋みとコンクリートを撒き散らし、グラムの動きが止まった。

 だが、驚いたのはエリナも同じ事だ。


「えええええっ!?」

「黙っていろ、エリナ! 舌を噛む!」


 叱責する最中もグラムから目を離さない。

 空中に漂う魔力をかき集め、己が肉体に循環させる。

 しかし、


(……妙だ、集まりが悪すぎる。魔力の吸収が阻害されているのか) 


 地上では分からなかったが、上空、それも都市の方向へ飛んで気付いたのだ。

 それは即ち、魔力の吸収を無作為に行っている何かが、波止場から見えるあの都市にある事を示していた。


 人か装置かはともかく、それを破壊しさえすれば魔力問題が解決し、大望を成し遂げる為の大きな足掛かりになるだろう。


「すべき事は定まったか。しかしその前に、此奴との遊びを終わらせなければなぁ!」


 意気込む魔王をグラムの砲火が唸りを上げて迎え撃つ。

 口径三十三ミリメートルの鉄の悪意が二丁。


 加速を受けた特殊な形状の徹甲弾が、一秒間に百発近く繰り出される嵐となってアグレアス達に殺到した。

 とはいえ、エリナの見立て通り劣化の激しい骨董品のようで、精確無比な銃撃とはいかない。

 その多くがアグレアス達の傍を通り抜ける。


 無論、相手が相手であれば衝撃波で粉々になるだろう。

 だが、全身から魔力を放出し、球状に張り巡らせる防御魔法〈レイ・フィールド〉によってそうした事態は避けられていた。


 命中弾も、循環させた魔力による効果で弾頭の勢いを減衰、跳ね逸らす事で被害を防ぐ。

 しかし、少ない魔力で構成した防御では質が足りていないのか、時間と共に大きく磨耗していくのだった。


「なかなかの攻撃力だ! ならば、こちらも!」


 エリナを胸に抱え直し、掌を地上の機械に向けて低級魔法〈アグニ〉を次々と発動させる。

 その数、実に百二十余り。

 グラムのそれを超える勢いで業火が降り注ぐが、予想よりも耐熱効果に優れているのかダメージは少ない。


『そんなものか、手品野郎ォ!』

「いいや、本命は別だ……!」


 それは、乱雑に繰り返される〈アグニ〉に紛れた真打。

 一際鋭い光跡を描いて打ち出された二発の炎弾が、グラムが両手に持つ機関銃の銃口を貫いた。

 瞬間、爆発が起こる。

 そして、煙が晴れた後に現れたのは、両手首から先を失った巨人の姿だ。

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